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暗躍ー出会い

建国3000年の歴史があるダコタ王国。遥か昔、遠い北の地から天空族が魔族、ドワーフ、エルフ、人を纏めており、北の地から追いやられた一部の人族は南へと逃げるように移動したと王国の古い書物には記載されている。

 特に天空族から降り注ぐ”神の威光”と呼ばれていた天空族以外の生き物を平伏させる力から影響が届かない地へと逃れることが出来た、人族のダコタ=ファルクスが南の豊かな地で小さな集落を興したことが起源であり、”神の威光”から逃れる事が出来た各種族の一部の者達がそれぞれ集落を作り、村、町を形成しやがて街へと発展していったという。

 当時、人族は多くの種族の中でも生き物とのしての力は非力な部類であり立場も低かったというのが歴史書を読み解いている研究者の共通の意見である。爪や翼、筋力など、他種族に比べて身体的能力の特徴が無く、当時の生活水準からすると手にする武器などを推測しても他種族には劣るのではないだろうかということ、また人族が天空族から最も南に逃げているという事実が大きな理由となっている。歴史書には記載されていないが、”神の威光”と呼ばれているものから逃げることが出来た他種族達はある程度離れたら集落を作って生活した。しかし人族は最も離れた地で集落を作ったことから、他種族との力関係は弱く、追いやられていくうちに南へ南へと移動したのではないか。天空族がいるとされている地から南への他種族の分布図を眺めていてもそれを示しているように見える為、そう研究者は考えている。


 街へと発展した地域はダコタ=ファルクスが76歳にして王に君臨、その後は彼の腹心であるトミサ=オルリオスが王を引き継ぎ街の整備・生産・軍備と着実に成果を挙げていった。

 それから2947が経った現在、王都の人口は2000万に達し、王国周辺の集落や街を合わせると3000万に達する人族が暮らしている。

 そんな王国のとある一室の話。


 執事に丁重に案内され、その大きな館の廊下を男は歩いていた。帯剣こそしていないが青く輝く鎧に上からでも理解できるほどの筋骨隆々の肉体が己の限界を底上げせんとしているのが分かる。男は目的のドアまで来ると執事が静かにドアをノックした。

 「入れ」

 ただその一言が聞こえると執事は「失礼します」と言いドアを開いた。

 男はドアの奥の書斎にいる男と目を合わせ部屋の中へと入る。目の前には椅子に座り机の書類を見つめ書類の事を考えているだろう男がいた。こちらも歳老いてはいるが過去には武術に多くの時間を割いたであろう肉体がまだ面影を残している。机の男は執事がドアを閉めるのを確認すると青い鎧の男に質問をした。

 「全て順調か?」

 「ああ、順調だ。ブロディアスを支持するヤツはまだまだいるが、表立って何かを言っているわけでも何か行動を起こそうとするわけでもねぇ。自然と過去の出来事として消えていく程度だ。もう死んだしな。奥さんとガキは鉱山に閉じ込めといたし問題ない。」

 「そうか、軍自体はどうだ?」

 「ブロディアスが居なくなっても7番隊は無理そうだ。あそこにはディロがいる。動き回って嗅ぎつけられても面倒だから触れないよう厳命している。ただ、2番と5番はこっちに流れた。」

 「治安維持と戦争部隊の1部か。国王周辺と場内はどうだ?」

 「国王の周りはなかなか忠誠心高くて入り込めないな。催眠や混乱の類もあいつら鑑定や治癒で察知するし手出しできない。あそこはもう懐柔は無理だ。場内は戦略で散らす算段を整えるよ。」

 「王子たちはどうだ?」

 「どいつもこいつも粒揃いの連中だが、まだ未熟だ。そっちも算段つけとくよ。アンタの密偵や部下達は根回ししてるのか?」

 「こちらは問題ない。これから噂の流布を行うつもりだ。」

 「ほうほうほう、それならこっちも焚き付けの準備だな。」

 「今のところここまでだな。」

 「このやり取りは次辺りで最後になりそうだな。感のイイヤツとか予知持ちに繋がりがバレたらたまんねぇからな。」

 「わかった。。ぬかるなよ。」

 「ああ。」


 鎧の男は、再び執事に案内されながら館から出て行った。



―――――――――――――――――――――――――――――――――


 「うわっ、死んでるじゃねぇか。」

 監獄の兵士は独房を巡回中、ガキとその母親が入れられている牢獄を通り過ぎる際、多量の血痕がある上に母親が幸せそうな顔で死んでいるのを発見した。

 兵士の声でトマスも起きたが、トマスにとって母親の死は昨晩の出来事である事とまた「記憶の残滓」による前世の記憶との混同により母親の死体を再度眺めるよりも、日が昇り光が僅かに差し込むことで周りの環境が理解出来ることに注力していた。

 ‐兵士が慌ててどこか走っていったか。。多分死体の回収だろうな。もし僕たち親子が重要人物なら何か接触があるだろうし、その時に少しでも情報を収集出来たらラッキーだな。それよりも、牢獄の周りはこんな感じになっていたのか。鉄格子も逃げられない程度にはしっかりしている。独房の前の廊下、曲がり角まで30メートルはあるな。

 「おい!」

 ‐ん?

 「おい!お前トマス=フローディアだろ?」

 ‐昨日の夜、他の独房で寝返りしていたヤツか。

 「そうだが、アンタは?」

 「ん?あー、そうか俺は昨日この奴隷島に移動された、バリスって名前だよ。先週までダコタ王国法務執行官をやってた。」

 「なぜ執行官がこの島に?賄賂でも受け取ったのか?それよりも何故俺の名前を知っている?」

 「あー、それな名前を知っているのも関係があるんだがよ、俺はお前の親父の刑を言い渡した執行官でな。まぁ、まとめると買収されて言い渡した刑だったんだがよ、口封じにあったって訳だ。」

 ‐なッ!

 

 色々と思うところがあるトマスではあったが、これがこれから先長い付き合いになるバリス=ノストとの出会いだった。



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