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歓迎会などするのですわ

 思わず顔が素に戻りそうになり、急いで笑顔を取り繕う。


「成瀬君の歓迎会ですか」


「そう、彼には早く慣れてもらいたいからね。そのためにはやっぱり酒でしょう。これが一番、飲みニケーションでしょ」


 くいっと酒を飲むようなジェスチャーをする課長に、一瞬だけ顔が素に戻る。


(飲みニケーションとかいつの時代の言葉!? 今時の若者はお酒嫌いも多いのに、この人は本当に昭和の頑固親父のままで思考停止してるんだから!)


 直属の上司である課長は、ただ今五十五歳のおやじ盛り。

 頭は涼しくなりすでに数年を経過しているのに、まだ抵抗を諦めていない。

 お酒好きのせいでお腹は見事なメタボ。そして隙あらば飲み会を開こうとするから始末に悪い。


 お酒を飲むなら家で一人で飲みたい。ワイワイ飲むのはもう面倒なのだ。

 それに今は王子とのラブイベント期間中なのだ。残業だって迷惑なのに、飲み会など!

 けれど歓迎会と言われてしまえば仕方がない。

 心で盛大な溜息をこぼしながら、いつもの愛想笑いを浮かべ、私はまたいつものように頭を下げる。


「わかりました。お店、手配しておきますね」


「人数確認もよろ~」


(よろ~、じゃねえよ!)


 思い切り突っ込めたらどれだけ心地いいことか。


(私が一緒にいたいのは、おやじじゃなくて王子だよ!)


 半分泣きたい気分で課長のデスクを後にした。



 翌週、総務課だけでなく、受付の女子二人も加わり、成瀬春人の歓迎会が開かれた。


 お店は昭和課長のおすすめ「うまい魚が食えるんだよ~」とありがたくもない推薦により、これまた昭和の香りが濃厚な個人経営の居酒屋に決定していた。


「今時こんな店?」


「ちょっと古くさいよね~」


 受付の美人たちは不服のようだが、気に入らないのならば、帰ってもらって結構です。

 それでも彼女たちのお目当ては、おいしい魚でもお酒でもなく、成瀬春人なのだから、引き下がるわけもない。


「あ、成瀬さ~ん! 隣に座ってもいいですかぁ?」


「あ、ミキちゃん、あたしも隣に行きたいのにぃ」


 甘い声は色とりどりのキャンディのようで、辺りに広がり場が華やぐ。


「いいねえ、若い綺麗どころが入ってくれると」


 なんて課長は鼻の下を伸ばしているが、独身男性は新入りに女子を奪われちょっと涙目だ。


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