どうも、Sランクパーティーの聖徒界が帰ってきました大変まずいです
アルクとギルド長が部屋を出て踊り場から一階を見下ろすと、そこには長身の女騎士がいた。名前はランシア、噂の聖徒界のリーダーだ、赤いロングヘア―をたなびかせ白い鎧を着こなしている、そして一番特徴的なのは身長のおよそ四倍のドデカイ槍だ……地面に突き刺さってはいるが。
「おいおいおいおいおいおいおいおいおい」
ギルド長が焦って階段も使わずに踊り場から飛び降り一階へと直行する。
「確かに散らかって入るが自分からさらに汚すことはないだろ、ほら床なんてバキバキだし―――」
「うるさい! 私の可愛い可愛い子供がこんな無残なことになってるんだぞ! これがキレずにいられるか!」
現在進行形で無残なことにしているというのは置いておいてギルド長につかみかかるランシア。
「まあまあまあまあまあまあまあまあまあ落ち着いてくれ」
「本当に! 誰が! こんな風にしたんだ! 白状しr―――」
ギルド長をブンブンとしながらアルクと目が合うランシア。
「………………お前かアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
「えええええええええええええええええ!?!?!?!?!?!?!?」
アルクが犯人であると決めつけたランシアは階段を使わずにジャンプで直接アルクのもとへと行き問い詰める。
「お前がやったんだろ!」
「違う違う違う違う違う違う違う!!!!!!!!」
「だったら何でギルド長に呼び出された風に見ていたんだ」
「察しがいいのに察しが悪い!」
ギルド長にしていたように首元を掴みブンブンと振り回す、それこそ首がもげんばかりに。しかし、振り回されて、そろそろ三半規管にも限界を期待していたアルクに救いが訪れた。
「あのーランシアさん、流石にその人がやったと決めつけるのは早計ではないでしょうか」
聖徒界のメンバーの一人、ゆるふわ系女子のジャンニャーだ。小さな杖を腰に携え、長袖で萌え袖をし、全体的に可愛い雰囲気の中で異質さを放つ皮鞄を背負っている。
「大丈夫だ、私の直感がそう言っている」
「いやあなたの直感当たったこと無いじゃないですか、別にその人が本当に犯人なら我は何も言わないんですけど、犯人じゃない内にそういうことをするのは良くないと思うんです」
「……それもそうだな、確かに私の直感は当たったことが無い」
そう言ってランシアはアルクを放す。
「すまなかった」
「だ、大丈夫だ」
アルクは少しランシアから距離を取り話す。
「というか、このギルドはランシアさんが設計したんですか?」
「なんで敬語なんだ?」
「知ってますか? 初対面には敬語で話すものなんですよ。我が何回も言っているとおもいますけどね」
「? そうだったか?」
「はあ……」
露骨にため息をつき顔をしかめるジャンニャー。
「しかしそうか……」
そう言って周りを見渡し、もう一度惨状を目に入れる。
「もう一度見るとイライラしてくるな」
「だったらカフェにでも行ってきたらどうですか? お気に入りのカフェに」
「そうだな、そうそう……ジャンニャー」
「なんでしょうか?」
「犯人……見つけといてくれよな」
「はいはいわかりましたわかりました」
その返事を満足げに聞いたランシアはギルドを出て走り去っていった。
それを見送るジャンニャーのもとにギルド長がやって来た。
「助かったぞジャンニャー、やはりお前しかあいつの手綱は握れん。とりあえずひとまず安心だな」
「まあ、本当にひとまずですけどね。いつ戻って来るかもわかりませんし……それと」
ジャンニャーはアルクを指さして聞く。
「実際やらかしたのこの人ですか?」
「発端はそいつだが、やったのはあそこで伸びてる七人だな」
ギルド長はキリオン達を指さして言った。
「はーーーーーーー………………めんどくさいですね」
「ああ、とてつもなくめんどくさい」
「あの人に二つの事柄を同時に説明するのとか無理なんですけど」
「だがやってもらわないと、あの七人が死ぬ」
「我帰ってもいいですかね、帰って来たばかりだから疲れてるっていうのに」
「頼むからあいつをどうにかしてからにしてくれ」
「そうですね、とりあえずアルク君、ちょっと来てください」
そう言ってアルクへと手招きをする。
「まず最初に謝罪から。うちのリーダーが申し訳ありませんでした、で、自己紹介になるんですけど我はジャンニャーと言います、よろしくお願いしますね」
「はあ、どうも。噂はかねがね」
「そうですか、で相談なんですけ―――」
何かをジャンニャーが言おうとしたところで先程よりも大きな揺れがギルドを襲った。ギルド内ではランシアが帰って来たのかとあたふたしている者が少なからずいたが、そんなことは無かった。
揺れているのはギルドだけでなく、街全体だ。
「ッつ!? 一体何が!? 地震か!?」
アルクはそう叫んだ。
「これは………………!?」
ジャンニャーが何かに気づいたように言う。
「スタンピード!?」