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覇王の息子は無敵の剣を携えるが日常も楽しむ  作者: 酒と食
第一章 独立領からの依頼
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屋敷に寄って行こう

 ここ覇国の王都は中央に覇王城を頂き、その周囲に貴族達の館が並ぶ高級住宅街、さらにそれを囲うように一般の民が暮らす平民街、飲食店、商店街、商会本部などがある商会地区が作られていた。


 高級住宅街の外れにケインの屋敷はある。ハンターとして活動を始めたときに父王から賜ったものだ。当然ケインは城にも自室を構えている。しかし商会地区やギルドにも比較的行きやすい場所に建てられたこの屋敷はハンターの活動の拠点として重宝していた。


 勉学、剣術、日々の生活についての必要なものは惜しげもなく与えられたケインであるが、これまでの人生で覇王から与えられたそれ以外のものと言えばこの屋敷と腰の長剣のみであった。

『お主の成長は我らの喜び。そのための助けは惜しまない。しかしお主が自分で欲しいと思ったものはお主の力で手に入れるがよい』

 そんなことを言って父王はハンターになった祝いとしてこの屋敷を建てたのだった。


 さすがに暗くなってくるとまだ肌寒いようだ。この時間、商会地区やギルド周辺の飲み屋などからは賑やかな喧騒が聞こえてくるが、ここ高級住宅街の道には人は殆ど見られなかった。そんな人通りのない道を歩く外套を羽織ったケインはシンプルな造りの自分の屋敷に到着する。貴族の屋敷としては普通の大きさと言えるだろう。


 門番と挨拶を交わして敷地内に入る。玄関のドアを開けるとバリトンの渋い声が響いた。

「おかえりなさいませ。殿下」

 この屋敷の執事アルフレッド=レッドフォード。父王の旧知でありケインが生まれた時から身の回りの世話をする役目を仰せつかった者である。かつては父王と共に戦場を駆け巡っていたという噂も聞いたことがあるが父王は笑って答えてくれなかった…。

「ただいま。アル。みんな。城に行ったら遅くなってしまった」

「ララ様のことは大丈夫でしたか?」

「なぜお前までそのことを知っている?」

 ほっほっほと笑いながらアルは外套を受け取る。

「年をとるといろいろと聞こえてくるのでございます」

「父上と同じことを言ってるぞ」

「はっはっは。詳細は秘密でございます。それにしても今晩は王城に泊まられるのかと思っておりましたが?」

 この執事もまた一筋縄ではいかない人物である。


 周囲のメイドたちも集まってきて頭を下げる。

「おかえりなさい。ご主人様。本日はお城でララ様とご一緒ではなかったのですか?」

 ものすごい直球な問いを投げかけていたのは最も年上であるはずのメイド長ミランダ。この屋敷に勤める5人のメイドを束ねるしっかり者の美人だ。かつてはケインの母であるローデシアの侍女でありケインが屋敷に住む際にローデシアの命でこの屋敷に勤めている。母上の侍女であればかなり年配である筈なのだが見た目は30代のようだ。一度年齢を聞いたことがあるが『女性にそんなことを問うものではありません』と教えてくれなかった。


 ケインは執事にもメイド達にもできる限り普通に接してほしいと伝えてきた。皇太子ではあるが一人の人間である以上、できる限り同じ目線で皆と過ごしたかったのだ。ミランダの問をきっかけにきゃーきゃーと他のメイドたちも囃し立てる。この手の話はいつの時代も女子に人気であった。そしてケインはこの和気藹々とした雰囲気をとても心地よいかけがえのないものと思っている。


 ケインは執事とメイド長の問いに答えるようにアイテムボックスを示す

「いや、これが獲れたからな。ちょっと厨房へ移動しよう。皆で食べて欲しかったんだ。見てほしい」

 そう言って使用人たちを引き連れて厨房へ移動したケインは10匹のイトーカを見せる。集まってきた使用人も厨房の料理人も驚きの声を上げる。

「イトーカですね。鮮度も素晴らしい。よろしいのですか?」

 代表して尋ねるアルフレッドにケインが頷く。

「あたりまえだ。皆本当に屋敷のことをよくやってくれている。大した礼はできないが今日はイトーカが獲れたからな。遠慮はしないでくれ」

 歓声が上がる。

「アル。屋敷にある好きな酒を開けて構わない。今日は皆で楽しむこと。よいな」

 歓声が一際大きくなった。

「さすがご主人様!愛してます。っていうか愛人にしてください」

 妙なことを口走ったメイドは『こら!』っとミランダに頭を掴まれ涙目となりいつものじゃれ合いが展開される。

 皆が笑顔だ。この雰囲気をケインは気に入っていた。アルフレッドが一礼して答える。

「承りました。殿下は如何なされます?」

「おれは外に出てくる。アル。古龍の牙があったはずだ。持ってきてくれないか。それと明日以降のことでミケに伝言鳥を飛ばしたい。

 それとミランダさん。外に出る前に一度着替えたいので用意をお願いします」

「「畏まりました」」


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