プロローグ2
プロローグの続きです。
次かその次くらいから本編開始します。
「はぁ~」
灰色のどんよりした空が広がる住宅街にそんな疲れ切ったため息が響き渡った。
時刻は朝8時、この辺りでは最高峰の偏差値をほかる学校の制服を着た男女三人が見るからに登校中ですといった感じで歩いていた。
「どうした龍牙、そんな深いため息をついて?」
三人のうちの一人、髪を刈り上げた身長180㎝を優に超える筋肉質な男が隣の隣の特徴のない170㎝くらいの男、龍牙に話しかけた。
「いや、昨日の夜にやってたネトゲでどうやっても二位止まりで一回も一位がとれなくてさー。それにくらべていいよなおめーは、確か今年の全国大会も優勝したんだろ。さすが空手界期待の天才にして学校の部活の統括組織、部活連現総帥、朝田凛太様ですね。」
そんな皮肉を込めた龍牙の言葉も隣の大男、凛太は「ガハハハッ!」と豪快に笑い飛ばしていたが、
「そんな皮肉を朝から吐かないの。憂鬱になるから本当にやめてくれない?」
と、代わりにもう一人のいかにも正統派清楚系美少女といった感じの女子が龍牙をたしなめた。
「そうゆうお前も常に全国一位の成績をとり続ける生徒会現会長様だろうがよ、雫。」
しかし、その女性、染井雫の注意も龍牙にとってはさらに落ち込む結果にしかならなかったようだ。
「お前ら二人に加えて俺は成績も中の上程度、一応雫の計らいで生徒会には所属してはいるが表に出ない書記、そんな根っからの陰キャがお前らみたいなのと幼馴染で仲良くしてるってゆうのが許せないらしく特に雫と話してると男子からの視線が痛いし、その視線に気づいているのに雫は俺のとこにしか来ないし、何なら雫は俺意外といるときに全く笑わないから余計男子からの殺意は高まるし、それに・・・」
と、ひとしきり龍牙がうっぷんを吐き出し終えたたところで(その間凛太は律儀に聞いていたが雫に関しては興味なさげにスマホをいじっていた。)ちょうど学校についたので龍牙もいったんは収まり普通に学校に入っていった。
そして三人がいつも道理授業を受け、放課後雫はいつも道理告白してきた男子を切り捨てて生徒会室に、凛太は空手部の練習と部活連の会議に、そして龍牙は一人寂しく生徒会室でたまった書類を片付けていた。
「失礼するぞー、って、龍牙しかいないのか。雫とかほかのメンバーはどうした?」
ちょうど龍牙が書類をやっつけ終わったころ、部活連の会議が終わった凛太が、会議での決定事項や議事録を共有する為に生徒会室にやってきた。
「雫なら校長と話があるって校長室に、副会長と会計は先に仕事終わらしていちゃいちゃしながら帰ってたよ。議事録はこっちでやっとくからこっちにくれ。帰るのは雫が戻ってきてからだな。」
そう言って生徒会室に入ってきた凛太から書類を受け取りながら答えた龍牙は、そのあとも取り留めのない話をしながら雫を待っていた。
「そういえば龍牙、お前は知ってるか?最近この街にとてつもない美人さんが現れたって話。」
龍牙が議事録を確認していると、図体に見合わない繊細な動きで紅茶を入れて飲んでいた凛太が唐突に話を振ってきた。(ちなみにその紅茶といかにもお高そうなティーセットは雫が私物を生徒会室に持ち込み、それを今凛太が無断で使用している。)
「とてつもない美人?なんだその噂。そんなの聞いた事ねえな。」
「それがほんとにとてつもない美人らしくてよ。手と顔以外露出ゼロだから髪色とかはわからないらしいんだがな、顔を見ただけで美人だとわかるくらいにはいい顔してるらしいし、ゆったりした服からでもわかるくらいいいプロポーションしてるらしい。」
「へー。」
龍牙は興味がなさそうにつぶやいた。
するとそれを見た凛太は熱く、それはもう熱く、その噂の美人がいかに美人なのかを語りだした。
そうして凛太の美人語りが十数分続いたころ、雫が生徒会室に帰ってきたので、凛太の語りは雫のひとにらみで中止となった。
そのまま雫と龍牙で残りの仕事を終わらせ、雫に怒られて隅っこで足に重りを載せながら正座をしていた凛太を救出してから三人そろって帰路に就いた。
「で、今日は何人の男を泣かしたんだ?どうせまた告白してきたやつとかもいるだろうし5人くらいか?」
「そんなに泣かせてないわよ、失礼な。」
朝と同じ道を三人で歩きながらそんな会話をしていたその時、キィーという盛大なブレーキ音があたりに響き渡った。
三人そろって音のした方向を見ると、暴走したトラックが歩道の女の子を轢こうとしていたところだった。
突然の事態に女の子は動くこともできずに呆然と立ち尽くしている。
「「「危ない(ねぇ)!」」」
三人同時に走り出したが、最初に女の子に到達したのは凛太だった。
女の子に追いついた凛太がそのまま女の子を抱きかかえてわきによけた直後、直前まで女の子を射た場所をトラックが通過、そのままそこにあったガソリンスタンドの事務所に突っ込んでいった。
「怪我はねえか、嬢ちゃん。」
こくん、と女の子がうなずいたのを確認した凛太はそこに来た警官に女の子を預けて、やってきた龍牙と雫に警官に引き渡したことを伝えた。
三人で女の子が無事だったことを喜び、女の子とその親らしき人にお礼を言われながらその場を立ち去ろうとしたとき、
「危ない!その場から離れろ!」
という声がその場にいた全員に向かって発せられた。
ハッとして三人が後ろを振り返ると、衝突したトラックとガソリンスタンドにおいてあったオイルがどちらも漏れ出していた。
それを見た三人がとっさにその場を離れようとしたが時すでに遅し。
トラックが突っ込んだ事務所の電気ケーブルからオイルやガソリンに引火、すさまじい大爆発を引き起こし、そのほぼ爆心地にほど近い場所にいた三人はあっけなくその若い命を散らせたのだった。