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Persona breaker -仮面を壊す者-  作者: アリシア
1章 ケテル王国
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3話 忍び寄る影

チートってこういうのを言うんだねっ!

資料室の外から中の様子を隠れながら覗いている人影。

 男なのか、女なのか、それすら分からぬ容姿であり、背の高さも両性とも当てはまる中途半端な身長である。


「クソッ!クソッ!……何でなんだよ!」


 どうしようもない怒りを発散させるかのように壁を殴りながら消え入りそうな声で呟いた。声からして男だと言うことが分かるが、彼は資料室にある『何か』にその怒りがあるのだろう。


 そんな状況でさえ声を押さえられる彼は自己のコントロールが上手いのだろう。


 なら、何故このようなコントロールの上手いような人物が怒りを露にしたのか、それは決して溜まりに溜まったストレスが爆発したからではない。

 つい先程まで彼の視線が向いていた、資料室の扉の向こうに真実があった。


(これは悪夢だよな…ははは……)


 彼は何もかもをなくした男のようにこの場に座り込む。両手の掌を見る。そこには何もない。此処にある悪夢を断ち切る聖剣も無ければ、現実逃避をするためのゲームさえない。つまり、俺にはこれから逃れるすべはない。少なくとも彼はそのようなものをその二つ以外知らなかった・・・・・・。


 彼が見たものは、彼の偶像アイドルと、彼がもっとも憎む無能勇者が、二人仲良く読書をしている。

 傍らから見たら一見微笑ましい光景なのだろうが、彼には悪夢でしかない。自分の好きな相手が目の前で無能勇者ゴミクズの毒牙にかかろうとしているのだ。

 実際はそぶりすら見せていないのだが、彼には少なくともそう見えている。

 彼もここまでなら、なんとか冷静に物事を考えることができたであろう。理性を保つことがまだできていたのだから。


 しかし、彼の怒りはここで止まることはなかった。


「なッ!?」


 彼は目の前の出来事に目を見開いた。実際なら絶対に見たくないようなものなのに、驚きのあまり目を大きく開けてしまったのだ。

 彼は先程まで、『悪夢』と表現していたが、今はその表現は相応しくない。


 目の前にいた無能勇者は大きな黒い翼を生やし肌は赤黒く変色している──まるで悪魔のような容姿であった。

 対してアイドルの方は純白のドレスを着こんだ、まるで花嫁衣装のようなものである。彼女の背中にも翼が生えており、ついでに頭にも金色のリングが浮かんでいる。彼にとっての『天使』である彼女にはお似合いの格好かもしれない。

 悪魔は天使を拘束して無理矢理キスをしているように見えた。


 彼の妄想も甚だしいが、一部を除けば正論である。


「殺す…殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……殺してやるっ!」


 ドア越しで行われている出来事は『地獄』と表現するのが正しいだろう。それを呪い殺さんばかりにと殺気をぶつけるようにしている。彼の理性はすっかり崩壊し、本能的な怨みが口から滝の如く流れる。


 他人からすれば目を血走らせ、ドアの向こうを凝視しているのはあまりにも異常じみた光景だ。


『ククククククク………』


 何処かから声が聞こえた。彼は辺りを見回すが人影どころか気配すらない。いつもの彼なら早々と立ち去ることであろうが、今の彼は脳が興奮しており、その声に返事をしてしまった。


「誰だよ!早く出てこい!」


 廊下に彼の声が木霊する。廊下に誰もいなかったのが幸いだったろう。もしいたならば、騎士やらなんやらが此処に集まるのだから。しかしこれは先程聞こえた声にも言えることだろう。

 それにしても資料室のあいつらに聞こえていなかったのか、それが不安になるが、杞憂である。廊下と部屋の壁は全て防音加工が施されており、音一つ漏れない構造になっているからだ。つまり、先程からしていた息を殺すと言う行動は無駄であったということである。


『我ハ貴様ガ気ニ入ッタ、名ヲ申セ』


 やたら偉そうな声が言った。彼はその声を聞いた瞬間背筋が凍るかのような冷たい何かが通った気がした。抵抗してはならない。そう感じた彼は自分の名前を声を震わせながら言う。


『────カ。オマエ、“力ちから”ハ欲シクナイカ?』

「は?」


 彼はいきなり予想外の言葉が出てきたことに間抜けな声で答えてしまう。


『我ガ名ハ“ケムダー”。貴様ノ異常ナ執着……貴様ヲミテイテ飽キル事ハ無カロウ』


 明らかに嘲笑っている表情をしていたが、興奮のあまり目の前が正常に見えていない彼には微笑んだ神のようにさえ見えている。つまり、彼は末期症状である。


『スベテヲ我ガ物ニ出来ル…ソンナ“力”ガ欲シクハナイカ?』


 こんな状態の彼にはまともな思考能力など残っていなかった。


「俺は……力が欲しい…!彼女を俺のものに出来るなら、俺は……」


 彼の言葉に“ケムダー”は気味の悪い笑い声をあげて言った。


『ケヒョヒョヒョヒョヒョ!……ヨカロウ。貴様ニ“力”ヲ与エテヤル』


 そう言うと同時に、彼の目の前に黒い影が現れた。二メートルはあろうものだ。その影の口元はやはり笑っていた。いや、嗤っていた。そして、男も同じ様に笑っていた。まるで、今の自分を捨てるということを決めた自分を嘲笑うような──そんな醜い笑みが。


 ──これからあのような事件が起きようとは……友樹含め、全ての勇者はまだ知らない。

2021/8/16 一部内容の修正


アクセサリー……強しっ!

よし、主人公無双に路線変更だっ!(しません


次は何時になるのか!?

なるべく早く出せるようにします

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