どうも、『龍種の頂点』が現れました
「本当に何で俺が君達と一緒にいるんだろうね」
「……メリッシュがそう決めたから……」
「というかぁ、男ならうだうだ言ってないでぇ、ちゃっちゃと切り替えなさいよぉ」
「あのね、俺昨日パーティー追放されたばかりなんだけど。しばらくソロでいたい気分だったんだけど」
「知りませんわぁ、そんな事ぉ、ナーバスな気持ちになるのは分かるけどぉ、チョットはシャキッとしなさいなぁ」
「…………………………」
アルク達は山の中を、木を掻き分け、谷を越え、目的地へと到着した。
「あ、ゴブリンいるいる」
「現状ぉ、見えているのは四匹ってところねぇ」
「……他の個体が居るかもしれない……気を付けて……」
「分かった! 任せて!」
「……馬鹿……!」
メリッシュは話を聞かずに走り出し、剣を取り出しゴブリンたちへと向かって突っ込む。
「でもまぁ……いつものことですわよねぇ!」
「……ん……」
マシットとコープルが続いて走り出し。
「いつも!? いつか死ぬよ!?」
そう言いながらアルクも二人に続く。
最初に動いたメリッシュは剣で一番手近にいたゴブリンへと切りつける。
「やあああああああ!!!!!!!!」
「ゴャいいいいいい!!!!!!!!」
コープルが杖を取り出し何か魔法を使うのかと思ったら、そのままゴブリンの頭を殴りつけた。
「………………………………」
「ゴぎゃあ!?」
マシットは背中にあるデカいハンマーを手に取るまでもなく、腰に携えた小さい(普通サイズの)ハンマーでゴブリンの頭を容赦なくぐちゃぐちゃにしている。
「死になさぁい!」
「ゴ、ゴぎゃり、ゴ、ゴ……!」
アルクはというと……。
「うおあああああああああ!!!!!!!!」
「ゴァアアァアアアアア!!!!!!!!」
装備もそれを買うお金もキリオンに渡したので拳で戦っている。暴れるゴブリンを手で押さえつけ何とか殴り殺していく。
「はあ、はあ、はあ。よし、これでとりあえず剣を手に入れられたな」
「あなたぁ、マジですかぁ。正直ドン引きですわぁ」
「そんなこと言われても武器が無かったんだからしょうがないだろ」
「それでしたら言ってくださればお貸ししていましたのにぃ、というかそれでどうして一人でこの依頼を受けようと思ったんですかぁ?」
「いや……それは―――」
「まあいいでしょぉ、それにしてもぉ……」
マシットが訝し気に周りを見渡し怪訝な顔をする。
「どうしてこんなに少ないのでしょうか」
「えー? まあラッキーって事なんじゃないの? 私的には楽でいいんだけど」
「……物事には、必ず理由がある……!」
「どういうこ―――!?!?!?!?」
それは唐突だった、急に空が暗くなったかと思うと赤白く爆発し、雲が晴れ、青い空が現れ、そして……………………。
そして、青い空とは対照的な、鮮血を思わせる真っ赤な竜が、そこにはいた。
不幸を思わせるほど赤く、天を埋めんほどの巨大、そんな竜がアルク達の上空で旋回している。
「な、何でこんなところに龍種の頂点がいるの!? 私達死ぬじゃん!」
「なぁんであなたはそうすぐにネガティブになるのかしらぁ?」
「……気分で生きてるからでしょ……」
「仲間のことを滅茶苦茶に言うね君達」
「まあ別にぃ、焦っても仕方が無いですしぃ。ほらメリッシュぅ、しっかりあれを見てみなさあぃ」
マシットは龍種の頂点を指さしこう続ける。
「あいつは私達の事を見ちゃいないじゃないのぉ」
「(確かにそうだ、あいつは俺達の事なんて目に入れずに別の方を見ている、確かあっちの方は……!?)」
「……一体どうした……?」
「……龍種の頂点が見つめる先にあるものは街へ行くための道だ、そして恐らく襲われているのは」
アルクは少し言いよどむ。
「なるほどぉ……つまりぃ……」
「ああ、俺の元パーティーだ」
街へと行くための道、『商道』では実際にキリオン達が戦っていた。
キリオン達が最初に来たときに商人を襲っているのはゴブリンだけだったのだが、ゴブリンを倒し切ったと思った矢先に奴が現れた。
「ッチ、何でこんなところに龍種の頂点が居やがるんだ!?」
「これもそれもあれも全部あのクズのせいに違いないわ!」
「そうに違いないですね」
「そうよそうよ! あの気持ち悪い奴のせいよ!」
「とりあえず俺達にはどうすることもでき―――!?!?!?!?」
キリオンが撤収の命令をメンバーにかけた途端、龍種の頂点が炎の玉をキリオン達に吐きつけた。その火球は山を一つ消し切るほどの爆発力を備えていると言われている、こんなところでそんなものが着弾すれば、街も、そしてこの一帯が消滅する……到底躱せるものではない、で、あるならばキリオン達の取る行動は一つ。
「打ち消すぞ!!!!!!!!」
「「「おーーーーー!!!!!!!!」」」
奇しくも、少女たちの返事はアルクを追放したときの物と同じであった。
「威力泥棒!!!!!!!!」
クシルは手を火球へ掲げ、握りしめる。その後その閉ざされた手を開くと、巨大な火球が飛び出た。
「威力は下げた! キリオン打ち消して!」
「騎士の巨盾!!!!!!!! 後は任せるね!」
カリーナは自分の持っていた盾を地面へと突き刺すと半透明な巨大な盾が現れる。
「魔法陣の固定!!!!!!!! キリオン、頼みますよ!」
ケアンが杖を振ると巨大な盾の前にこれまた巨大な魔法陣が現れる。
「助かるぜ!!!!!!!! ああァあぁぁぁああァああああああああアアアアアぁあああ!!!!!!!!!!!!!!!! 大斬撃斬ぉおおおお!!!!!!!!」
キリオンが剣を握ると剣の先から長さ約五メートルの光が溢れ出し、その剣を振る。
それらの巨大な火球が、巨大な盾が、巨大な魔法陣が、そして巨大な剣が、これまた巨大な竜の火球に衝突した。
瞬間、耳を塞ぐほどの極音と目を瞑るほどの極光、しかし、大爆発で街もろともキリオン達が爆発四散することはなかった。
キリオン達の努力によって、最悪は避けられた。
「は、ははは、はははははは! やった! やったぞ! やってやった!!!!!!!!」
キリオンは手を挙げて喜ぶ、全力を出し切ったのか、地面に寝転がり声と裏腹に脱力している。
―――だがしかし。
「そうね、キリオン。あのクズが居たら私達はここまで出来なかったわ! あなたの判断が街を救ったのよ」
クシルは過剰な威力を盗んだせいか、手が思うように動かないようだ。それどころか震えている。しかし表情はやり切ったという喜びに満ちている。
―――最悪は。
「確かに! あの気持ち悪いのがいたら邪魔で集中出来なかったに違いないわね!」
カリーナは盾と剣を地面に置いて体中から汗を流している、当然だろう、あれだけの大技を放ったのだ、むしろそうでない方がおかしい。
―――別に一度だけだとは。
「そうですね、あんなのがいては最高のパフォーマンスは無理でした。やはりキリオンは先見の目があるのでしょう。素晴らしい」
ケアンは目が充血し切っている、魔法を使うには頭で演算をしなくてはならない。あれだけの大魔術、当然どこかで犠牲を支払わなければならなかっただろう。それが目の充血だけで済んだのは奇跡に等しい。
―――限らないだろう?
「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
商人のそんな叫びでキリオン達は現実へ引き戻された。
人間四匹の最大の努力は龍種の頂点にとっては何もしていないに、何もされていないに等しいのだ、キリオン達がアルクを追放した理由と同じように。それをキリオン達は思い知らされる。
龍種の頂点は先ほどと同じ火球をもう一度射ち放つモーションに入る。口を開け、魔力を留め、圧縮し、いとも簡単にそれを放つ……その瞬間、龍種の頂点の体から、ゴッソリと、何かが削られた。
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