問題のある態度ですわ
出て行こう。
もう王宮とかうんざりだわ。王命なんて知ったこっちゃないわ。
今日、公爵家から届いたばかりの荷物はすでに荷ほどきを終えていたので、とっても申し訳なかったけれど、もう一度詰め直してもらうように三人の侍女にお願いをした。
成瀬から元の世界に戻る方法を聞こうと思っていたのに勢いで出てきてしまった。
けれど諸々仕組まれたことを考えると腹立つやら、ヒロインに攻略されてしまった姿に目も当てられなかったとか、とにかく今はあいつの顔を見たくなかった。
「アンジェリカ!」
扉をノックもせずにいきなりガゼルが駆け込んで来た。
きゃー、と声なき声をあげた三侍女がすぐに真顔になりサッと壁際に控える。
えええー、アンジェリカ様って呼んでなかった? いきなり呼び捨てになってない?
駆け込んできたガゼルが私のすぐ目の前で立ち止まる。
私は彼を睨み上げる。この心変わり男めと。
グッと一度唇を噛みしめたガゼルが、そっと私の肩を抱き寄せた。
「ぬあっ!?」
変な声出ちゃったんですけど!
「ガ、ガゼルきょ」
「アンジェリカ、ようやく……この日が来るなんて……」
この日って、どの日よ? 私が皆様から嫌われる日?
てか、あなたさっきヒロインに心変わりしてませんでした?
ガゼルが何を言っているのか、何をしたいのかがわからずに棒立ちになっている私の瞳に、開きっぱなしの扉の脇に立つ成瀬が見えた。
「ガゼル、それはマズイんじゃない? まだ兄上は了承していないみたいだし、婚約者候補にそんなことするのはスマートじゃないんじゃない?」
「いいんだ、アンジェリカは僕の又従姉妹だ。こんな抱擁くらい問題ない」
多分……問題あるでしょう?
少なくとも日本人の私は兄弟姉妹、親戚でもこんな抱擁はしたことない。
「それよりも僕は彼女と大事な話があるんだ。ガゼルは遠慮してもらえないかな?」
「何を話そうと? 彼女にあらぬ嫌疑をかけ、無理矢理に自分のものにしようとした相手に僕は易々と譲る気持ちはない」
「それも理由があるから、それをアンジェリカ嬢に説明したいんだよ」
おまえとは話したくもない、とさっきから成瀬を睨んでいたが、私を騙した理由があるのなら聞きたい。
シャリル王子はどこか信用ならないけれど、私の知っている成瀬はそこまで悪い奴とは思えなかった。素直で仕事も熱心で気遣いもできる後輩だった。
「わかりました。ガゼル卿、私は成瀬……シャリル王子殿下の話を聞きます」
「しかし二人きりにすれば、きっとまたとんでもないことで言いくるめられかねない」
うわー信用がた落ちだね、シャリル王子。
ところでガゼルの心変わりはどうなったのだ? あのヒロインを守ろうとした姿に冷たい視線、忘れてないからな。
それなのにガゼルはまるで私を心配するようなことばかり言うのだ。




