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永遠の別れ

トマスはバリスの話を聞き、ゆっくりと目を閉じた。


 -想像していた幾つかのパターンはあったが概ね間違ってはいなかったな。。。向こうは何も言葉は発しないが恐らく自分自身の事を情けなく感じているんだろう。バリスという人間がまともであって良かった。これなら後は心のベクトルを変えるだけだ。


 「バリス。」


 トマスがバリスを呼ぶと数秒後に「何だ。。」と返答がきた。


 「最初、本当に最初のあたりだったがアンタが親父に刑を言い渡したと言い放った時、あまりの軽快な口調に俺は怒りを覚えた。度し難いとも感じた。直接対峙している状況だったなら何か起きていたかもしれないと思う。俺はガキでレベルも低いから返り討ちにあっているかもしれないがな。」


 トマスは言葉を続けた。


 「アンタのさっきの言葉の先も想像はつく。アンタが俺を前にし話をしたこともこれまでの出来事も含めて自分自身を情けなく感じているだろうというのも想像がつく。だから、俺はアンタに言うことがある。バリス、アンタは俺がこれから言う言葉に想像がつくか?」


 バリスからの返答はない。


 「いいか、よく聞けよバリス。これは本心だ。」


 トマスは一呼吸おいて伝えた。


 「俺はアンタが俺の家族に行った全ての行為を許そう。全てだ。俺がアンタの立場だったら、同じ事をしたなんて言わない。俺はアンタのような道も辿らなければ今みたいな自責に駆られるような生き方もしないだろう。経験もないが少なくとも。。本当に少なくともだが立場には立てる。理解もできる。その上でアンタを許す。」


 トマスが発した嘘偽りのない言葉が監獄の廊下に響き渡る。しかしバリスからの返答はない。


 -心から許すか。。。確かに13歳の少年が言う言葉ではないな。俺のこれまでの経験の大半は前世にある。その集積した経験が言葉に乗ってバリスに届いているか。。。こればっかりは自分でも測れないもんなぁ。


 数分経ったがバリスからの返答は無かった。すると廊下の先から足早に動く複数の足音が聞こえ「こっちです!」と案内するような言葉が聞こえてきた。


 すると、先ほど母の死体を見てどこかへ行った監視者が兵士3人に比較的軽装備の人間が2人の計5人を連れてトマスの前にやってきたのである。そして、背中に短槍、赤い兜をした兵隊長らしき者が言う。


 「確かに死んでいるな。確認した。おい!運び出せ!小僧!後ろの壁に手をついて両ひざを地面につけろ。」


 -さようなら母さん。。。記憶は薄れてしまったけど、大切だった感覚は心にも身体にもあったよ。


 トマスは、別れを告げるように見つめていた目を母の顔から外し後ろを向いて壁に手をついた。後ろでは運び出しているのであろう音が耳に入る。そして1分もしないうちにガシャン!と牢を閉める音が聞こえた。


 トマスは振り返り母が運ばれている先を見つめた。兵士が運び出しているのは見えるが兵士が邪魔で母の姿は見えなかった。


 「すまなかった。。」


 兵士が居なくなり、静けさが戻った後にバリスから小さな声で謝罪の声が聞こえたのであった。

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