く、苦しいですわ
「んっ!!」
一瞬にして息が詰まる。
タイミング悪く息を盛大に吐き出した後なので肺の中は空っぽだった。
(くっ……苦し……)
今にも意識が遠のきそうになった途端に首を掴んでいた手の力が緩んで私はその場に膝から崩れ落ちた。
ひゅっと息を吸い込んでから激しくむせ、目尻からは自然と涙がこぼれ落ちた。
「逃げられるとでも思ったのか」
背後から男が唸るように低い声を出す。苛立ちと、楽しげな声音。そして背筋を這い上ってくる震え。姿は見えないけれど確信する。
ギースだ。
この声は間違いなくギースだった。
――なぜ?
明日までギースは戻ってこないはずなのに、こんなに早く、それも私の位置をすぐに見つけられたのだろうか。どうして?
げほっげほっと激しくむせる私を片目で見下ろしながらギースは舌なめずりをした。
「ああ、苦しむ姿も美しいなあ、アンジェリカ。おまえの細い首を折ってしまいたくて自制するのが難しいほど魅力的だな」
ギースはしゃがみ込むと軽々と私の体を横抱きに抱えるや、以前ギースが噛みついた私の首筋に舌を這わせた。
「おまえに俺のしるしをつけておいた。俺からは逃げられないようにな。おまえがどこに行こうが逃げようが、俺の手の内にある。おまえを手放す気はないから諦めろ」
ちょ……え、嘘……
ええええ! あの噛みついたのが? え、どうやって? てかGPSってこと?
それは……それは……ないでしょう、ギースぅぅぅ
愕然として顔色をなくす私に、ギースはこれ以上ないほど嬉しそうに笑った。
「おまえを絶望させることがこんなに愉悦を与えてくれるとはな! ああ愛しいなあ、アンジェリカ」
愛しいの使い方! 間違ってる!!
ぎゅうっと抱きしめてくるギースから、わずかに薬草のような匂いがした。
どうやら火事になり私が逃げた途端に、あの男たちから緊急連絡がギースに入ったらしい。
なに、それ。そんな便利なもの、この世界に無いはずなんだけど。
それもギースの魔法の術式で作られた一度のみで一方通行の無線機のようなものらしい。
それで私が逃げたことを知ったギースは、これまた魔法の術式で空間移動をして私のところに瞬時に駆けつけたそうだ。




