ヒロインの登場ですわ
ついにヒロインが登場した!
あの舞踏会の日に出会わなかったから気になっていたが、やはりちゃんと登場したんだ。
自分がプレイしてたヒロインの登場に少なからず感動する。
「彼女が貴重な癒やしの魔法の持ち主で、あの男の怪我を癒やしてくれたのだ。それで尋問が可能になった。あなたの関与など元々疑ってはいなかったが、それを証明できたのも彼女がいてくれたからだ。アンジェリカ嬢は彼女に感謝するといい」
そっちかぁぁぁ!
叫びそうになった。
王子ではなく、犯人を治癒するほうで出会ったのかぁぁぁ。
ついにヒロインちゃんが登場してしまった。どんなに変えても大まかな流れは変わらないのだろうか。
それにしてもヒロイン可愛い。
今日のドレスはゲーム初期のシンプルなノーマルドレスだが、柔らかなピンクの長い髪にキラキラに輝く淡いグレーの瞳。頭は小さく華奢な腰は細く、甘い顔立ちと遠慮がちに佇む姿が庇護欲を掻き立てる。
「こちらはココア・モスドナルド子爵令嬢で、この度の功績により私の婚約者候補の一人として新たに加えられた」
おー、なんだかファストフードが食べたくなる名前だな。
このプレイヤーとはわかり合えそう気がする。私も好きです、ファストフード。
すでにリゼル王子の瞳はこのココアさんに向いている。
本人じゃなく犯人を治療しただけなのに、いきなり好感度高くない?
それなのに婚約者候補から外れることに難色を示しているとは、やはりエバンスが言ったように互いの利益のためだろうか。
邪魔な女ではあるけれど、アンジェリカの気持ちを思うと少しだけ胸が痛んだ。
「モスドナルド令嬢、アンジェリカ・グラデュラスですわ。あなたのおかげで私の嫌疑が晴れたようです、感謝いたしますわ」
可愛いヒロイン、ココアさんに軽く膝を折る礼をしたが、彼女はふるりと肩を揺らして口元に手を当てた。
「ご、ごめんなさい! そんなに睨まないでください。私が婚約者候補になったのがお気に召さないようですが、どうかご容赦ください!」
……なんで?
今、私……睨んだ? お気に召さない要素あった?
頭の中にハテナが飛び交ったが、すぐに息を呑む。
サッと彼女を庇うようにガゼルが私とヒロインの間に立ちはだかり、冷たい目で私を見下ろしてきたからだ。
あなたを守ると言ってくれた時のあの甘い瞳など、どこにもない。
ああ、ガゼルももうヒロインに好感を抱き始め、アンジェリカを厭うようになったのかと頭の片隅では理解する。
だって彼女はヒロインで、私は邪魔者令嬢アンジェリカだ、仕方ない。
心にそんな言葉を押しつけてみるが、理解を拒もうとする私もいる。
けれど悲しいことに。たった一日で人の心は変わるのだ。
ズクリと体の奥底を刃物で抉られたような心地にヒュッと息を呑む。
私はそっと瞼を伏せた。
三年前の苦い思い出が喉元にせり上がるのを飲み込むように。




