三侍女さんが可愛いですわ
そんなことを考えていないと、心臓が暴発して口から飛び出しそうだ。
ド赤面させる甘い言葉をあの麗しい顔でのたまう男ガゼル・ディバイン。
この男も悪い男だ。
こんな甘美な言葉をさらっと又従姉妹に言えるなんて!
どれだけ女の扱い慣れていることか……恐ろしい。
(貴族の男たちって、怖い)
フランスシネマでしか聞いたことのない甘い言葉を迷いもせず紡ぎ出せるとは、貴族怖い。平凡な日本人にはハードルが高い。
心臓がバクバク早鐘を打ち、顔が熱くなっている。ガゼルが私、いやアンジェリカを好きだと勘違いしてしまいそう。
ふと壁際を見ると侍女三人がキャーキャー言いたそうな顔で見ている。
わかるわかる、その気持ち。
もしこれがゲームの中でささやかれた言葉なら、私も間違いなくキャーキャー言っている。画面に向かって一人で。
戸惑っている間にガゼルは礼儀正しく一礼をして部屋から出て行った。
すぐに侍女ズが駆け寄ってきて目を輝かせる。
「ガゼル・ディバイン卿ですよね!」
「ナイトローズの最年少副団長!」
「ディバイン侯爵家の嫡男!」
「独身二十一歳。婚約者なし!」
「十三歳の弟が一人の四人家族!」
やっぱりこの世界でも未婚女子の独身イケメンに対する情報収集能力は高いのね。
いつの時代もどこの世界でも変わらない真理に私は思わず笑う。
「ガゼル卿は人気があるのね」
うっかり問いかけたがために、それから彼女たちのガゼルを始めどこそこの伯爵令息だの子爵の三男がどうのと、様々な独身貴族令息たちの噂を微に入り細に入り聞くはめになった。
誰は甘党だの誰は侍女に手をつけただのと、女子の口コミ伝播能力、侮れない!
とにかくガゼルの人気がとても高いことだけは確認できた。
そりゃそうよね、あの見た目に騎士として鍛え上げた肉体、それでいて誰に対しても丁寧な物腰。
好きになるなと言う方が無理だ。
いや、私は好きになりませんよ?
二次元ならいざ知らず、三次元には興味ないからね?
うん、好きになんて……なるわけない、よね?
と自分に言い聞かせるように自問自答する夜は更けていった。




