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星の決闘

夕日が差し込む廃工場の中で、俺は逃げられないようにと、落ちていた縄で拘束されていた。


「……俺を誘拐して、どうするつもりだ」


「どうするつもりもない。ただ、彼が君を助けにこなければ、諦めたものと見なす。友達一人助けようともしない人間に、ヒーローになる資格はないからな」


夢を諦めさせる……。そんな心当たりのある思いを、今の話から感じ取った。


「君の目的は、正義の夢を諦めさせることなのか?」


「そうだ。その思いを叶えるために必要な、記憶と姿を持って、私は生まれてきた」


「だからスターヒーロー……」


なるほど。確かにそれなら、その見た目にも納得できる。

闇落ちし、憧れの姿から欠けはなれたものを見せられれば、諦めたくなっても不思議ではない。


「それに、こうなったのには君にも原因がある。わからないかい?」


「俺に……原因……?」


まさか。っと思った。ここまで出揃った情報、そして俺のせいと言われて、心当たりがあるなんて。

しかしそうであるなら、俺は友達に謝らなければならない。

なぜってそれほ……。


「私は、君の思いから生まれたのさ」


「俺の……思い……」


予想が当たって、こんなにも嬉しくないことはない。

なぜって、俺の友達のためにと思っていたことが、その友達を傷つけてしまったのだから。


そういえば正義の夢ってまだヒーローなのか?そろそろ辞めといた方がいいって絶対。


昨日に正義に言ったことを思い出し、俺はいまになって後悔している。

誰かのためを思ったことが、ナイフにだってなるんだって、思いしったのだ。


「さて、諦めの悪い男であるのなら、そろそろくる頃のはずだ」


スターヒーローの予想は的中した。

廃工場の入口がきぃーっと静かに音を立てながら開く。

扉を開け、中へと入ってきたのは、正義だった。



「約束通りきてやったぞ!さっさと出来を解放しろ!」


俺はスターヒーローに向かってそう叫んだ。

夕日の光で、中の様子は見えている。

縄で縛り付けられた出来。その横にいるスターヒーロー。

まるで、人質をとる悪役って感じだ。

そんなシチュエーションは、嫌いじゃないけど、相手がスターヒーローとなると話は別だ。

憧れがそんな卑怯な手を使うなんて、正直まだ信じたくはない。

しかし、目の前にいるのは、誰かが思い描いたであろう、スターヒーローが悪に落ちた姿であり、そう納得できるほどの要素がある。

仲間にデザインしてもらった胸のシンボルは、傷ついており、全体的なカラーも、明るい色から黒をベースに変更されている。

そして、仲間を失ってしまった記憶。

その全てが闇落ちしたことをものがたっていた。


「待っていたぞ、独目 正義。どうやらその夢、諦める気にはならないらしい」


「当然だ。お前にもらった夢と正義を、簡単に捨ててたまるもんか」


「しかし、捨てろという思いを私は受け取った。少なくとも、それを良くないことだと思う人間がいるということだ。だからその人のためにも、今ここで諦めろ」


まさか憧れにそんなことをいわれる日がくるなんて思ってもいなかった。

しかし、いくら憧れに言われたとしても、俺は諦める気なんて微塵もない。


「断る。スターヒーロー。努力すれば夢は叶うと教えてくれてのは、あなただったからなッ!」


俺は、スマホさんを起動……しようとした。

やっぱり、戦うことって勇気がいることなんだって思った。

この思いは、勢いだけで誤魔化せるものじゃない。

あと一押しが必要だ。

それを僕は、友達に頼むことにした。


「出来、お願いがある」


「なんだよこんな時に」


「こんな時だからこそ、あと一押しの勇気がほしい。それを俺にくれないか」


出来は少し考えた後にこう叫んだ。


「負けんなよ正義ッ!」


一押しの勇気と共に、俺は全てを、戦う勇気へと変えた。


「おうともさッ!いくよスマホさんッ!」


「ログインコード認証。機能解放。変身プログラムの使用が可能になりました。現在使用できる変身IDは、HEROです」


「H・E・R・O!ヒーローモード!」


「承認しました。変身を開始します」


大きなエフェクトと共に、スマホの中から出現した各部のアーマーが、次々と全身に装着されていく。

胸、両腕、両足、そして頭。


「変身完了。名乗りの時間です」


全身のアーマーの装着が完了したとき、スマホさんからそんなアナウンスが流れた。


「えっ、名乗り?」


「はい。今のあなたは、怪人と同じく異端な存在。怪人が認知されるように名乗りをしたように、認知された存在である怪人と戦うには、こちらも認知される存在とならねばなりません」


どうしよう。やると思ってなかったから、なにも考えてない。


「えーっと、あーっと、未定にして後で決めるっていうのは……?」


「仮の名前をつければ可能です」


えーっとじゃあそれなら……。


「ジャスティスヒーロー(仮)参上ッ!」


クソダサい名乗りにクソダサいポーズ。もしこの名乗りに採点があるとしたら、間違いなくぼろくそに叩かれるような格好になった俺は、だんだんと恥ずかしくなっていく。


「ジャスティスヒーローいざ勝負ッ!」


「はっ、はい!勝負だスターヒーロー!」


助けられたことに、心で感謝しつつ、スターヒーローに駆け寄り、全力で拳をふった。

その拳はスターヒーローの腹に届き、ガキーンと音が鳴り響く。

ここまてま速く殴ったのだ。こんなにも速く届かせたのだ。少しぐらいはダメージになってるはず……なんて、そんな考えが甘かった。


「その程度か」


その言動からもみて取れるように、一切のダメージをおっていないように見える。

まだだ、っと俺は腹を殴り続ける。

しかしやはり、一切効いてるようには見えなかった。


「今度はこちらからいくぞ」


ふんっ!っとふった拳が、俺の顔面へと直撃する。

しかし前のようにはならず、すこし踏ん張ってみせただけで、数メートル後ろにさがっただけですんだのだ。


「これが、アプリさんの力……!スターパンチを食らってこの耐久性……!」


これなら戦えるかもしれない。そう感じ取った俺は、再び拳を構えると、スターヒーローがあきれているように見えた。


「何がおかしい」


「何を勘違いしているのかは知らないが、今のはスターパンチではない、ただのパンチだ」


「なん……だと……?」


ただのパンチ!? この前のスターパンチの何倍もの威力があったように感じたレベルで普通だってことは、いったいどんな威力してるっていうんだよ!?


「そして、みせてあげよう。これが本当の……」


拳を構えた。本気のスターパンチがくるッ!


「スタアアアアアアパアアアアンチッ!」


その拳は反応できないほどに速く、そして見ようとするまに顔すれすれで横をすり抜け、背後にあったものは、空の彼方へと吹き飛んでいってしまった。


「わざと外したのか……」


そんなことな察せないほど、俺は鈍感なんかじゃない。そんなスピードとパワーがあれば、わざと外そうとしない限りは、絶対に外すことなんてないはずだ。


「これで諦めてくれるといいのだが」


「そんなことできるもんか!」


俺はすこし距離をとり、警戒しつつ言い返した。


「残念だ」


腕を十字に構え始める。この構えはまさか……スタービーム!?


「スタアアアアアアア……」


チャージが始まった。どうする。

スタービームは、約1秒のチャージの後、エネルギーがたまった腕から必殺ビームを放つ技。

殴って止めようにも、さっきの攻撃で一切効いてなかったのを知っている。故にそれは難しい。

ならばと逃げようにも、スタービームの射程距離は実質無限。

外すことを祈らない限り、あれを避けるなんて不可能。

ならばどうすれば……なんて考えていたのが仇になった。


「ビィイイイイイイイムッ!」


腕から発射された光線を直に受け、光に飲み込まれた俺はたちまちたまらず、叫び声をあげてしまった。

光線が消えた時、燃え尽きたように膝をつき、その場に倒れこんでしまった。


「エネルギー低下、エネルギー低下。これ以上ダメージを受けると、耐久値が限界をこえ、再チャージ状態になります」


「こんなにも差が開いてるだなんて……さすが憧れたスーパーヒーロー……本当に勝てるのかな……」


「勝てます」


あまりにも簡単に告げられた一言。それは、俺の吐いた弱い気持ちを吹き飛ばすのには十分すぎるほどに強烈であった。


「どうやって?」


しかし、スターヒーローの全力を正面から受けた俺は、それを信じきれずに聞き返す。


「キャプチャー機能を使います」


「キャプチャー……機能?」


「怪人の中にある思いを取り込むことができます。これを使えば、スーツを強化することが可能です。しかし、怪人は暴走を始めます」


「暴走って……これ以上憧れを傷つけられるか!」


あいつは仲間を失って、今度は意思まで奪うなんて、そんな酷いこと俺には……俺にはできっこない!


「かまいませんが、時間と共に思いはおぼろげとなり、思いを果たした時と同じように暴走を開始します」


「先延ばしになるだけだって、どうしてそこまで知っているんだッ!」


「データベースに記録されているからです」


残酷だ。最悪だよ。それをわかった上で、俺は正義の味方として、やりたくもない選択をさせられることになる。

だとしても、そうだとしても、俺は……俺は……!


「わかったよ、やってやるよ!やらなきゃならないんだろ!どうすればいい!」


「腰に装着されている私を外し、怪人にパネル側を向け、キャプチャー起動。と、叫んでください」


俺は言われた通りにアプリさんを取り出し、怪人にパネルを向けて叫ぶ。


「キャプチャー起動ッ!」


「了解しました。キャプチャーを開始します」


その瞬間、画面の中へと続く渦が発生し、スターヒーローが飲み込まれていく。


「こ……これは……!」


スターヒーローの体から出た数多の光が、渦に絡みとられていく。

絡みとられた光は、渦をなぞりながら、アプリさんの中へと運び込まれていく。

全て飲み込んだ時、アプリさんの画面は光だし、アナウンスが流れた。


「解析完了。能力ランクS、スターヒーローが使用可能になりました。強化IDはSTARです」


「S・T・A・R!スターヒーロー!」


俺は叫んだ。


一時間くらい前のこと。


「それでは、変身講座を開始します」


「よろしくお願いします!」


「まずは、私の名前を呼んでください」


「はい。アプリさん」


「ログインコード認証。機能解放。変身プログラムの使用が可能になりました。現在使用できる変身IDは、HEROです。……以上を私が読み上げた後、変身IDを言ってください」


「えっと……ヒーロー……」


「承認しました。変身を開始します」


「うおおッ!全身にアーマーがくっついていく!? す……すげぇ……あっという間に終わっちゃった……。これが変身ってやつかー!」


「この工程を守っていただければ、自分なりの変身を叫んでいただいてもかまいません。以上で変身講座を終了します。なにか質問はありますか?」


「はい。変身を解除する時ってどうすればいいですか?」


「その場合は、デバイスの大きなボタンを押していただければいつでも解除できます」


「大きなボタン……あの電源マークそういうのだったのね……」


ついさっきの変身中。


「H・E・R・O!ヒーローモード!」


「承認しました。変身を開始します(慣れるのはやすぎませんか?)」


次回もよろしくお願いします。






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