ホウレンソウは大事ですわよ
「グラデュラス公爵令嬢、そのような事に口出しをされるのは出過ぎたまねです。ご令嬢はお座りになりできることだけをされるだけで良いのです」
というか執務の邪魔、使えないのに、と最後に面と向かって言えないくせにボソボソと口の中で文句を言う。
そんなエバンスの批判的な態度に私の総務魂(あるのか、そんなもの?)が唸りを上げた。
「こんなごっちゃごっちゃの書類まみれで仕事どころではないでしょう? 効率悪いし超過勤務過労死ラインじゃないですか。シャリル王子殿下、三日間だけ私に書類整理をお任せくださいませんか? 必ず成果をあげますから」
こっちはどれだけの書類仕事や雑務仕事をこなしてきたと思っているんだ。舐められては黙ってはいられない。
ここの問題点はすでに見えている。
仕分け作業がまず第一に必要だ。少なくともそれさえ終えればもっとスムーズに仕事ができるはず。まあ人も足りないけれど。
それを聞いたエバンスが眉を跳ね上げ眼鏡をくいっと押し上げた。
「成果? ははっ! 何を言い出すかと思えば、これは喜劇ですか? 公爵家のご令嬢が王子殿下の執務室にいること自体が不相応なのですよ? それにあなたはリゼル王子の婚約者候補ではありませんか。なぜシャリル王子にまで近づこうとしているのか、甚だ不愉快でしかたありません。どうせ公爵の力を振りかざしたのでしょうがね」
きっと今まで公爵家の力に遠慮をしていたと思われるが、もう我慢ならないとばかりにエバンスが一気にまくし立てる。
苛立っているのがヒシヒシと伝わってくるが、言い負かされはしない。
「私はリゼル王子の婚約者候補からは既に外れております。そしてこの場に私がいるのはあなたが仕えているシャリル王子殿下の指示ですが? 私が好んでここにいるとでもお思いで? その眼鏡の奥の目は節穴ですか? ああ、節穴ですね」
言い返した途端に、ふふっと成瀬が小さく笑った。
「シャリル王子、笑い事ではありません。これは国務であり児戯ではありません。今すぐグラデュラス公爵令嬢を部屋から追い出してください」
「エバンス、ここは僕の顔を立てて多めに見て欲しい。アンジェリカ嬢が言うように僕が彼女を秘書官に任命したんだから」
「はあ!? 秘書官に!? 任命!?」
エバンスが卒倒しそうなほど驚いている。顔色がみるみる悪くなっていっているが大丈夫だろうか?
(おいおい、報連相の基本ができてない!)
仕事の補佐をしている相手に、新たに秘書官を任命したことを伝えてないとか、社会人としての基本がなってない。
ちょっと、いや、かなりエバンスに同情心が沸いてくる。




