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覇王の息子は無敵の剣を携えるが日常も楽しむ  作者: 酒と食
第一章 独立領からの依頼
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エピローグ その後

「かんぱいにゃー!」

 ミケの陽気な声が飛ぶ。ここは王都の小料理屋。常連は「狐」と呼んでいるが正式な名前は誰も知らない。ケインはミケ、ララ、カールをこの店に誘った。ララとカールは遅れるらしい。店に入るとミケが居たので二人だが始めることにしたのだ。

「それであの後どうなったのにゃ?」

 問いかけるミケにケインが答える。あの後、ファーブル領は覇国に所属することになった。領主館の地下から無残な形となった失踪した魔術師達の遺体が見つかったこともあり、領主が乱心してハンターを襲い逆に斃された事実と併せて領民は領主であるファーブル家による統治の存続を望まなかった。そこで領主が襲ったハンターが皇太子だったことを口実に覇国が手を上げ、基本的にこれまで通りの制度を維持する形で統治を行うことで周辺国との合意を取り付けた。領主が魔物に変化したことなどは伏せられた。このあたりの宰相コールの采配は見事だとケインも思っている。もともと肥沃な土地を持つファーブル領だが、今回のダンジョン発見に伴いガルムの街にギルドの支部ができることも決定している。恐らくこれまで以上に人と物が集まり活気のある町として発展するだろう。あのダンジョンは浅い階層は初心者用、第4層以降はA級以上のハンター用として管理されるようだ。吸魔草のこともあり国も絡んだ運営となるらしい。


「にゃー。じゃあミハエルは…」

 ミケの耳が残念そうにしている。ミハエルは旧ファーブル領および覇国からの3年間の追放となった。連座刑による死罪を主張する者もいたが、旧ファーブル領における一定数の民がミハエルを慕っていたため余計な憎しみを生まないようにこのような処置がとられた。ミハエルが覇国をでるときケインは会いに行った。

「私の命を助けて頂いたことに深くお礼を申し上げます。また父のこと聞きました。私にとっては信じられないことなのです……。ケイン様…私は…私は…あなたを……」

 涙に震えながら語るミハエル。ケインには父に狙われた命を助けられた。それでもその父は最愛の父であったのだろう。ケインは真っ直ぐにミハエルを見つめて言葉を紡いだ。


「ミハエル。そなたの父君を殺したのは紛れもなくこの私だ。そなたの父君は間違いを犯した。そしてそれを私が裁いた。私は自分が下した決断が正しいものであったと考えるし些かの後悔もない。しかしそなたが慕う父君を私が殺したという事実は変わらない。そなたが父君の仇を討ちたいというのであればこのケイン全力でお相手する」

 一瞬ケインを睨みつけるように見たミハエル。しかし首を振ると涙を拭き最敬礼をした後、もう一度だけ黙って深々と一礼した。そして踵を返すとそのまま振り向かず旅立っていった。

「このまま逢わないことを祈っているさ」

「にゃ」


 このことを父王に告げたとき。父王からも言われていた。

「ケインよ。お主も剣に生きる者だ。剣に生きる者は好むと好まざるとに拘らず人から恨みを買うことになる。今回のようにな。儂もかの戦争の際に買った恨みは大きかろうよ。これは避けられぬ。努々忘れぬようにすることよ」

「はい」

「儂もお主も手は血で汚れておる。しかし儂にはローデシアとシリウスがおった。覇王剣は無敵の剣。対峙するものを悉く滅ぼすことが出来る無双の剣じゃ。しかし一瞬でも心が迷えばその剣は闇を纏って自分を含めた周囲を傷つける。あの二人がいたからこそ儂は道を誤らなんだ」

 ケインは父王の話しを真摯に受け止めている。

「そなたにはララ、カール、ミケランジェロがおる。仲間のことを信じ、互いを助け、己が信じる道を行け。もし道に迷うことがあれば仲間を頼るのじゃ。覇王剣は強大な力ではあるがそれは孤独な力よ。人は強大な力を恐れる。そなたを恐れない仲間たちの大切さを忘れないことだ」

「はい」

 ケインは仲間達を思い頷くのだった。


「ミケ。実はプレゼントがあるんだ」

「にゃ?」

 ケインはマスターから包みを受け取る。

「はい。開けてみてくれ」

 ミケが包みを開くとダガーと斥候用の全身防具一式があった。ダガーの刀身をみてミケの目が輝く。

「これはすごいにゃ!」

 マスターが説明する。

「どうだ嬢ちゃん。古龍の牙をベースに宝石を焼結させることで魔力回路を増強し、魔力変換用の魔石を取り付けた最高のダガーだ。柄を持って魔力を流してみろ」

 ダガーを持ち魔力を流すミケ。刀身が蒼く輝きを放った。

「ふふん。これは魔力を流すことでその切れ味を飛躍的に高める。ケイン!お前さんの技に近い威力が出せるはずだ」

「何?!」

「にゃ?」

 驚く二人。

「あんな凶悪な材料を持ってきたんだ。これくらいの物は造れるんだよ。ちなみに防具はオリハルコンを溜めた地竜グランドドラゴンの皮を特殊な技で鞣し硬度をそのままに斥候用の防具に組み込んだものだ。ケインのあの技以外では切り裂くことは不可能だと思うぞ?」

 ダガーも防具もマスターはとんでもないものを作ったらしい。

「ミケ。今度威力を確かめに行こう。ファーブル領のダンジョンだな」

「にゃ。ありがとうケイン。マスター。大事に使うにゃ」

 しっぽが揺れている。とても嬉しそうだ。ぐっと親指を立てるマスター。後ろではキャリーがにこやかに笑っている。


「ミケ。それだけじゃないんだ」

 ケインはそう言って小箱を取り出す。

「にゃ?」

「開けてみて」

 ミケが明けるとそこには蒼玉サファイアを頂く美しい指輪があった。王都の秘宝の一つである。

「ミケ。これからもずっと一緒だ。結婚してくれ。実際は発表や段取りが面倒だからもっと後になるが気持ちだけは伝えておきたかった」

 ミケの顔がぐしゃぐしゃになる。

「でもララは?」

「実はミケを第一夫人にとも思ったんだけど、父上から言われてね。第一夫人は貴族との付き合いがあるからララに任せてミケには第二夫人として自由にしてもらったらどうかって。ミケは第二夫人では嫌かい?」

 ぶんぶんと首を振るミケ。

「そんなことないにゃ。私は貴族じゃないからみんなとは一緒に居れないと思っていたにゃ。一緒に居てもいいのかにゃ?」

「当たり前だ。仲間だろ?」

 そう言ってケインは指輪をミケの左の薬指に填める。

「ミケを一代貴族にするとか手続きはいろいろあるんだが、父上にも母上にも全部了承済みだ。これからもずっと一緒だ。ミケ。愛してる」

「にゃ!」

 ミケが飛びついてきた。マスターとキャリーが笑っている。

「おっと!ケイン!相変わらず仲がいいな!」

「見せつけやがって!こんちくしょう!」

 常連達が入ってくる。目ざとくミケの指輪を見つけたものが二人をからかう。


 ララとカールが来るのはもう少し後だろう。


 いつもより賑やかな「狐」での楽しいひと時はこの日ばかりは夜遅くまで続くのであった。

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