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エッセイ

政府の働き方改革で、労働生産性を上げる方針があるけれども

作者: ロロサエ

ニュースで見ましたが、政府が進める働き方改革で、労働生産性を上げようという方針があるらしいですね。

ノウハウの少ない中小企業に、大企業の持つそれを取り入れてもらおうとする試みらしい。

具体的には、私が期間工として勤めるトヨタ自動車の、いわゆるトヨタ生産方式の導入です。


短期的には、物凄く役立つと思います。

ムリ・ムダ・ムラを無くす事を重視するトヨタ生産方式なので、従業員の負担は軽くなるでしょう。

作業効率は上がるでしょう。

安全な作業が出来るでしょう。

導入する企業側には費用が嵩みますが、政府の資金援助とかあるとすれば、その効果は高いと思います。


問題は、ムリ・ムダ・ムラを無くしていったら、その作業自体が非人間的な行為と化す事です。

そして、労働生産性が上がっても、仕事の量そのものは変わらない、寧ろ負担が増える現実です。


ムリ・ムダ・ムラを無くすとは、作業者に無理をさせない、無駄な動作を省く、作業にムラが出ない様にする事です。

重い物を持たなくて良いように道具を改善したり、作業動線を見直して動きを邪魔する設備を変えたり、常に一定の動きが出来る様に作業手順を変えたりします。


腰を痛めた人にとっては、重い物を持つ作業は苦痛でしかないでしょう。

無駄な作業が多ければ、疲れるばかりです。

ムラがあると、製品の仕上がりが違ってしまいます。

トヨタ生産方式は、品質の同じ製品を大量に作る作業においては、絶大な効果を発揮するでしょう。

また、サービス業においても、参考になるやり方だと思います。


しかし、ムリ・ムダ・ムラって、人間からは切り離せない部分なのですね。

やる気や集中力にムラがあるのは当たり前です。

時にはムリをするのも当然です。

人生って、ムダな事ばかりやってますよね?


そんな人間から、作業中の事とはいえ、ムリ・ムダ・ムラを排除していったらどうなるか?

それはロボットと同じだという事です。

ロボットになる事を求められるのです。

ムリ・ムダ・ムラは宜しくないのですが、何事もバランスという結論に至るのです。


トヨタ生産方式の元祖のトヨタでは、誰でも同じ作業が出来る様、工夫がなされています。

その努力の甲斐あって、世界でも一位二位を争う販売台数を達成しています。

生産効率も高いと言えるのではないでしょうか。

でなければ、世界で売れる車は作れませんよね?

継続して利益は出し続けられませんよね?


でも、その現場では、労働者は無理ばかりやらされている気がするのです。

なるほど、ムリ・ムダ・ムラを排除して、労働の効率化が図られています。

重い物を持つ必要はありませんし、常に改善を図って労働環境の整備に努めています。

そういう意味で、トヨタの工場は凄いです。

世界トップクラスにも納得します。


けれども、それは別の言い方をすれば、労働者の限界に近付いている、とも言えます。

それはそうです。

ムリ・ムダ・ムラを徹底して排除し、効率を高めていけば、見えてくるのは人間の限界ですから。

人間の限界としてそれ以上は無理という所にまで持っていくのが、トヨタ生産方式の目標だと思います。


まあ、工場では人も多いです。

能力には個人差がありますから、あくまで平均としての限界値でしょうが、低い人はついていけずに辞めてしまうので、その平均値が高くなりがちです。

ですので、会社の求める仕事ぶりが、無理なレベルに近くなっていると思うのです。

今までそれで出来ているので、それが当たり前になっているのですね。


おかしいと思うのは、この作業は何秒、これは何秒、移動に何秒、合計しても時間内に出来る、という様な会社の考え方です。

そもそも、その作業の適正作業時間は何秒なのか、が重要ではないでしょうか?

人として求められる作業スピードを設定せずに、誰かが出来たからといってそれを全員に適用するのはどうなのか?

ある人にとってその設定時間自体が無理に近ければ、それは無理なのに、それは努力が足りない、やり方が悪いとしか考えないのです。


ベテランが5秒で出来たからといって、それを8時間繰り返す計測もしないのです。

ムラがあるのが人間なのに、体力も集中力もある時に作業時間を少しだけ計測し、それを標準作業時間にして一日を通した生産計画を立ててしまうのです。

しかも、作業そのものしか計測しないから、それに付随した作業(部品の空箱の入れ替え等)は組み込んでいない。

従って、会社が出来て当たり前と思ってる事が、現場では労働者の無理に寄りかかっているのです。

入ったばかりの新人が、作業に慣れたからといって、ベテランがマークした作業時間をこなせる筈がないではありませんか。

その場合、無理をするしかないのです。

会社は、それを見て見ぬ振りですね。


それに、効率を上げていけば人員は不要になり、現場の人は少なくなります。

企業の利益の為には、一人当たりの作業量は多くなっていきます。

どれだけ効率化を図ろうが、個人の負担は軽くなりません。

いや、ムリ・ムダ・ムラが排除された結果、常に100%のパフォーマンスを求められるのかもしれません。

それが既に人間には無理なのだとは、企業側は思わない様です。

仕事からムリ・ムダ・ムラを無くす事は大切ですが、人間からはムラを無くす事は出来ないし、多少の無理はききますし、無駄に思えて無駄でない事もあります。

バランスを大事にして欲しいです。

作業時間の計測は定期的に為されている様です。

その際、空箱の入れ替え等まで計測しているのかは知りません。

それも含めて計測しているのならすみません。

でも、現場の実感としては、含まれている様には思えないです。


新しい車種が増え、その車種の部品は多い上に部品箱の収容数が少ないので、頻繁に入れ替えています。

けれども作業時間は変わらない計算なので、絶対おかしいだろ、としか感じません。

同僚の多くも、同じ思いです。

しかも、不具合が出たりしたらチェック項目が増えます。

作業負担は増えるばかりです。


激しい国際競争の中、仕方ないのかもしれませんが・・・

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― 新着の感想 ―
[良い点] うんうん。 共感100%。
2019/03/11 09:40 退会済み
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