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バリス=ノスト②


 ‐落ち着け。。。怒りに任せて言葉を出せば成るようにしかならない。前世でも山ほど失敗したじゃないか。もっと考えろ。

 

 トマスは直ぐに言葉を発せず。考えに考えて言葉を発した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

 視点 バリス=ノスト



 ‐俺はこのトマス=フローディア、若しくはその母親になら殺されても仕方ないと思っている。本当なら命を握られている妹が殺されず、今でもちゃんと生活しているかを確かめたいが奴隷島に送られている現状ではそれも叶わないことだろう。

 その時、牢獄の向こうから声(トマス=フローディア)の声がこっちに向けて発された。

 「アンタは、俺たち家族に対しての冤罪をさっき軽い感じで話していたが、正直腑に落ちない部分が多い。賄賂で捕まったと言っていたが本当か?法務執行官っていうのは言葉からすると相手の罪対して量刑を言い渡すような職種だろ?かなり優秀な人材のはずだ。この国は王権制度、その下に大臣、そこから伯爵等の貴族や地方領主と存在しているから多少の賄賂は存在するとは思う。だけど、アンタの職種は肩書ではなくて頭で勝負する類のものだ。そんな職種についてるやつが賄賂で動いたとしても捕まるような真似するか?そこに疑問が1つある。」

 バリスは聞いていてその淡々と喋る声は高く声変わりがまだきていない少年の声ではあったが、理詰めな内容は子供とは思えなかった。

 「それに、賄賂を受け取るようなやつが仮に捕まったとしても、そういった人間性のやつが喋る言葉は恨みつらみ。犯した過ちに対する後悔なんてないだろう。自分の失敗ばかりの後悔の念がこもっていそうなもんだが、アンタの言葉はあまりにも軽い。現状から目を逸らしているのか若しくは諦めたか。そもそも人生諦めているってヤツが法務執行官になってるなら、国そのものが終わっているだろうな。」

 トマス=フローディアの言葉を聞いた、バリスは虚を突かれた感覚に陥っていた。

 ‐13歳くらいだったか、こいつは割と頭がキレるタイプかもしれないな。今26歳の俺が逆の立場でもここまで考えられるか。。。いや、多分無理だな。自分の家族全員の人生を狂わした人間が近くにいると分かって、こうまで考えるとは思えない。

 「なぁ、答えてくれよ。アンタは人生そのものを諦めて周りをバカにして生きてて、最終的に賄賂で捕まってこんな島に流されても軽口をたたく阿呆なのか?」


 「…………。」


 「アンタは賄賂って言ってたけど、金が対価とかではなかったんじゃないか?それに賄賂を「受け取った」んじゃなくて「受け取らざる」えなかったんじゃないのか?それならある程度、何故アンタがこうも軽い口調で言えるのか自分の中で腑に落ちるんだが。」


 「……何故そう思う。」


 「法を司る人間がまともじゃないなんて中々ありえなさそうだと考えたんだよ。まともなら良心の呵責が心のどこかにあるはずだ。それでも軽い口調で言うとなると、自分の非を罵倒されたい。若しくは恨まれるべきだ。とか、そんな心がある方がしっくりくるんだよ俺は。」


 「お前……どんな教育受けてんだよ。13歳のガキか?」


 「あまり人を舐めるなよバリス!お前に起きた事、知っている事を話せ。」


 -正直よ、当然罪悪感はある。だけどよ、こいつの考え方がガキの思考回路じゃなさすぎて、その衝撃が強くて今は驚いているってのが大きい。量刑を言い渡す時、窃盗、殺人、強姦、人身売買、多くの犯罪者から罵声や脅しを受けたが今はどうってことない。法務執行官になりたての若い頃は何度も鳥肌を感じたけどな。だけど今はその若いときに感じた得体の知れない鳥肌がたっているな。この感覚は久しぶりだ。

 

 バリスは、この少年ほどの思考回路なら罵声を浴びせられる若しくは一方的な行動はしないと考え、自身の事情を話すことを決めた。


 「妹をよ、殺すって脅されたんだよ。」


 バリスがそう答え話を進めようとすると、トマスの方から「誰に?」と声が飛んできた。


 「いや、知らねぇんだよ。最初はな自宅に手紙が置かれていたんだ。お前の父親である「ブロディアス=フローディアがまもなく法で裁かれることになる。有罪としろ」と。誰がいつ自分の部屋に侵入したのかも分からねぇ。不気味だったから、知人の家に3日程宿泊したんだよ。そしたらよ、妹が職場に突然来てな「姉が死んだ」って言うんだよ。悲しみもあったが、真っ先に手紙のせいではないかと頭をよぎってな。。。」


 バリスは過去を思い出したせいか、自然と声は小さくなっていた。だが、言葉は続く。


 「嫌な予感がしてな。妹を置いて自分の自宅に急いで戻ったんだよ。そしたら、また手紙が置いててな。怖くて見たくなかったがよ、くそ、思い出したくもねぇ。。。手紙の内容がよ、「有罪にしなかったら妹を殺す」ってあったんだよ。恐怖もあったが頭にキテな。復讐する為に知人のツテで隠密・暗殺ギルドに依頼したんよ。あと、冒険者でも名があった「狩猟バウンティドルスラ」にも追跡依頼した。でもな、更に2日経ったら、知人と知らない死体が発見されてな。多分、そいつは暗殺ギルドのやつなんだろう。それにドルスラも姿を見せなくなっててな。もう怖くなってよ。もう従うと伝えたいけど、誰かも分からねぇから街中で「従うから妹を殺さないでくれ!」って叫んじまったんだよ。それから次の日にお前の父親が捕まって取り調べ中だと報告書類が届いたよ。」


 -自分で口にしてて最低だ俺は。自分の家族を守ろうとして他人を犠牲にしたのに、その家族の人間に事情を話し言い訳をしながら許しを乞いながら話している。人としておよそ情状酌量などないのに。。。いっその事もう死のうか。。。


 今の今まで虚勢で自分を騙し続けたバリスの姿はなく、目には力が入ってはいなかった。


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