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踊らんわ!でございます

 一緒に踊らない。それが一番いいはず。


 勘違いアンジェリカは生まれず、そうなればヒロインを虐めることなく、隣国のおっさん王に嫁ぐことはなくるんじゃない?


 と言うか、まずダンスが踊れる気がしない。

 社交ダンスとはこれまで縁のない生活だったからだ。

 もしかしたらアンジェリカの記憶で颯爽と踊れるかもしれない。が、万が一全然ダメだった時を想像すると――。


 注目の中での王子様と踊れもしないダンス


……考えただけで世にも恐ろしい世界だ。


「アンジェリカ嬢、兄上と踊らないなら僕と、どう?」


 成瀬の顔をした第二王子が手を差し出す。


 なおのこと踊らんわ! 


 でもあんたには聞きたいことが山ほどある。

 踊りたくはないが、なんとか二人で話す機会を持てないかと思案していると、誘いを断れず困っているかと思ったのか、隣に立っていたガゼルがサッと私の手を取り、シャリル王子に毅然として言った。


「婚約者候補の令嬢のファーストダンスを求めるのはスマートでないと思われます。失礼とは存じますが大切な又従姉妹を守らせていただきます」


 お~、守るとか、イケメンに言われちゃっては照れてしまうじゃないのさ。

 もう実際の恋愛とか面倒くさいと思ってたけど、こういうのは悪くなくないねー。


(もしかして、アンジェリカの逆ハーありなの? ガゼル卿とリゼル王子と……いや、シャリル王子は成瀬だし、ないな)


 そんなことを考えている間に優雅に音楽が流れ出す。


 ホールの中央を見やれば、リゼル王子はピンクの愛らしいドレスを着た少女とダンスを始めていた。


 誰だっけ、あれ。


 ゲームの設定の中のリゼル王子の婚約者候補の令嬢の一人とは思うけれど、正直アンジェリカ以外の令嬢については名前あったかな? くらいの認識しかない。

 そんなモブ令嬢の一人だとは思うのだがやけに見覚えがある。はっきりとは思い出せないが見た覚えがある。


 アンジェリカと一緒になってヒロインを虐めてくる一人かなぁ。

 その相手と一緒に踊り出している。


 このイベントにファーストダンスの相手はそれほど重要ではないのかもしれない。

 この後に襲撃事件が起きて怪我した王子をヒロインが癒やす、との流れさえあればいいのかもしれないな、と思ったところでハッとして私は周囲をキョロキョロと見回した。


「あいつらだっ!」


 今まさにバルコニーから黒いマントにフードで顔を隠した男が三人、舞踏会会場になだれ込もうとしていた。


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