表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノクロ世界  作者: 葉都菜・創作クラブ
プロローグ 白銀の氷晶が地に舞い降りる極寒の街
4/5

第4話 盛んなるかな光の国威

 【新都ファンタジアシティ】


[ご覧ください。ルミエール・中央政府防衛艦隊の第一陣が、新首都ファンタジアシティに到着しました!]


 エメラルドやサファイアを基調としたクリスタルの建造物が並び立つファンタジアシティ。白い雲から差し込む日光が、巨大建造物群の美しさを際立たせる。

 その光差し込む上空から、巨大な両翼を有する大型飛行艇が次々に姿を現す。白地に黄色のラインが入った大型飛行艇。ルミエール政府の中央防衛軍だ。1隻で最大3万人もの乗員を搭乗させられる大型飛行艇が何十隻もその姿を見せる。


[――ルミエール政府は、現在の中央大陸東方ティトシティから、大陸中央部のファンタジアシティに首都を移転させ、――]


 だが、大型飛行艇に影が宿る。大型飛行艇艦隊のさらに上空から姿を現したのは、より巨大な飛行艇。大型飛行艇と同じく両翼を持つその戦艦は『超大型飛行艇プルディシア』。防衛艦隊の旗艦だ。1隻で30万人もの乗員を搭乗させられる史上最大規模の飛行艇。

 今の首都ティトシティからやってきた防衛艦隊を、ファンタジアシティの中心にそびえたつ巨大建造物――『ルミエール政府代表 新官邸』の最上階から、その姿を満足げに見ている女がいた。


「ふふふ、盛んなるかな、光の国威。世界の中心に近いこのファンタジアを新たなる首都とし、ルミエールの威光をさらに世界に示すのだ」


 青色のコートを纏い、同じ色の三角ハットを被る女は、ルミエール政府の防衛大臣にして、首都移転担当大臣。


「カルセドニー閣下、ギョクズイ全軍元帥率いる『新都・防衛艦隊』が到着しました」


 白地の軍服に無数の勲章を付けた上級将官が、カルセドニーに報告を行う。空中を覆う超大型飛行艇を目にしていたカルセドニーは、白いマントをひるがえして、自らの机――のちの政府代表の机となるものに向かう。


「カイヤナイト大将。首都にいるヒスイ大将に連絡を入れろ。新都ファンタジアの受け入れ準備は遅滞なく進んでいるとな」

「イエッサー!」


 カルセドニーは自らの椅子に座り、机の左前に大型の電磁スクリーンを起動させる。映像が映し出される。

 大勢の市民が沿道に押し寄せ、誰しもが白地のルミエール政府旗を振って、防衛艦隊から降り立ってきた白服の兵士たちを出迎えている。


[――今月上旬に実施された世論調査では、内閣支持率は72%に達しており、首都移転についても、44%が賛成との結果が出ていますね]

[そうですね。『ルミエール=ヴァルハラ戦争』を終わらせ、世界統合を果たしたソフィア=サンクチュアリ代表に対する支持率は高く、市民の信頼感の高さがうかがえます。

 しかし、首都移転事業については世論が割れており、首都移転よりもレーフェンス州の治安維持に国家予算を割くべきだとの声も根強くあり、――]


 電磁スクリーンで流される報道番組に、椅子に深く腰掛けたカルセドニーは鼻で軽く笑う。


「帝国は、世界を荒らしまわった諸国は、もはや存在しない。この世界の覇者は、我ら大ルミエール政府」


 机の傍に並び立つカイヤナイト大将を含め、数名の上級将官たちは誰も何も言わなかった。世界に戦乱をもたらした勢力は、ルミエール政府の前に全て滅び去った。その考えは、みな同じだった。――否、ただ一人を除いては。


「果たしてそうですか?」


 ルミエール政府の軍服やアーマーは白と黄色を基調としたものが多い。それは「光」を体現しているからであった。そういった意味では、「闇」を表すかのような黒き軍服を纏う“彼女”の存在は異物のようなものであった。


「――エージェント・オーファン。何が言いたいのだ?」

「レーフェンスの地で、本当に帝国勢力が滅び去ったのか、ということ」

「3年前、レーフェンスの地で行われた『ルミエール=ヴァルハラ戦争』で、旧帝国の指導者たちと帝国復興勢力は皆殺しにした。それはお前もよく知っているはずだが?」

「……レーフェンス州ではルミエール政府に対する反発は強い。跋扈する盗賊、賞金稼ぎの台頭、反政府勢力の暗躍。この地の人々への支援を行わなければ、――」

「黙れ。ルミエールの名の下、世界はようやく安寧の時代を迎えた。私が混沌の時代に終止符を打ったのだ!」


 カルセドニーは腹部に手をやりながら、険しい表情でエージェント・オーファンに向かって話す。そこに、先刻まで存在したはずの圧倒的ゆとりは突如として消失していた。


「……失礼しました」


 エージェント・オーファンは黒いマントをひるがえしてカルセドニーの臨時オフィスを後にする。カルセドニーはその後姿を、無言で睨んでいた。


「カイヤナイト大将」

「はっ」

「傘下のネフライト准将を、3万の兵と共にレーフェンス州へ派遣せよ。エージェント・オーファンの動向把握及びレーフェンス州全土の監視としろ」

「エージェント・オーファンがレーフェンス州に向かうと?」


 カイヤナイトの問いかけに、カルセドニーは再び笑みを浮かべて言った。


「ああ、間違いない。あいつはそうするだろう――」

 <<とあるルミエール政府軍人の手記3>>


 ヴァルハラ帝国は滅び去った。


 帝国の復興を目指した者たちは、輝ける光の業火にその夢を喪失させた。


 光にひれ伏し、許しを請う反乱者どもは、ことごとく氷の鉱山へと送られた。


 彼女たちに差す光はもう存在しない。



 私は混沌を終焉に導き、世界統合を果たしたのだ。


 私は世界に、人々に、社会にもたらしたのだ。



 偉大に輝く正義は、世界に平和を。


 強大な輝ける力は、人々に繁栄を。


 確立された制度は、社会に安定を。



 永年続く至福の時代が、今始まったのだ――。



 ――ルミエール政府全軍元帥 カルセドニー=サンクチュアリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ