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季節と花と思い出
桜は嫌いだ
昔から 嫌いだった
すぐに散ってしまうから
桜が好きな彼女は それでもいいと 言っていた
病室の 冷たい床に伏せっている時も そう言っていた
桜は嫌いだ
桜の下を通る際 その感情がこみ上げた
すぐに 散ってしまうから
冬の寒さに打ちのめされた 彼女の小さな体は 桜の咲くころわずかに 力を取り戻した
桜を見ると元気が出ると 彼女は微笑みながら言った
彼女の看病をしながら 僕もつられて笑顔になった
病室の窓から見える満開の桜は 彼女の言うとおり きれいだった
少しだけ 僕も桜が好きになった
けれど――