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策士ですわね

 けれどこれで王子との結婚はなくなり、さらに成瀬から色々と聞き出せる機会が増えると思えば悪くないかもしれない。


 私は少し首を傾げてからツンとすました顔で問いかけた。


「シャリル王子、仕事にはきちんと対価を払っていただけますの? わたくしは安くありませんわよ」


 ぶはっ、と紅茶を吐き出しそうになった成瀬が、とても嬉しそうに笑う。

 その隣のリゼル王子は、ただムッツリと黙り込んで瞳を陰らせていた。



 とんでもない策士だったよ、シャリル第二王子め。


 仕事をするのはまだいいんだけど、王宮の中に部屋までもらって家に帰れないとは思ってもみなかった。

 確かに「王宮に住まわせることにする」とあの応接室で言ってたけれど、あのゴタゴタの中でそこまで確認できていなかったとしても咎められることはないだろう。


「あのさ、一応私って公爵令嬢なわけじゃない? それを王子の一存で監禁だか軟禁だかするみたいにしていいの? この国、どうなってるのよ。独裁国家なの? あと襲撃の犯人捜しはどうなってるのよ。ん、このサンドイッチ美味しい」


 起きてから何も食べずに馬車に放り込まれた私は、王子たちとの話し合いが終わり緊張から解き放たれた途端、盛大にお腹が鳴った。大人として恥ずかしいくらいに。

 すぐに大笑いしたシャリル王子の手配により簡単に食べられるブランチを、王宮内のアンジェリカの部屋に用意してくれた。


 それを食べながら、目の前に座る成瀬の顔をしたシャリル王子に愚痴る。なにもかもが急展開過ぎる。昨日この世界に突然迷い込んだばかりなのに。


「家に帰りたかったんですか?」


 二人きりになると敬語を使ってくるところが小憎たらしい。


「そりゃあ、王宮では気が抜けないでしょうに。今までのアンジェリカの様子がわからないから家にいても気が抜けないかもしれないけど、自分の家がいいに決まっているじゃない」


「そうでもないと思いますよ」


「どういう意味?」


 モグモグしながら首を傾げると、成瀬はグッと身を乗り出して私の唇の横を親指でぬぐい甘い笑顔を見せる


「ソース、ついてますよ、先輩」


 その指をわざと見せつけるようにペロリとなめた。


「ああああ、あんたって、ほんとヤなやつ! ひ、人の口元についたもの舐めるとか正気なの!?」


 諸々恥ずかしくて頬を赤くした私に、成瀬は「嘘ですよ、何もついてませんって」と嬉しそうに笑った。


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