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綺麗にしていただきましてよ

「ぐっ……」


 からかわれたのに、あの可愛い笑顔に言葉を失う。


 悪いやつめ……。


 初めて成瀬を見た時から、イケメンには近づかない、危険だと思っていたけれど、こいつは別の意味で危険な男だった。


 可愛いくせに腹黒い。


 完全に成瀬のペースに飲み込まれていることが癪に障ってしまう。


「と、とにかく成瀬とはこの世界のことでゆっくりと話したいから、まあ、滞在することも働くことも許す。でも対価はちゃんともらいますからね」


 強がる私に「シャリル王子殿下って呼んでくださいね、アンジェリカ嬢」と気品を漂わせた上辺の笑顔を見せた。


「仕事や詳しい話は明日からにしますので、これからグラデュラス公爵家にアンジェリカ嬢の必要な荷物を届けてもらうように手配してください」


ああ、と思い出したように付け加える。


「グラデュラス家の侍女は王宮には入れないでください。侍女についてはこちらで用意しますので。午後から引き合わせますのでそれまではお休みください。僕は襲撃事件の件で忙しいのでこれで」


 そう言い残してそそくさと部屋から出て行った。


 軽食と共に残された私は、悔しいのやら腹立つのやら、心細いやらで複雑な感情のまま、それら全てを飲み込む勢いで残った紅茶を一気に飲み干した。

 


 午後になると三人の侍女がお世話係として挨拶に訪れ、それから昼間っからだがお風呂を準備してくれて、至れり尽くせりで髪も綺麗に洗い香り高いオイルでマッサージまでしてくれた。

 自分では見た目が柴崎菜央なので、人に見られお世話してもらうのは気が引けたけれど、多分、貴族令嬢だとこれが日常なのだろうと思えば、気後れせずに堂々とすることにした。


「お嬢様は肌がとても綺麗ですね」


 一人の侍女がマッサージをしながらもうっとりとため息を零す。

 やはりアンジェリカに見えているのは間違いなさそうだ。


 ニコリと微笑んで「そう? 嬉しいわ、ありがとう」と応えると侍女はハッと息を呑んで頭を下げた。


「お声かけ失礼いたしました。思わず声が出てしまいました」


 一瞬怯えたような声音に、私は上品な笑みを浮かべる。令嬢らしく。


「気にしないで。急に王宮に来ることになって私も心細いの。だから気安く接してくれると嬉しいわ」


 アンジェリカってこんなキャラじゃなかったはずだが、彼女のいかにも貴族令嬢的な態度はとても真似できそうにないので私なりの令嬢を演じるしかない。


「あなたたちも突然の配置換えで大変だと思うけれど、よろしくね」


 私の言葉に侍女たちは明らかに顔を輝かせた。


「そ、そんなお気遣いありがとうございます」


「精一杯お仕えさせていただきます」


他の二人の侍女も表情をぱあっと明るくして口々に話し始める。


 着替えも済ませてさっぱりした頃、扉が強くノックされた後、返事も待たずに大きくドアが開かれた。

「アンジェリカ様!」


 部屋に駆け込んで来たのはガゼルだった。


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