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護衛任務。

「そういえばお前らゲームとかって興味あったっけ」


「多少は」


「まったく」


「正義はなんでついてきたんだよ」


彼の名前は新井(あらい) (ゆう)。同じクラスの人で、茶髪でイケメンで普通に陽キャ。

とりあえず今日ついて行ってもいい?と聞いてついてきたら、隣町のゲームセンターの前だった。

これから入るって時にこんな質問されたが、正直あまり興味はない。

遊ぶ暇があるならスターヒーローを見るし、大全集を読むし、特に退屈で困ることはないからだ。

それに、ゲーム機買ったりするお金があるなら今頃俺の部屋はスターヒーローのグッズだらけになってるはずだ。

俺のおこづかいはそれほど多くないのだ。

いまだって、大全集とかすはずだった泣けなしの千円を握りしめて入口の前に立っているのだ。できるなら、今から本屋へと走りたい。

そう思ってたはずだったのに。


「出来、凄いよこれ!スターヒーローが勝ったらメダルがジャラジャラでてくるよ!」


「正義。パチンコはほどほどにしときなよ」


「それには深く同感する。けどゲーセンにあるのなら100円でできるし、あれにハマる分には大丈夫だと思う。たぶん」


俺はハンドルを握って鉄の玉を打つ遊びをしたり。


「出来、凄いよこれ!スターヒーローに変身して戦えるなんて!」


「正義。流石にそれを全力で遊ぶのは周りの目が痛いから止めといた方がいいよ」


「さすがヒーロー志望の高校生。やることが違う」


パネルの前で変身ポーズとったり戦ったりする遊びにはまってしまった。

これは完全に想定外の嬉しい誤算であり、大全集に変わるはずだった千円は、気づけばどこかへと消滅していて、それはそれは満足できる時間であった。


「いやー、まさかゲームがこんなに楽しいものだったなんて」


「俺お前らがついてくるって言ってた時はちゃんと楽しめるか心配だったけど、ありがとな。またやりに行こうぜ」


「いいよ。今度もホッケーするかい?また俺が勝つと思うけど」


「すみません勘弁してください」


出来は新井くんとホッケーをしてた。最初は新井が押してたんだけど、ルールや戦い方を理解し始めた完璧超人出来に一方的に押され始め、負けたくないってめちゃくちゃ必死になってる新井くんの顔が面白かった。

そんな感じで三人で話しながら外へ出た時だった。

新井の表情が変わった。


「で……でた……」


恐怖し後ろに後退る彼の目線の先には何もいない。しかし、あの経験が俺と出来に怪人がいると教えてくれる。

誰もが気づかずに通るその空間に、確かにいるはずなのだ。


「ケダマンが……でた……!」


新井の言うケダマンが、彼から生まれた怪人の姿であることも想像できた。しかし、名乗りの雄叫びの後に表れたのは、その原型だけを持ったまったく別の生き物だった。


「ゲダマアアアアアアアアアンッ!」


獣のような雄叫びと共に表れたのは、ケダマンと呼称されていた人間ほどの大きさの怪人。しかし様子がおかしい。

ケダマンのビジュアルはさきほどゲームセンターでみた毛むくじゃらの可愛らしいデザインではなく、形だけでその見た目は今にも崩れそうな姿で黒く染まっていた。

これを俺はみたことがある。思いを失ったスターヒーローと同じだ。

つまり、すでに思いは叶った後であると考えた方がいいだろう。

突然表れた怪物に、周囲の人間は撮影か何かとぼやいている。

しかし鋭く伸びていく爪が、このままではまずいと俺に悟らせた。


「アプリさんいくよ!」


「ログインコード認証。機能解放。変身プログラムの使用が可能になりました。現在使用できる変身IDは、HEROです」


怪物は飛び上がり、新井を切りつけようとこちらに向かって飛び上がる。


「H・E・R・O!ヒーローモード!」


「承認しました。変身を開始します」


新井と怪物の間へと入り、怪物の攻撃を受け止める体制に入り、スーツを全身に身に纏う。


「俺、見参ッ!」


ギリギリ名乗りが間に合い、攻撃の肩代わりに成功し、切りつけられた箇所に痛みが走る。


「この痛みぐらいなんてない」


反撃にまっすぐに伸ばした拳が怪物に命中し怪物を貫通する。


「やったか!」


それを見た出来が言うのに釣られて、新井が続けた。


「駄目だ……ケダマンは倒しちゃ駄目なんだ……」


貫いた怪物がもぞもぞと動き、ポップコーンのように破裂した。

それを見た周りの人間は一斉に逃げ出した。

その理由は破裂したからでも、今になって恐怖し始めたからでもない。

その破裂した欠片一つ一つが、マスコットサイズの怪物だったからだろう。

何十体もの怪物は再び爪を伸ばし、周りのものを睨み付け、手当たり次第に攻撃を始めた。


「逃げるよ新井くん!」


「正義くんはどこに行ったんだよ!?」


「アイツは生きてる。生きて会いたいなら走るんだ!」


出来が新井の手を引っ張り、逃げ出す。

そんな時に俺は、沢山いるうちの10匹くらいに押し潰され引っ掛かれていた。


「ちょっ、やめっ……どけぇ!」


さっきの大きい時ほどの痛みはないが、一般人が食らえば、大怪我は免れないほどのものであると察せるくらいの痛み。

このスーツがなきゃ今頃大変なことになっていただろう。

ずっとこのままでもまずいので、俺は怪物の群れを振り払った。

すると飽きたのか他の獲物を見つけたのか、どこかへと行ってしまった。

やけに素直に退いてくれたな。なんて思って怪物が向かう先を見てみると、走って逃げる出来と新井の姿が。

退いたんじゃない、離れたんだ。つまりあの大群は、生みの親である新井を狙ってるんだ。


「倒しても分裂ってどうやって倒せばいいのさ!?」


「ケダマンはビーム属性以外の技を食らうと分裂して生き延びるんだ」


「つまりビームならいける!」


出来が新井から聞き出し、大きな声を出して俺に教えてくれた。つまり急いでやってくれってことだ。


「アプリさん、S・T・A・R!」


「ID確認。強化を開始します」


自身をつつむバリアが崩れる。


「一点掃射、ジャスティスター!」


変化した瞬間に瞬時にささっと名乗りをあげ、浮遊する怪物の群れにむかって、腕をクロスさせる。


「スタアアアアアビイイイイイム!」


放たれた光線は怪物を焼き払い、大半を滅することに成功した。

しかし、まだ数匹の生き残りがいる。

なんとか追いつこうと駆け出したその時には、今にも新井を襲おうとする間近のところだった。

このままじゃまずい。そう思ったときだった。

怪物が打ち抜かれた。

どこからかはわからない。ただ、天からであったことだけは理解できた。

空からうち放たれたであろうそれが、怪物に刺さっていたのだから。

打ち抜かれた怪物は分裂せずに消滅した。

つまり怪物を打ち抜いたこの矢は実物ではない。

宙から地に落ち、転がった後に矢は消えた。

その後次々と矢は放たれ、残った怪物は完全に消え去った。

一体誰が怪物を打ち抜いたのか。


「まさか思いが消えてるなんて。彼を選んだのは誰なのかな」


空から聞こえる声の主を探すため、俺はとっさに声の方向を向いた。

そこにいたのは全身に青いスーツを纏った人の姿だった。

身長は俺と同じくらいで声質的には男だろうか。しかしそのスーツ、俺はどこかで見覚えがある。


「あの姿……正義くんの素体のスーツと似ている」


「今度は何があるっての!?」


何が起こっているのかわからない新井と、冷静に分析する出来。

これが経験の差ってやつか。

それより、俺のスーツとあれが似てるってことは……仲間なのかな。

いっそのこと聞いてみることにした。


「お前は敵なのか? それとも味方なのか?」


「それを聞きたいのはこっちだよ。そのスーツを着ているってことは僕らと同じ力を持っているんだろうけど、君のスーツは一度だって見たことない。君の目的はなんだ」


「俺は大切なものを守りたいだけだ。お前もそうじゃないのか」


「違う。僕たちは崇高な目的のために動いてるだけさ。それより……そうか仲間じゃないんだね。それなら……」


この一瞬。彼の手に握られた銃に気を取られていた一瞬。気づけば俺の胸に矢が突き刺さっていた。


「さっさと消えなよ怪人。えーとたしか……瞬矢。それと、エクスプロージョン」


突き刺さっている矢尻の部分が急激に熱くなり始め、大爆発を起こす。

爆心地で諸に受けてしまった俺は変身が解除され、俺はその場に倒れ込む。

自分の胸に恐る恐る手を当てると、そこに傷跡はなかった。

殺傷能力はない……かと思ったのだが、そんなこともなさそうだ。

なぜなら俺を撃ち抜いた張本人がが明らかに動揺していたからだ。

きっと俺は、スーツの性能のおかげで生き延びたのだ。アプリさんに感謝しなければ。


「そんな……だとしてもやらなければ、だとしてもやるんだッ!でなきゃ僕は……僕はッ!」


動揺。それをしながらも、震える手で銃を握り、動けない俺に向けた。

俺はその光景に恐怖した。



「嫌だ……まだ死ねない、死にたくないッ!俺はまだできてない。抱えきれないほどに沢山の……大切なものできてないッ!動けよ……これくらい動いてくれよッ!」


どこまでだって不格好で見苦しいあがき。しかしこれは俺の本音であり、恐怖に耐えきれなくなった証拠でもあった。

俺はきっと、今日の事を後悔する。

辛くても、耐えて前で導かなくちゃならないヒーローが、こんな無様に不格好に命乞いをするなんて、あっちゃならないんだ。

しかし、溢れ出す思いは俺を止めてはくれなかった。


「あがくなよ……そんなの惨めで……僕には撃てないよ……」


青スーツは震える声でそう言って銃を下ろし、逃げるようにどこかへといなくなってしまった。


「助かった……だよな」


俺はきっと助かったのだ。

しかし、俺は負けた。敵の優しさに助けられただけの敗者。

俺は……。


「スーツの損傷を確認。チャージを開始します。終了予定時刻は48時間後です」


アナウンスが流れる。俺は泣いていた。

それは、非力さに打ちのめされてるわけでも、敗北したことに押し潰されそうなわけでもなく、ただ俺と同じ力を持ちながら人を傷つけたものへの怒り。

そして、自分自身の心の弱さに感じた情けなさによるものだった。

同時に俺は思った。もっと強くならなくちゃならないと。

そして、俺は前を向いたその時に……。


「容疑者を確保しました。署まで連行します」


「え?」


警察に捕まった。


はは。わざわざうった後書きが全部消えるってどんな気持ち?ねぇどんな気持ち?

サイテーな気分だよ。金曜日の朝に戻してやりたい気分だぜ。

次回もよろしくお願いいたします。

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