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塗りつぶされた星

スターヒーローの胸のマークが虹色に発光する。

当然俺は、その意味を知っている。胸のシンボルが光るのは、必殺技を出す証。

そして虹色に対応する技はスター流星群(ミサイル)

胸のマークが虹色に輝き、空からミサイルのように隕石を落とし続ける技。

俺はそれを悟った瞬間……驚愕した。

あ……あれはスター流星群(ミサイル)!?

最終回で登場した最強必殺をこんなところでみれるなんて……。

いや、嬉しくない。少なくとも、あんな闇落ちスターヒーローが使ってるところなんてみたくなかった。

仲間との絆。それがこめられてるあの技を、人に向けて打つなんて……!


「ほんとッ!最……低ッ!」


人一人分くらいのサイズなのだが、どっちにしろ、あんなのにぶつかればひとたまりもない。

地面に激突する旅に爆発がおこり、俺たちが通った逃げ道にそって、大きなあなぼこだらけになっていく。

俺は一瞬だけ背後を振り返ったその瞬間、悪い想像を働かせてしまい、恐怖で足を止めないためにも、振り返るのをやめることにした。

交差点に出たタイミングで流星が止む。

背後を振り向くと、さっきまででこぼこだらけだった道は、もと通りになっており、なんだったんだと一言こぼす。


「なんでスターヒーローが襲ってきたんだ!?」


「そんなこと、スターヒーローしか知らないよ」


立ち止まり、ぜぇぜぇと息を切らしながら話し合う。

どうして道が綺麗になってるんだ!?

これって、例の怪人騒ぎと何か関係あったりするのか!?

疑問は出てくるばかりだ。


「私は知っています」


その声の主は誰のものでもない。昨日のデバイスからの声だった。

さきほどまで一切喋っていなかったので、少し心配していたところだった。


「知ってる?知ってるってなにを?」


まさか、あのスターヒーローの正体がわかるって言うのか?

何もないところから落ちてきた謎のデバイスに、そんなことわかってたまるか。


「その前に私に命名してください。それがログインコードになります」


「ログ……えぇ……」


突然名付けろだとか、ログインコードとかワケわからないんですけど……


「話してくれないって言うならつけてあげればいいんじゃないか? エースとか」


「マスター以外に、名前を設定する権限はありません」


こういう定型文みたいなのを読み上げるときだけ、あらかじめ用意されていたような音質で喋ってくる。

名付けなきゃ先に進めないっていうならつけるけどさあ。


「じゃあ……アプリさんで」


さっきから、このデバイスの中に唯一入っているアプリ。それがアプリさん。

喋るとき、アプリさんのアイコンのドット絵が動くことぐらいしかわからないのだが、それ以上に謎なのはその本体。

スマホ型の機械であり、パネルの下に、分かりやすいくらいの大きさのボタンがついているこの機械だが、なんと通話やメールなど、アプリさん以外の機能が一切存在せず、ネットへの接続も不可であり、ケーブルを刺す穴も存在しない。

ゆえに、何もわからない。


「アプリさん、承認しました。センスがいいとは言えないくらいそのまますぎる名前ですが、分かりやすくていいと思います」


今バカにされた気がする。


「それでは今より質問コーナーのお時間です。存分に質問してください」


「教えてくれ。さっきのスターヒーローはなんなんだ!」


「さきほどの怪人は、スターヒーローという名前なのですね。データベースに存在を確認しました。なるほど、正義のヒーロー……点定的な闇落ちですね」


「闇落ち……? 怪人ってどういう……?」


「怪人は誰かの思いによって生まれ、その思いを叶えるために行動します。そして、その姿は様々であり、普段は誰からも視認されることはありません。'名乗り,と呼ばれる行為を怪人が行うことで、そこにいるのだと認識できるようになります」


たぶん、出来が見えるようになる直前になってやっていたテンプレの台詞とポーズのことだ。

しかし、それだけだとおかしな点ができることになる。なぜなら、俺は見えていたからだ。


「俺はその前から見えていたぞ?」


「それは、マスターのことを怪人が意図的に見ていたからです。きっと思いを叶えるために、マスターを探していたのでしょう」


「そんな迷惑な……じゃあ逃げたって無駄ってことじゃ……」


「いや、無駄じゃない」


「……え?」


意外だっただろうか。俺がまさかの返事をしたことに、出来は驚いている。ただ、これは現状をなんとかするものではない。

あくまで俺の……だけど。


「少なくとも、今の情報で出来が狙われないってことはわかった。だから、俺に任せて逃げてくれ」


「友達を、見捨てて行けっていうのかい!?」


その意見も十分わかる。しかし、俺は出来を助けると宣言した。

だからこそ、危険の中で一緒に逃げ続けることをさせてはいけない。

そう思ったのだ。


「そう言ってる。お前がついてくる必要なんてないんだ」


「バカ言わないでくれッ!友達のピンチに黙ってられるほど、俺は酷い人間なんかじゃないんだッ!」


「でも……ついてきたところでなにが出来るって……」


俺は、違和感を覚えた。

そして、気づいた事実に目を見開く。

ここにいる俺と出来を除くそれ以外の一切が、動いていないのだ。


「アプリさん。怪人に、修復効果はあるのか……?」


「そんなものが常備されているという情報は一切ありません。固有のものならありえますが、スターヒーローとは、そんな能力を持っているのですか?」


「そんなのなかったはず。それに、さっきから俺たち以外、誰もいないんだ」


もし違うとしたら、この場所の心当たりなんて一つしか考えられない。


「まさか、スターフィールドの中!?」


出来が驚くようにそう言った。

正直、スターヒーローを知っていたのは、昔見ていたからだとしても、そんな技名まで覚えていたなんて驚きだ。

実は出来はスターヒーローが今も好きで、高校生になってからも隠れて見ているのではないか。なんて俺は考えていたが、毎回のように使っていた技だったので、冷静になった瞬間にそんなことはないと考えを改める。

スターフィールド。敵による被害を抑えるために、スターヒーローが使う技であり、敵をブラックホール(入口)の中へと吸い込み、その中の空間の中に隔離し、そこで敵との決戦を行うのだ。

しかし、俺たちは吸い込まれたりなんてしていないはず。

そうでなければ、現実と似たり寄ったりなこの空間のことや、元通りになった隕石の跡などの説明ができない。


「でもとにかくこのままじゃマズイことは確か。このまま再現どおりなら、スターヒーローが俺らを倒しにやってくるッ!」


再現どおり……?


「まあ、確かにこのままじゃまずい。どうにか……して……」


遅かった。そう気づいた時には、すぐ右に出現した拳は自分の頬に触れていた。


「スタアアアアアアアパアアアアアアアンチ!!」


流星のごとき速度のパンチをくり出す。

スターヒーローが一番使っていた技。

今俺はそれをくらい、その勢いで空間のはしまで吹っ飛んでいく。

痛い。けど、生きている。

ごろんごろんと転がって、俺はもう動けない。

急いで、俺が元いた位置の辺りを見る。

やはり来ていた。ブラックホールの中から伸びる腕は、ズズズッとブラックホールの中に戻っていく。

そして、満を持したかのように、スターヒーローはブラックホールの中から表れた。


「不意打ちなんて卑怯だぞ!」


どんどんと遠くなっていく憧れに、精一杯の言葉を叫ぶ。

俺の知っているスターヒーローは、たとえどんな卑怯な相手でも、一度だってそんなことはしなかった。

こんな憧れの姿なんて、みたくなかった。

心が苦しくなっていく。

スターヒーローは俺を見た後、その場で立ち尽くしていた出来を腕で拘束する。


「コイツを返して欲しくば、町外れの廃工場までこい。もしこなければ、この男は死ぬと思え」


離せッ!と出来がもがくたびに、腕の力が強くなっていくように見える。

万が一にでも抜け出されないようにしているのだろう。


「人質なんてとって……お前それでもスターヒーローかよッ!」


「そうだ。私はスターヒーロー。しかし私は、君の信じる偶像などではない。仲間を失った怒りを、敵にぶつける破壊者(デストロイヤー)。闇に生きるヒーローだ」


その台詞を聞いた瞬間、彼は俺の知るスターヒーローではないのだと、確信した。

同時に、あったかも知れない可能性であったのだとも、瞬時に理解した。

出現したホワイトホール(出口)から、出来と共にスターヒーローが出ていくと、空間歪み始め、気づけば俺は、最初にスターヒーローと遭遇したところへ戻っていた。

立ち上がろうとしない俺の足。

俺は、どうしても立てなかった。

きっと、足が折れている。きっと、足は動かない。

俺は、出来を助けることが……できない。


「どうして立ち上がろうとしないのですか?」


アプリさんの声だ。


「しないんじゃない、俺にはできないんだ。さっきから足が動こうとしないんだよ」


「動かない?そんなはずはありません。あなたが殴られたのは頬であり、折れるような転がり方でもありませんでした」


「あのスターヒーローのパンチだぞ?それぐらいなってたっておかしくないはずだ」


「だとしたら、あなたの首は、とっくの昔にモゲています」


自分の首を触ってみる。確かに繋がっている俺の首からは、痛み一つ感じない。

そればかりか、自分の足を見てみても、擦りむき一つしていないのだ。


「どうして……」


俺は、隕石の跡を確認するため、背後を振り替える。

その跡は、予想通りのものだった。

花に当たらないよう、そして俺たちにも当たらないように、大きな逃げ道を残しつつ、花を避けて打ってきていたのだ。

その事実に気づいた俺は、驚きつつも、スターヒーローが優しさを忘れていなかったことに安心を覚える。


「しかし、その優しさも、もうすぐ消えてしまいます。怪人は目的を果たすと、いきる意味を求めて暴走を始め、自分を産み出した者の元へと向かいやがて息の根を止めるでしょう」


「止められるのか?」


「私に備わる機能を使えば可能です。しかしマスター。これを使うということは、マスターが命を賭けて戦うということにもなります」


「命を……賭けて……」


スターヒーロー。彼は決して無敵のヒーローなんかではなかった。

どんなにピンチになっても、守りたいもののために一生懸命に戦って、その思いが勝機を作ってきた。


私だって怖い。でも、私が逃げたせいで、みんながいない世界になることの方がもっと怖い。だから私は戦える。

だから私は、負けられないんだッ!


ふと思い出したスターヒーローの台詞。

彼には戦う理由があった。

仲間を守りたい。そのためになら命も張れる。

そんなヒーローの姿に、俺は憧れてきたんだ。

だから俺も立ち上がる。

大切な友達を守るために。


「俺は、友達一人救えないヒーローになんて、なりたくないッ!」

これから昼食です。

やっぱり何度みても面白かったし、泣ける。

神作がすぎるわ~。

……あ、えっとお……。

また次回もよろしくお願いします。

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