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脱出いたしますわ!

「ううう、痛っつ!」


 靴を履いていない素足に衝撃が襲う。


「靴って……偉大だわ」


 靴の重要性を再認識させられつつ、素足のままで外に這い出る。


 すうっと思い切り外の空気を吸い込むと、深い緑の匂いが流れ込んできた。

 なんだか久しぶりに息を吸った気分。緑の、森の、自然の濃い匂い。

 この世界に来る前から、もうずっと深くから息をしていなかった気分だ。


 まるで自由の匂い。


「さあ、逃げるわ」


 馬車の馬が繋がれている場所まで男たちの視線を避けながら急ぎ足で向かう。


 残念ながら馬の繋がれているのは井戸の側で、今は男が何度も水をくみ上げては渡していくというバケツリレーを行っている最中だった。


「あっちゃ~、場所、悪っ」


 でも大丈夫。

 馬の繋がれている縄を炎を投げつけて焼き切ると同時に私は走った。


「ひいっ」


 今、まさに水をくみ上げたばかりの男が私が猛然と走ってくるのを愕然とした表情で見て小さな悲鳴を上げ尻餅をついた。


 火事の小屋を背景に乱れに乱れた真っ赤な髪を振り乱し着崩れたドレスを来た裸足の女がダッシュしてきたのだ、相当驚いたのだろう。

 その瞬間の隙を見逃さずに、私は尻餅をついたままの男の前に立ち塞がるやおもむろに靴を剥ぎ取った。


「靴と馬、いただきますわね」


 ふほほほ、と悪役らしく高笑いを残し、思いっきり小屋に大きな炎を投げつけて、ついでに男の周りをぐるりと囲むように火の海にしてから馬に飛び乗った。


 あ、行ける!


 アンジェリカは乗馬がとても上手だったらしい。

 鞍を外された馬なのに、バランスを取りながら馬の腹を蹴って走らせることができた。

 だがすぐに後悔する。


(いやあぁぁ、やっぱり無理無理!! もう落ちそう!)


 さすがに鞍のない馬などそんなに乗りこなせるものではない。股で強く馬の腹を挟んでいなければすぐに落ちてしまう。いくら乗馬ができるといっても遊牧民レベルで乗りこなせるわけじゃない。今にも滑って落ちそうになる。


 ああああ、もうだめ!!


 限界を感じて私は馬を止めてズルリと滑り降りる。


 足がガクガクしてしまっていて少し休まなければとても歩けそうにもなかった。


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