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Persona breaker -仮面を壊す者-  作者: アリシア
1章 ケテル王国
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1話 魔法と研究

2024/12月 1章の加筆修正の為の分割を行いました。

現状での加筆はありません。

2025/1/5 一部加筆修正・言い回しの訂正を行いました。

 MP以外のステータスが一般兵士以下──いや、もしかしたら一般人以下かもしれない。唯一勇者と言えるほどの量のMPですら、使い道のない俺には持ち腐れであるだけ。つまり、魔法は使えない。魔法スキルは、突然覚えることがあるらしいのだが、正直いって意味が分からない。


 騎士長であるリドルさん曰く、この世界、デウサルボルではそこまで魔法は貴重なものではないらしい。なんでも、練習で覚えることができる。しかも剣技などを覚えるよりも楽とのこと。それと、上記のことを聞いたところ、それはスキルが覚えるのは、元々の才能、または途中にその才能に目覚めた場合らしい。つまり、使えるからといってスキル欄に魔法スキルがあるとは限らない。

 魔法スキル所有の勇者よ。ドンマイだな。俺が言えた立場ではないが。


 とは言うものの、スキル持ちと、持たないのとでは全然違う。どうやらスキル持ちは神級魔法まで使えるようになるのに対して、持たない者は精々上級魔法、どんなに頑張ってもこの級で留まることになるらしい。

 つまり、「テメェには精々上級魔法が限界なんだよヴァーカ」ということである。


 まあ、魔法を覚えるためには魔力やら魔言やら、覚えておく必要がある。詠唱文が分からなければ、魔法が使えない。詠唱文を覚えても魔力の流れを掴めなければ発動しない。その両方を実用化することで初めて魔法が使えるようになる。


 まずは魔力の感覚を掴もうか。何事も感覚を覚えてからだ。



 □□□



 魔力の流れは以外と簡単に掴めてしまった。そりゃまあ、あっさりと。本にかいてあるには、『身体中に血が廻っているような感じで循環させる。その後、胸の辺りに少しずつ魔力を溜め込め、練っていく』


 ここまでは簡単だった。リドルさんが言うには、魔力自体を掴むのが難しいのであり、それ以外は大抵の人ができる。言い換えるなら、俺はイレギュラー。

 魔力がどれだったのかは分からないが、何か召喚前までは無かったようなものが体にある気がしていたため、それをイメージしたら見事にビンゴした。

 瞬く間に体が羽のように軽くなり、身体中がポカポカと暖かくなっていった。

 何が魔力なのかはっきりと分かるといった点を考えれば、転移や転生はこの時点でチートなのかもしれない。


(後は本に書かれた言葉を読めばいいのか?)


 魔力を掴むことができたとしても、それを使うことが出来ないのでは仕方がない。ということで、本をもう一度見直す。


『魔力が掴めたら、次はそれを使って魔術を発動させます。まず、────』


 ここからの内容は長々と書かれているため、簡略化して説明させてもらう。


 魔力を身体中に循環させる

 ↓

 魔法の呪文を唱える

 ↓

 魔力を利き手の中指に少しずつ集めていく

 ↓

 呪文が終わると同時に妖精が各属性の力を魔力を引き換えに魔術を発動させる


 ということらしい。

 中々難しい気がするが、やってみなければ分からない。そう思った俺は、本の目次から『魔術の呪文』を探してそこのページを開いた。

 書いてある呪文名は『火球』。ゲームによってはファイアやファイアボール、ファイヤーみたいな感じになっているあれのことだろう。


「どれどれ………………」


 ……沈黙。


 俺に沈黙以外の選択しなどないのだろうか?とか思ってはいない。これは仕方のないことなのだ。


(よ、読めねぇ……)


 翻訳はスキルによってできているのだ……多分。しかし、日本人にはとても発音できないようなものなのだ。さっきまで転移最高!とか思ってました。なめててすみませんでした。


「んーなになに?……ッンレボアネェ、クレァソゥガレティレリルヮンィ──────」

「ん?」


 後ろから聞き慣れた声が聞こえたのだが、その声の持ち主はなんと、この発音しがたい意味不明な文字を発音して見せた。


「ッ!……華凛!?」


 それは、俺のクラスメイトだった華凛であった。




 マイダ カリン  Lv1


 sex:女

 job:勇者(魔術師)

 race:選ばれし者(人間)


 HP:50

 MP:250

 STR:50

 INT:250

 DEX:50

 MND:100

 AGI:50

 LUK:100


 Skill

『能力透視眼』

『光魔法 Lv1』

『闇魔法 Lv1』

選ばれし者(セレクト ヒューマン)

『魔力上昇 Lv1』


 Extra Skill

『鑑定』

『自動言語翻訳』

『自動文字翻訳』

『ユニーク:召喚魔法』




 ステータスを見れば、納得できる。どうやら彼女は魔術師のジョブだったらしい。通りであんな滅茶苦茶な発音が出来るわけだ。


(しかし……何で翻訳されないんだ?)


 俺にはそれが不可解でならなかった。普通なら「我が魔力────」とか、そんな感じに翻訳されるのだろうが、魔術の言語(・・・・・)はそうならなかった。


 ここで追加で説明すると、普通に王様や騎士さんが使っている言語は、『デウサルボル語』とされており、大陸の共通語として使われている。反対に、魔法を使う際に使うのは一般的には『魔導語』と言われており、此処の神が世界を作る際に使った魔法が劣化したものであるためか、神が生きている頃の言語と言われている。


「まあ、こんなもんだよね」


 華凛は掌にある火球をフッと消して、自慢気に言う。スキル持っているんだから出来て当たり前だろう。とか皮肉げに言ってみると、ムッとした顔で、私だって頑張って詠唱文を覚えたのに!と怒ってしまった。


 魔法には色々と苦労しそうだな。そう思うが、それと同時に、これからが楽しみの余り、身体を震わせた。



 □□□



「れ、革命だ(レボリューション)…………」


 …決して地球儀など持ってない。

 一人で図書館にいるわけであるのだが、俺は私語厳禁のこの場で、嬉しさの余り声をあげてしまった。しまったとおもい、周りをキョロキョロと見るが、他の人たちは俺の回りには一人としておらず、薄暗い書庫のなかでは紙が擦れる音すら気になるほど静かであった。時計があるのなら一秒刻みの度に周りをイライラとさせていたであろう。


 今回図書館にいるのには理由があった。魔法の書類を探すためだ。因みに、この図書館は一般市民は一人としていない。なぜなら王城内にあるためだ。いるとしても、皇族や、上位の騎士がいるくらいで、他には誰もいない。


 さて、今回俺がここにいた理由は分かったとして、俺が革命だとか言って興奮しているのにはれっきとした理由があるわけで、決して頭のネジが外れたからではない。


(魔法が……発動した!)


 俺の右手にはビー玉サイズの火の玉が浮いている。

 一部制限はあるが魔法が発動したのだ。


「俺は今回、あの意味不明な詠唱文など覚えていないし、唱えてすらいない」


 この台詞でお分かりいただけただろう。俺は『無詠唱』という究極魔法補助スキルを使うことができたのだ!

 加えて言うならば、無詠唱は、デウサルボルの知識では絶対に不可能だ。この本によると、魔法とは妖精との『取引』によって成り立っている。俺たちが妖精に魔力を供給する対価として詠唱文に対応する魔法を発動してくれるとされている。逆を言えば、妖精の力を借りなければ、人間は魔法を唱えることが出来ないとされている訳で、妖精を呼び出す暗号こそが、詠唱文なのだ。細かく言うなら、『詠唱文』の前半は妖精を呼び出す文、後半が命令の文であるとされている。


 つまり『無詠唱』は魔術界に革新的な現象であり、それと同時に今まで使われてきたこの法則が嘘であったことを示すわけで、これを世間に流せば、魔法の地位はガタ落ちし、同じく魔術師の存在も不要になる。

 確かに神への信仰心があればあるほど妖精との繋がりが強くなり、強力な魔法が発動できるとされているという教会にとって都合の良いシステムの上で成り立っていたものが崩れるということは大きな出来事になるだろう。

 そして、魔術師率の高い貴族達が不利になるということで、今の経済が大きく傾くことが懸念される。非常に由々しき事態だ。これだけは避けなくてはならない。


 俺はこの技術を簡単には打ち明けないと心のなかで固く決心した。




 □□□



 午後に華凛に練習に誘われて行ってみると、あれほど固く決心した事がとてつもなく馬鹿馬鹿しいことに気づいてしまった。


(比べ物にならないくらい強い……)


 先程まで実験で飽きるほど見た魔法である『火球』が、俺のそれとはまるで違う魔法なのだ。見た目から、攻撃力までの全てがだ。INTの高さやスキルの影響もあるのだろうが、これは明らかにそれだけが原因ではない。

 あくまでも俺の予想だが、恐らく、『無詠唱』が魔法の威力を低下させているのではないかと思う。ラノベでもこのような話は読んだことがあるし、他に理由が見つからない。


「華凛の魔法をそんな熱心に見るなんて………はっ!?もしかしてっ!?」

「いやいや、それはない」


 華凛の友人兼、ボケ役のメガネは良からぬことを考えているようだ。

 彼女──明奈あけなは、先程言ったように華凛の友人なのだが、華凛に良からぬ知識を与えている色欲魔女でもある。こっちに来てからこいつのことを知ったのだが、ヤるとか下ネタを教えたのがこいつだと気づいたのは転移した翌日だ。

 何故わかったのかと言うと、「○○○を×××に△△△して、○○○を激しく□□□して………」とか、完全な放送禁止用語を白昼堂々城の中で言っているのだ。……華凛の目の前で。


 華凛はキョトンとしているため、何を言っているのか分からないのかも知れないが、これは色々な言葉を覚えるのも時間の問題だ。近頃の友達というものは(いろんな意味で)中々侮れない。


「あっ、そうかそうか。もう既にヤりまく「アアアアァァァァァァ!!!!」からね。………いきなりどうしたの?彼氏君」


 明奈が平然とアレな言葉を言い出したので慌てて誤魔化すが、これが周りの視線を集める原因だったりするわけで、つまりは華凛も俺に気付いたわけである。美久なんかもいたりするが、遠目で俺を睨んでいる。こちらに文句を言う気はないようだ。


「友樹、どうしたの?」

「いや、特に……」


 ……はい。コミュ症スキル発動!


 元カノにすら口が動かない始末。もうすでに重症だ。手遅れだ。終わったぁぁぁ!


「彼氏君は華凛のことを見て、ボーとしてただけだよ!」

「そうそう。彼氏なんだから!」

「キャーーー」


 ご免なさい。魔法が使えるようになったので、熱心に見て、次の実験を考えていました。なんて言えない。言ったら目が冷たくなる。美久の目ももっと冷たくなる!別にいいが!

 これを言ったら完全に厨二病患者だよな。魔法が使えるとか。スキルないのに。

もういっそのことここで無詠唱のことをばらしてしまおうかとも思ったが、これが原因でほかの勇者どもが誰彼構わず使い始めてしまえば後々問題に発展するだろう。

その可能性がある以上安易に口に出すことはできないな。


 黄色い歓声をBGMに俺はこの場に居続けることになった。特に何かをしているわけでもない。

 後になり、その場に居続けることを選んだ自分を恨むことになるのだが、この時の俺はまだ知るよしもなかった。


「キャーーー!」


 ……ウゼェェェ。


 何故かわからないが、その後も俺には黄色い歓声が聞こえていた。正直言って五月蝿い。『女三人寄れば姦しい』と言うのだから、五人も六人も揃っては、騒がしい他ない。ハーレムってこうなのかな?とか考えると、女を囲むなんで碌なことで無いように感じてしまう。

 しかしそこは男の夢。ハーレムを築きたいと思う自分がいたりと、脳内で矛盾が発生したりと、カオスな状態だったり。


 まあ、兎に角五月蝿いのだ。五月のハエくらいうるさいのだ。


人形マリオネット


 華凛が唱えた魔法は『召喚魔法』である。召喚魔法とは、テンプレ通りなら姫様や美少女・美女が、勇者召喚を行う際に使う筈のアレである。

 しかし、本人曰く、この魔法には制約があるらしい。まず、その物体を破壊、消滅する必要がある。まだ対怪物戦をしていない俺たちとしては、華凛の魔法がどれ程のものなのか知らない。

そんな制約があるにも関わず魔法陣の中からは人間の形をした青いシルエットが1体出現。これを初めて見たときはびっくりした。なぜ何とも戦ったことのない華凛がこんないかにも強そうな人型のモンスター?を召喚することができるのか。

華凛自身も詳しくは分からないようだが、初めから召喚できたらしい。普通こういうスキルで召喚できるのってスライムとかじゃないのかよ。とツッコミを入れたくなってしまう。


「何か華凛の魔法って『召喚』と言うよりも、『調きょ「アアアアァァァァァァ!」…………チッ」


明奈の問題発言を俺の声がかき消す。遠くから竜彦たちの鋭い視線が突き刺さるがそんなとこはどうでもいい。

 それよりも明奈コイツめ、遂に舌打ちしやがった。これは狙っていっているんだな。天然みたいな厄介者じゃなくてよかった。天然は自覚症状なしだからな。どうしようもない。


「あ、そう言えばさ、彼氏君あの話聞いた?」

「………」

「なんで無視するのよ!」


 いや、お前が話をふるのは下ネタを言うためだろ?絶対に言わせないからな。


「彼氏君さ、私の事ただの変態とか思ってない?」


 明奈、意外に鋭い。これが女の勘とやらなのか?怖いものだ。

 その内ストーカーにならないといいが、


「私の事ストーカーになりそうとか思ったでしょ!」

「何故分かった」

「本当に思ったのー!?サイテー!」


 本当のこと言うとこうなった。面倒くさいな。コイツは。

 この後もこのようなくだらない二人芝居が続くことになった。


次はもっと早く書きますんで!←フラグ

なるべく早く書けるように頑張ります!


編集:加筆修正 2016年3月8日 16:34

編集内容

 字下げ、2000文字追加

 

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