ちゃんと助けまして?
「あー、あれかぁ。やっぱ、あれだな-、あれはないよねー」
逃げ出すほど怖がられても仕方ない。
衆人環視の中であんなに危険な炎をぶっ放したんだから。
だって人が半分焦げてたもん。私も自分が怖いわ。
あの黒フード人、大丈夫だったのだろうか?
「お願い、誰か大丈夫だったと言ってぇ……」
ベッドの上でがっくりと項垂れていると、今度はバタバタと足音がいくつか部屋に駆け込んできた。
「アンジェリカ、目が覚めたのか!」
アンジェリカと同じ艶やかな赤い髪のロマンスグレーダンディなおじさん、多分、アンジェリカの父親と思われる紳士が、ベッドのすぐそばで立ち止まる。
その少し離れた後ろには先ほどの女性――改めて見るとメイドっぽい服装をしているからメイドさんと思われる――と、男の人が二人立っていた。
しばらく無言でこちらを見下ろしていた父(推測)の瞳は、どこか探るような色合いを含んでいる。倒れた娘が心配だという色は含まれていない。
やがて大きく息を吐いて緩やかに首を振り、ゆっくりと口を開いた。
「昨晩の記憶はあるか? 舞踏会での騒動だ。メイドがおまえの様子がおかしいと血相を変えて走ってきたが、記憶障害とかではないか?」
様子がおかしいもなにも、今までのアンジェリカのご自宅での様子がわかりませんので、とりあえず「記憶は、あります」とだけ答えた。
「そうか……実はおまえに、王子暗殺の嫌疑がかかっている」
「はあ!?」
思わぬ言葉にレディーらしからぬ反応をしてしまった。
王子暗殺? なにそれ?
「とにかく宮中より呼び出しがかかっている。今すぐ準備をしろ。宮中には先触れをだしておくからな。ああ、それとおまえには監視がつく。これ以上身勝手なことはするな」
冷たく言い捨てるように父はすぐに踵を返して部屋から出て行く。
父が部屋を出る時にメイドと男二人がサッと頭を下げた。
(ちょっと……どういうこと? 思考がついて行かないんだけど? もしかして黒焦げにしたフード男が王子様だったとか?)
このイベントで王子暗殺の嫌疑がかけられたのは、王権を狙う国王陛下の弟のシュバリア大公だったと後々判明するのだが、アンジェリカはただ勘違い女になるだけだったのに、何が起こった?
ヒロインはどうした? 王子様をちゃんと助けた?




