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モノクロ世界  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 自然が躍動する翡翠色の平原
5/5

第5話 レーフェンス大平原

 色あせた私の世界で、ただひとつだけ色を帯びることがあった。


 それは賞金稼ぎとして、依頼を完遂し、獲得懸賞金が上がる瞬間だった。


 ――アザレアの獲得賞金がいくらになった、ランクS入り、難易度Aクラス依頼を完遂……。


 何もかもなくした私にとって、その瞬間だけが、色を僅かに帯びる。


 空しき色を一瞬だけ帯びて、再びモノクロの色へと戻るのだ――。


 




























 【レーフェンス州 北東部 アガマーズタウン】


 ヒヤシンスから受けた救出依頼を遂行するために、私はレーフェンスシティの東にあるアガマーズタウンへと降り立つ。

 ムーンライト海賊団は、アガマーズタウンの東に広がるレーフェンス大平原の『戦場跡地』を根城にしているらしい。



「――えっ、レーフェンス大平原へ行くのかい?」


 アガマーズタウンのバーでカウンター席に着き、店主と話している中で彼は言った。私がレーフェンス大平原へ向かうことを話した途端、彼の顔色が変わる。まぁ、無理もない。なにせ、ムーンライト海賊団が活動している危険地帯だ。


「ああ、そうだ。賞金稼ぎとして、魔物狩りにな」

「確かに、ルミエール政府は魔物狩りの公募をしてるが、レーフェンス大平原はあんま勧めねぇぞ」

「……なぜだ?」

「ほら、レーフェンス大平原はあれだ。サキュバスの海賊団が跋扈している」

「平原で?」

「いや、『戦場跡地』だよ」


 店主は紅茶をグラスに注ぐ。私はそれを受け取り、そっと口にする。甘みを帯びたお茶の味が、温かみと共に口に広がっていく。


「そんなのがあるのか。やっぱり、昔の大戦のか?」

「いや、3年前の『ルミエール=ヴァルハラ戦争』時代のだ」

「ほう」


 私は“無知のふり”をしながら店主と話をする。この男と知り合ったのは、今日が初めてだ。素性も分からない男に、自分の正体を明かすようなヘマはしない。


「その海賊団は……まぁ、略奪しているのか。このルミエールの時代に大胆なことだ」

「その船長が強いのなんの。オロス王国軍のオリハルコン輸送船団さえも襲撃するらしい」

「オリハルコンを奪うのか? 輸出先はルミエール政府だろ」

「…………。たぶんな」

「…………?」


 若干、店主の濁した感じに違和感を覚えるも、別に今回の依頼遂行には関係ないことだ。それ以上詮索はしなかった。

 私はもう一度、紅茶の入ったグラスを口に持っていく。


「その船長はなぜ強い?」

「さぁな。元々、強力な海賊だったが、ここ最近は急激にその力を増しているらしいぜ」

「そうか。わかった。なるべく海賊を避けたいが、どこ辺りにいる?」

「まぁ教えてもいいんだが……」


 店主は急に言葉を濁す。やれやれ、そういうことか。私は懐からそっと通貨クリスタルをカウンターにおいてやる。3万程度だ。


「……やつらがいるのは、『戦場跡地』のコア・シップだ」

「コア・シップ? 球状の大型輸送船か」

「ああ、滅亡した帝国のな。

 墜落したコア・シップは1隻しかない。西側から『戦場跡地』に入ってそう遠くないから、すぐわかるはずだ。ちょうど台地の上に落ちたからな」

「わかった。なるべく避けるようにしよう」


 食事を終えた私は荷物を背負って、バーを後にする。外に出ると、ちょうど昼時か、外のテラスで食事をしている人々が多く目についた。

 平屋が並び立つ、のどかな街を出て、私は自分のスピーダー・バイクに跨る。のこのこ歩けば数日かかるが、このジェット・スピーダーならば、『戦場跡地』のコア・シップまで半日とかからないだろう。




 レーフェンス大平原は、レーフェンス州北東部に広がる自然地帯だ。


 人の手が付けられていない広大な平原には、巨大なひび割れのような谷間、波のような高低の大地が広がるだけでなく、弱肉強食を体現する魔物たちの過酷な生存競争が繰り広げられていた。


 ヴァルハラ帝国を復興させようとした帝国残党勢力は、この地を通通過地点に選んだ。無数の黒い中型軍艦の飛行艦隊は、躍動する翡翠色の大地の空を飛んだ。

 だが、それは破滅へのカウントダウンでしかなかった。レーフェンス州における制圧戦で、連戦連勝を重ねた帝国復興軍の指導者たちは驕り高ぶり、レーフェンス州における最後のルミエール政府軍を滅ぼさんと大軍を差し向けた。


 ルミエール政府も黙ってはいなかった。ソフィア政府代表は、カルセドニーを総司令官とし、ギョクズイやエメラルドといった猛将を伴う鎮圧軍を送り込んできた。








――ヴァルハラ帝国復興軍は、レーフェンス州の主要都市を制圧した。

  残るレーフェンス北東部を占領すれば、レーフェンス州からルミエール政府勢力を撤退させることができる。

  そうなれば、ヴァルハラ帝国は復活させられるだろう。偉大なる種族が、弱き種族の上に立つ、あるべき世界を再興させらるのだ!


  帝国復興軍の戦力は20万! 我らの帝国を、我らの世界を踏みにじったカルセドニーを血祭にあげ、その首をティトシティの愚かなる指導者ソフィアに送るのだ! 偉大なる帝国の復興を! ブリュンヒルデ皇帝陛下万歳!!


「我らの帝国復興を! 皇帝陛下万歳!!」







――私は、私は、……帝国を、偉大なる皇帝陛下の世界を、もう一度……。


「女王陛下、後方からもルミエール政府軍の艦隊が! ギョクズイ率いる軍勢です! このままでは我が軍は挟み撃ちにされます! 陛下、急ぎご命令を!」


――皇帝陛下の世界を、皇帝陛下の世界を……。


「陛下!」


――皇帝陛下の世界を……。


「――――!」





 レーフェンス大平原で、野望に終止符を、その命に終わる日を、帝国は永久の終焉を迎えた――。

  <<とある少年の記憶>>


 科学を極めた人類は、ついに複製強化人間『Fクローン』を創造するに至った。


 サキュバスの血肉と、古代の神の欠片と、素体となった女性軍人の遺伝子を掛け合わせ、我らは複製強化人間を創造した。


 何百万人にも至ったFクローンは、いつしか偉大なる種族となり、混沌の戦乱を鎮める――はずだった。

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