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エルフの里

「そ、そんな……」

 全エーテルを放ってフラフラになっているアリエルが、呆然とした表情でこちらを見ていた。

「さすが殿……」

 こちらも体力を消耗しきってへたり込んでいるアルバートが苦笑いを浮かべている。

 僕はとりあえず、へそ天状態のフェンリルのお腹をモフモフしていた。いい毛並みだ。

「くーん、くーん」

 おっと、手が止まっていた。再びお腹を撫で始めると、気持ちいいのか鼻にかかったような声を上げる。

 

「えーと、世界を滅ぼしかねない魔獣をペット扱いしてるって、何事?」

「まあ、うちの殿だからなあ」

「いや、うちの殿だから、じゃなくて。知能もかなり高いはずよ。そんな魔獣があれだけ服従の意を示すってなると」

「天地がひっくり返っても勝てないって認めたわけだなあ」

「そうよね。っていうか、靄が吹っ飛んで本体が出てきたとき、あ、死んだって普通に思ったわよ?」

「はっはっは。戦士は主君と認めた者のために死ぬのだ」

「って言うか、最初からその殿が出てきてたら、あたしらこんな目に合わなくて済んだんじゃない?」

「まあ、そういうな。殿には何か考えがあってのことだろう。少なくとも……エルフの皆はうちの殿に忠義を誓うことは疑いなかろう?」

「そうよねー。フェンリルを手懐けるとか、人外もいいところだわ」

「さすがうちの殿だ。見事なり」

「あたしの全力攻撃叩き込んでもびくともしてないしねー」

「はっはっは。今に龍王でも配下に置きそうではあるな」

 アルバートは知らない。この時軽く口にした冗談が、後日実現することを。


「イヤー、スマナイ。カレコレ1000年ホド封印サレテイテダナ。腹ガ減リスギテ」

 フェンリルは普通にしゃべった。上位の魔獣というか、ほぼ精霊に近いのだそう。僕にモフられながらエーテルを吸収していたようで、確かに2割ほどエーテルを消費していた。

「で、念のため確認だけど、僕のペットというのはまずいから、守護獣って扱いでどうかな?」

「ヨロシイ。我ガ名ハ「フェンリル」。コンゴトモヨロシク」

「うん、よろしくな」

 ガシガシと頭をなでると、実に嬉しそうな表情をする。なんてかわいいんだ。


 フェンリルを従えたことで、同時にミラリムの里がうちの支配下にはいった。アリエルさんはガルニアに出仕することになり、イズレンディアさんをそのままミラリムの代官に任命する。

 今後、食料や木材、石材をガルニアに納めてくれることになった。

 また、希望者はガルニアに住むことができるようにしたので、住居などの拡大が急務となっていた。


「万物の根源たるマナよ。僕の意に従い、住居となれ。ほいっ!」

 緩い口調とゆるい呪文だが、指差から表示される操作画面に従って、住居区画に家を建てていく。

 同時に、石材などを備蓄する倉庫も建て増した。

 物資が基準値を超えたらしく、チコからアナウンスがあった。


「城壁のレベルアップをすると、城のレベルアップができるってことね?」

『そうです。城のレベルまでしか設備のレベルを上げることはできませんので。逆に、住居のレベルを上げれば住民の満足度は向上しますし、同じ広さの土地により多くの住民が住めます』

「なるほどね。ということは畑とかも同じってことかな?」

『同様ですね。同じ広さからより多くの収穫が得られます。ギルドホールも建て増しましょう。冒険者たちが集まるペースが速まりますし、依頼項目を増やせば彼らの育成にもつながります』

「なるほどねー。衛兵も増やして治安を上げないといけないし、商業ギルドもそろそろ規模が手一杯かな?」

『そちらにはアリエルを着任させましょう。彼女の手腕で内政を加速させます。同時に魔法技術や、兵に持たせる武具の改修もしましょう』

「なるほどなるほど、やることはいっぱいだね」

『今回はたまたま相性がいい魔獣でしたが、こちらに負けるとわかっていても暴れる魔獣とかも出てきます。そういうのは討伐するしかないですからね』

「魔獣の素材が手に入ればキャラバンの行き来も増えるね」

『さすがマスター。話が早いです』


 チコの解説を聞きながら、僕は増えてきた住民の仕事を割り振って行った。城壁の改修は、今後魔獣などが襲来した時にこちらの都市を守るかなめになる。


『そうだ、ポータルを設置しましょう。若干多めにマテリアルを消費しますが、いずれ元は取れますよ』

「なるほど、都市の中心になる場所に転送の魔法を動かすクリスタルを設置するわけだ」

『都市側に置くのはポータルになりますので、ここはマナを使って設置ですね。あとは鉱山や、ミラリムの里など、都市から少し距離がある場所に小型のクリスタルを設置します』

「術式は……うーん。ちょいちょい、っと」

 マナをけっこう使ったが、無事ガルニアのクリスタルゲートが設置された。これまでミラリムまで移動するのに慣れた冒険者の足で2日かかっていたのが、ほぼ瞬間移動できるようになったわけだ。もちろん大人数を動かすことはできないけど、情報の伝達はかなり早くなったと思われる。

 鉱山からも物資の転送が可能になった。重量に比例して術式を動かすエーテルは増大するので、最初は僕かアリエルさんくらいしかまともに転移できない。

 それでも、輸送が早くなる恩恵は確実に表れていくのだった。


 こうして、エルフの里ミラリムが支配下にはいり、ガルニアの発展はより加速していった。

 そうすると次にまた問題が出てくるわけで……

若干説明が多めの回でした。

面白いと思ったり作品を応援していただける方は、ブックマークとかポイントを入れていただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[一言] オレは外道スライム、コンゴトモヨロシク
[良い点] 仲魔だった
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