鬼畜王子なのですわね?
「僕がアンジェリカに付き添います。あなたと二人きりで話をさせるわけにはいきません、シャリル王子」
「もう、それでいいよ。とにかく話そう、アンジェリカ嬢」
頑ななガゼルの態度に成瀬は諦めたようで、ガゼルの同席を許可した。
成瀬の顔を睨み付けながら向き合うソファーに座ると、ガゼルは私の後ろに背筋を伸ばして騎士らしさ満載で立つ。
(あああ、騎士の護衛姿っ!)
こんな時にも律儀にときめいてしまう自分が憎い。
すぐに三侍女はそれぞれにお茶の用意に散り、テーブルの上に紅茶と菓子をいくつか並べると部屋を退出していった。
さすが王宮の侍女だけあり指示待ちするだけではなく、状況を理解して己の役割をこなすとはなんて有能なのかしら、私の部下に欲しいところだわ。
さて、と紅茶を一口傾けてから成瀬が私を真っ直ぐに見つめる。
ドキリと鼓動が大きく跳ねた。
今まで見たこともないほどの真摯な眼差しだったから。いつでも浮かべている本気か嘘かわからない笑みを含んだ瞳ではない、本気を感じる眼差しに私の胸が跳ねた。
「アンジェリカ嬢、あの舞踏会の日に放った火を覚えている?」
「ええ、もちろん」
やらかしちゃったもんね。
あんな強火バーナーが手から出るなんて設定なかったはずだし、忘れられるわけがない。人も焼いちゃったわけだし。
「あれだけの炎の魔法が使えることが知られれば、アンジェリカ嬢の命が危ないと思って、強引ではあるけれどこの宮殿に留まるように仕向けたんだ」
「やっぱり魔法の使いすぎは命を削るの? そういえば私あの後倒れたものね」
火をぶっ放した後、やけに体が重たくなり息も苦しくなったことを思えば、魔法は命を削ると言われても納得がいく。
でも成瀬あんた、さっきまで私をシュレッダー代わりに魔法を使わせてなかった?
え、鬼畜? 鬼畜王子か?
「ああ、魔法と命は全然関係ないよ。アンジェリカ嬢が倒れたのは、いきなり最大出力の魔法を初めて使ったから、魔法に対する体力がついていかなかっただけかな」
――関係ないんかーい。ならなんで命が危ないとか言うのよ!
シャリル王子は今のところ隠しているのだが実は水の魔法の使い手だ。だから魔法のことにも詳しいのだろう。
なぜ隠しているのかと言えば、一つの血縁に魔法の力が受け継がれるのはたった一人だけなのだ。つまり、王家では魔法の力が受け継がれたのが、王太子となる第一王子のリゼル王子ではなく第二王子である。




