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罵りは心の中でするのですわ


「おやおや、僕の部屋が大人気だね」


 やけに笑顔で成瀬、いやシャリル王子が手を叩きながら部屋に入ってくる。

 ヒロインのココアちゃんが、すぐに「わあ、シャリル王子ですね、素敵」と極上の笑顔を浮かべ、可愛らしくペコリと礼をしてから「うふっ」と上目遣いで笑う。


 モスドナルドとかジャンク好きそうな名前を付けるわりには、男には媚び媚びな可愛い態度をするな、この子。


「お美しい癒やしの令嬢。今回は王室のために働いてくれてありがとう。他の男たちは出て行って欲しいけど、あなたは歓迎するよ」


 首をちょこんと傾げてヒロインにウインクを見せるシャリル王子。それはとても可愛くて、それでいて甘やかな雰囲気が漂っていた。


 ああ、やっぱりシャリル王子、つまり成瀬もヒロインに好意を抱くんだ。

 少しだけ、ほんの少しだけ心がチクリとした。


「嬉しいです、シャリル王子。でも……私のことが気に入らないアンジェリカ様がいるので……私、虐められそうで怖いです。ほら、今も怖い目で睨んでいます」


 わざとか? このヒロイン、わざとだな?

 睨んでないっての!


 それなのに周囲の男たちは、いかにも気遣わしげな表情でヒロインを見ている。

 やがてシャリルが「僕たちが君を守るから怖がらなくていいよ」なんて甘く笑った。


 クソ成瀬め!

 攻略されるの早くない!?


 もう、アンジェリカ辞めたい……。


 切実にうんざりとして、私は途中になってしまっている書類を片付けて成瀬に顔を向けた。


「シャリル王子、どうやら色々と誤解があったようですね。私はこれを限りで失礼いたしします。王宮からも下がらせていただきます」


 それから、と続ける。


「リゼル王子殿下、やはり婚約者候補からは外れさせていただきます。どうぞ身勝手をお許しください。嫌疑がかからずとも、私は人の上に立つべき資質を備えておりませんゆえ、どうぞ他のご令嬢をお選びください。私の気持ちはもう変わりません」


「なぜ、そのような!」


 リゼル王子の叫びを私は醒めた気持ちで聞き流す。


 なぜって、あんた……。


 どう見てもそこのファストフードヒロインに首ったけでしょうが。

 それで公爵家の後ろ盾のためにアンジェリカをキープしておきたいって、最悪ね、王子様。

「あんたとの結婚なんてクソ食らえ!」だわ。


 心の中で罵って、一番丁寧な令嬢らしい挨拶をしてヒロインを囲む一団を毅然とした態度で通り抜け、王宮の与えられた私室へ戻った。

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