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14、リザルト

 抱きしめてしまったことへの恥ずかしさが込み上げてきて、アオイの肩を持ってそっと離れて言った。


「……あ、なんかすいませんでした。……こんなことして反省してます」


 そりゃ敬語も出ちゃうっての。


「そ、そうですよ。……せ、戦場ですもん。……警戒を怠るは死にます。……はいですね」


 アオイさんは噛みまくってるけど、言ってることは正論も正論。


「だ、だな。じゃあ、魔石取り出すから警戒頼む」


「……はい、ですね」


 俺は腰からサバイバルナイフを取り出して餓鬼の前でしゃがみ込む。


 先程まで殺し合いをしていた生き物が、ただの物体として存在し、今からその胸にナイフを突き入れることが心に重くのしかかった。


 でもそんなことで躊躇してられるか。


 俺は、俺たちは生きるために殺すことを選んでここにいるし、アオイはしっかりとトドメまで刺してその役割を果たしたのだから。


「……よし。……やろう」


 赤黒く痩せたアバラの下にプツリとナイフの先が入っていくと、さらに赤い血がタラタラと流れ出す。


 覚悟を決めてナイフを奥まで差し込み、肉を引き裂いた。


 右手を肉を掻き分けるように心臓の方へ入れていくと、ゴロリとした異質の硬い感触が小指に感じられた。


「……これか?」


 それを掴んでブチブチと絡まる肉から引き抜くと、血にまみれてはいるものの講習で見たものと同じような魔石が現れた。


「よし。あと取れるのはツノ」


 釘バットでグチャグチャになった顔を仰向けにして、バックパックから取り出した糸鋸をツノと額のキワに当ててジコジコと前後に動かした。



 ツノと魔石をバックパックに詰めると、餓鬼の腰布にぶら下がる巾着を見つけた。


 中を覗いてみると、いくつかの丸い小石の底に見覚えのある鈍い光が見えた。


「なにこれ。……全部で506円も。……『も』ってことも無いけども」


 餓鬼ってお金集めてんの?それともRPGみたいにモンスターがお金持ってんの?


 その真偽はまだわからないけど、お金のない現状ではありがたい。

 鹵獲したものは冒険者のものになるのだから、お金も問題はないはずだろう。


 立ち上がり、餓鬼が使っていたナイフとクロスボウを拾い集める。


 ナイフの刃はガタガタで、クロスボウは見るからに整備不良で土にまみれている。キチンとメンテナンスされていたとすればアオイの命は無かったかもしれない。少なくとも罪と罰とはいえ、文庫本くらいは軽く貫通していただろう。


 両方共俺たちが使うには手入れをしないといけない。矢も二本ついているが買い直さないと安心して使うことは出きなさそうだ。


「アオイお待たせ。行こうか」


「はい。本道に戻ります?」


「そうだな。今日はこれ以上無理することもないかなと。それでいい?」


「もちろんです。じゃあ帰り道も気をつけて行きましょう」


 餓鬼が潜んでいた脇道から本道へ戻り入り口へ向かう。


 途中何組かの冒険者とすれ違ったが、モンスターと出会うことは無く、二回目の探索は無事に終了したと言える。


 探索時間は1時間20分。

 合計探索時間は2時間10分になる。つまり残りの規定探索時間は三日で4時間50分

 手に入れたものはボロボロのナイフとクロスボウに、魔石と餓鬼のツノ。あとは506円の現金だった。

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