なろう作家がよく間違う漢字 ~同音異義語四天王編~
十年以上もなろう作家をやってると、読者の方の誤字指摘や書籍化の際の校正作業で、否応なしに誤字脱字には詳しくなります。
で、その中には「うわあああ! やっちまった恥ずかしいぃぃぃ!」って転げまわりたくなる間違いもありますし、なろう小説は書くだけじゃなくて読んでもいるんですけど、一部の漢字間違いがめっっっっっっちゃくちゃ多いことにも気付くんですよね!
ということで、知見を共有するため、何より「もうこの誤字には飽きたんだよクソがぁ!」ってなる人を減らすために、なろうでよく見る漢字の間違いの中でも、特に目立つ精鋭四つをピックアップして紹介したいと思います!
・「適正」と「適性」
トップバッターはこれ!
ほかではそこまで見かけないけど、なろうという特殊環境にめちゃくちゃぶっ刺さる、いわば環境誤字(?)です!
「適性」と「適正」はすごく似た字面で読みも同じなので、たぶん区別してないというか、自分が別の字を書いてるって自覚もない人も多いんじゃないかと思います。
ただ、これは完全に違う単語なので、当然その意味はかなり違っています。
ざっくり言うと、
適性:その字の通り「適している性質」で、要は素質とか才能みたいな意味。
適正:「適していて正しい」なので、何かが「ちょうどぴったり合っている」みたいな意味。
という感じ。
それでもよく分からんという人のために、なろう的例文を作ると、
君は火魔法の「適性」があるから、火炎魔術師が「適正」職業になるね。
のようになります!
ただまあ、なろうでは大体八割くらいは「魔法適性」で使われるので、迷ったら「適性」って書いとけば問題ない……かもしれません!
・「最期」と「最後」
これもなろう環境で割とよく使われる誤字ですね!
こっちもそもそも漢字が二種類あることを認識している人が少ないんじゃないでしょうか。
まず、「最後」については問題ないと思います。
「最後」の意味としてはまああれです、最後って意味です(循環参照)。
で、問題は「最期」なんですが、これは似た単語で「末期」という言葉がある、と聞くとピンと来る人もいるかもしれません。
「命が尽きる時」というのが「最期」の意味になります。
なんか人が死ぬ以外にも国とか文明が滅びる時にも使うらしいですが、まあなろう小説においては人が死ぬ時に使われるのが八割かなと!
こっちについては使い分けは簡単で、誰か死ぬ時だけは「最期」、それ以外の全てで「最後」を使えば問題ないです。
いやまあなんだったら、人が死ぬ時に「最後」って使っても大体間違いではないので大丈夫です!
ただ、逆にキャラクターの死の場面で正しく「最期」という単語を使えば、読者の目を惹くかっこいい表現になるので、ぜひ「最期」と「最後」を上手く使い分けてみてください!
・「再開」と「再会」
なろうに限らないものなので選定には迷ったんですが、やっぱり誤字の王道と言えばコレ!
「誤字界のゴブリン」とも呼ばれるこいつは避けられないでしょう!
間違いが多く見受けられる理由として、「再開」も「再会」も日常場面においてそれなりに使われる単語で、まあ要するにパソコンやスマホの誤変換が起こりやすい環境が整っているせいなのかな、と考えています。
この単語の意味で引っかかる人はほぼいないと思いますが、
再開:中断していた作業などを再び始めること。
再会:別れていた相手と再び会うこと。
のような意味を持つので、もちろん別の言葉になります。
なろうにおいて特に目立つポイントとして、サブタイトルによく使われるというのがあって、「34話 再開」とか書かれてる話の大半は誰かと「再会」してるんですよね!
感動演出が台無しになるので、なろう作家の方々にはぜひ、今一度サブタイトルの見直しをしていただければ、と!
・「無碍」と「無下」
トリを飾るのは本日の隠し球!
主に「むげにする」という形で使われるこの言葉ですが、これまで紹介した誤字の中で、間違えた時に一番恥ずかしいのが個人的にコレです!
何しろ「無下」の方が簡単だし真っ先に思いつくはずなのに、わざわざかっこつけて難しい「無碍」の方をドヤ顔で書いてしかも間違えてる訳ですからね!
まさにこれは指摘されると「うわあああ! やっちまった恥ずかしいぃぃぃ!」って身悶えする奴です!(一敗)
また、商業ラノベでも割とそのまま通されてたり、意識高い系の作者ほどこの罠にかかりやすいというのが選出のポイント!
脳死で「どうせ『無碍』って漢字が難しいから、常用の漢字に直したのが『無下』やろー」と思っている人も多そう(実際「無下」の語源は元をたどると「無碍」なんでは、って説は一応あるらしい)ですが、実は使われている漢字の意味が全く違いますし、辞書で調べても違う言葉として載っています!
「無下」の方は分かると思いますが、多くは「無下に」という形で使われて、「そっけない・冷たい」みたいな意味になります。
これは私見なので正しいかは分かりませんが、「これ以上に下が無い扱いをする」みたいなニュアンスだと字面との印象も合うかなと思います。
一方で「無碍」は仏教用語で、「何にもとらわれず自由なさま」を表す言葉。
「そんなの聞いたことねえよ」って人が大半かと思いますが、この「碍」というのはほかに「障碍」「妨碍」のように使われる漢字で、「妨げる」みたいな意味合いを持つらしく、「無碍→妨げが無い→自由」ということのようです。
というかまあ、「融通無碍」という熟語以外で「無碍」って言葉を見ることも使うこともほぼないと思うので、全部「無下」って書いておけばいいと思います!
なろう作家がよく間違える漢字、調べてみました!
いかがだったでしょうか?
ほかにも「関わらず」と「拘わらず」、「例え」と「仮令」、「切欠(地名)」と「切っ掛け」、「~週」と「~周」、とかまだまだ色々あるんですが、あんま長々と書いてても飽きちゃうと思うので、興味がある人は自分でググってください!
まあここまで書いておいてアレですが、言葉というのは日々変わりゆくものですし、多少の誤字脱字程度で物語の面白さが決まる訳ではありません。
だから、書く方も読む方もあまり気にしすぎないようにして、余裕がある時だけ直し……いや、でもやっぱ同じページ内で「適性」と「適正」がごっちゃごちゃになってるのは気になるのでここ読んだ作者さんは直しましょう! ……直せ!!
そして最期に、いえ、最後に、読者の方にとても大事なお願いがあります!
なろう作家という生き物は、とても繊細です。
だからもし、なろう小説の中でこの誤字を見つけても、感想欄で「ここ間違ってるよバーカバーカ!」と言うのではなく、誤字報告フォームから優しくそっと修正を出してあげてくださいね!
※追記※
感想欄に誤字脱字に一家言ある同志がワラワラ湧いてきてニヤニヤしてます
せっかくなのでそこで紹介してもらった誤字もここに書いときますね
体制と体勢
同士と同志
辞めると止める
用件と要件
脅威と驚異
特製と特性
内蔵と内臓
適用と適応
やむ負えないとやむを得ない
一様と一応
道理と通り
弱冠と若干
魔法陣と魔方陣
以外と意外
要因と要員
対症療法と対処療法
重傷と重症
関節と間接
確率と確立
僥倖と行幸
以上と異常
予言と預言
自身と自信
獲物と得物
延々と永遠
咀嚼と租借
可笑しいと奇怪しい
姑息と小癪
話と話し
時期と次期
敬遠と倦厭と嫌厭
最もと尤も
長すぎィ!
これがネットの集合知……!