こちらが戸惑いましてよ
リゼル王子は私の姿を見て絶句し、それからボソリと呟いた。
「本当に……いた」
まだいるやら、本当にいたやら、失礼のオンパレードだな。
いるよ、王命なんだから勝手に帰れないでしょうが。
一方リゼル王子のすぐ後ろでガゼルは今にも剣を抜きそうな勢いで柄に手をかける。
エバンスがサッと頭を下げたので、私も驚きながらも頭を下げた。
「アンジェリカ嬢……なぜ、シャリルの執務室に……? あなたは私の婚約者候補なのに、なぜここに?」
戸惑いながら尋ねてくるが、戸惑っているのはこっちの方だ。
「婚約者候補からは外れると昨日申し上げましたし、シャリル王子殿下もその手はずで整えておられてはずですが? それに秘書官になる話も昨日、リゼル王子もご納得いただいていたのでは?」
なぜ今更そんなことを聞いてくるのか。昨日の応接室の一連の流れを覚えていないのか?
一つ息を吸い込んだリゼル王子が、怒りを込めた声で語気を強める。
「そのような勝手な話は筋が通らない。アンジェリカ嬢も道理をわきまえぬ幼子ではないのですから常識的に考えて、昨日の話し合いがそのまま通るとは考えないでいただきたい」
え~~~、え~~~。
私が悪いことになってるの?
悪いのは全部あの第二王子ですけど! あなたの弟ですよ。
「あの襲撃事件について、あなたが関係ないことはあの犯人を尋問して明白になっている。故に婚約者候補から外れる必要もないし、監視などと言う名目であなたをここに留め置く必要もない。それはシャリルから聞いているだろうに、なぜわざわざシャリルに近づこうとするのだ」
不快感全開で眉を寄せるリゼル王子、その顔も素敵なんだけど、言われていることが素敵ではない。
今の話の中には色々と聞きたいことが山盛りだった。
まず
「あの時の犯人は無事だったのですか?」
私があわや焼き滅ぼしかけた人、実はかなり気になっていたのよ、安否が。
「かなりの火傷を負って重傷だったが、この方の協力で事なきを得た」
スッと数人のお付き添いの中から一歩踏み出したのは、淡いピンク色の髪をした可愛い令嬢だった。
(!!!)
ヒロインだ!




