アロマの香りですわ
(いやあああ、騎士団の服ぅぅぅ!)
近衛騎士団・ナイトローズの制服を着込んだガゼルは、ゲームで見慣れていたはずなのにびっくりするほど格好良かった。
「あら、ガゼル卿」
口元を隠したように手を当ててつつ、鼻血が出ていないか確認をしてからソファーから立ち上がる。
少し焦った様子のガゼルは、よほど急いで来たのか額にかかる髪が乱れていた。
グッと一度唇を噛みしめた後、ガゼルはツカツカと私の目の前に立つや肩を両手でつかんだ。
「こんな……こんなことは許されない。なぜ、こんなことに」
こんなこと?
どのことだろう。できたら具体的に教えて欲しい。
押し殺したような苦しみを抑えているようなガゼルの声に私は首を傾げる。
「いくら王子殿下の婚約者候補だからとて王宮に住まわせるなど、リゼル王子は一体何を考えおられるのか! それにグラデュラス公爵もそんなことを簡単に許すとは!」
ああ、そのことね。ちなみにこの件に関してリゼル王子は冤罪ですが。
憤懣やるかたないガゼルの勢いに押されて、私はただ困ったように眉を下げる。
「こうなった以上、僕がアンジェリカ様を必ず守ります。リゼル王子の真意も聞き出してあなたの安全を第一に動きますから、どうか御身を大切にしてお待ちください」
話について行けない私。真意もなにもリゼル王子は冤罪ですからね。悪いやつはシャリル第二王子ですよ。
ああ、と短く嘆息したガゼルが私の肩をつかんでいた手でするりと動かし髪をひとすくいして、髪の先に軽く口づけた。
「この香しくも美しい髪」
「い、今、お風呂から出たところだからね」
ひいいい、この人、髪の先に口づけましたよ!?
ほんと、髪を洗ってもらっておいて良かった。
ふいと視線を上げたガゼルの瞳が私を見つめる。
「この髪の一筋でさえも僕が守る」
そう告げてからぐっと顔を私の頬の横に寄せ、「惹かれるほどいい香りがします」と低い声でささやいた。
アロマオイル、グッジョブ! 塗りたくられたオイルがいい仕事をしたことを褒め称えよう。




