33話 緊急依頼2
前回の投稿より2年以上経過してしまってますねぇ
実は2章、書き終わってるんですよねぇ(は?)
「まるでモンスター同士の縄張り争いみたいだな」
カームは半笑いで言った。
このような場でも半笑いで言えるカームの心の強さに半ば呆れつつも、その喩えは的確であった。
彼は同志を殺されたことによる恨みと言うよりは、自身の狩場に侵入してきた敵の排除をしているようなイメージがあっている。
この男からは人間らしさが微塵も感じない。いや、正確には違う。肉体的には彼は正真正銘人間である。だが、精神面で彼は人間であるとは言い難い。
「悪魔」
「ん?」
クロムの呟いた短い一言に目敏く気づいたニコルが首を傾げる。彼女の仕草に彼は聞かれてしまったかと呟いた。
「さっき、カームはモンスターのよう。と言ったが、俺は少し違うものが真っ先に出てきたんだ」
「……それが悪魔と」
俺の言葉に聞こえていたのかとクロムが言う。
実際のところ聞こえてはいなかった。だが、モンスター以外であれを見て思いつくのは悪魔くらいだろう。実際のところ俺も真っ先に出てきたのは悪魔の方だった。勇者をしていたのに加え、悪魔との遭遇を経験している俺からしたら日常茶飯事に見ている『モンスター』よりも1度しか見たことがない『悪魔』の方が印象深いものだったのだろう。
「がァァ、ァア!!」
「うおぁっ!?」
ベヒーモスに逃げられた斬撃が近くの隊員のいた上部の大岩を砕いて崩壊させる。見たところ、1人2人は巻き込まれてそうだ。
「おい、あぶねえだ--ろっ!?」
注意をしていた者の紙一重の距離を彼の投げたナイフが飛んでいく。
「これは……どっちが災厄か分かんねえな」
誰かがそういった。
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「か、勝った……?」
なぜ疑問形かは1時間弱の戦闘をしていた双方が地に伏せているからだ。
1人が脈を測るが横に首を降った。
「全くとんでもない野郎だったな」
「ユキほどではない」
俺の言葉にユリが答える。が、それはどう考えてもおかしい返答だ。
「なら次ベヒーモスが来ても安全だな……その時が来たらよろしく頼むぜ」
「お前は俺を殺す気か」
右肩を軽く叩いて来たカームに半目で対応する。
俺は知っての通り非力だ。物理的な攻撃ならユリの方が確実に役に立つし、魔法だってそうだ。そんな奴がベヒーモスと戦うなんて冗談じゃない。
「まあ、勝ったのはよかったが……」
クロムが周りを見渡せば治療を受けているものが10数人。殆どの者が先の戦いの中で味方の避けられた攻撃の犠牲者だ。ベヒーモスからの直接攻撃によって散ったのはほんの数人だ。
とは言うものの、基本的に災厄での戦闘での死傷者数に比べれば天と地ほどの差がある。結果の数値で見れば善戦であるが、内約は非常に残念なものなのだ。それを知った誰もが微妙な顔をしたのは言うまでもない。
□□□
「今回の『作戦』は無事成功しました」
「奴らに手の内は渡っていないな?」
黒いローブを纏った者達が集う場所。日差しが入らず永久日影となっているこの場所に好んで入る人物は9割は裏の人間だ。残り1割は迷いこんだ場合。
もしその1割がこの場に迷い込んだものならば表に帰ってくることは出来ないだろう。
「ええ、体内で生成された魔石を『入れたもの』と捉えております」
つまりは予定通り、です。彼は言葉に付け加えた。
「何人か疑いを掛けているものもおりますが、ごく少数であり、権力者がその意見に批判的なためその意見が自然消滅するのは時間の問題でしょう」
「そうか」
まるで親の仇を取ったかのように楽しそうに事を語る彼とは対照的に、男は短く一言で済ませた。
「ところであの薬師は処理したのだろうな?」
「薬師……?」
心当たりがない。そんな風に記憶を辿る男も思い出したようで、「ああ、あのデブですか」
「彼は体躯はあれだがイェソドを代表する立派な薬師だ」
「あんなの私が手を降す必要もありませんでしたよ。自分が開発した失敗作を疑いもせずに飲み干しましたからね」
彼の最期は確認した。彼は巡回していた警備隊によって処理されたのだ。街中の中心に急にモンスターが現れたと次の日は少し噂になっといたらしいが今は大分落ち着いたと聞いていた。
「つまり、自分で確認をしていないのだな」
「え、ええ。ですが--」
「言い訳は不要だ」
男の放つプレッシャーに彼は思わずたじろいだ。
「い、今すぐ、確、認し、てきますっ」
彼は逃げるようにして走っていった。
「さて…………」
彼が去った今、この場に自分以外に誰もいないことを確認して男はため息を吐いた。早まった鼓動を整えるように深呼吸を繰り返す。
-吸って、吐いて-
-吸って、吐いて-
ー吸って、吐いて-
「フレイ様……これでいいのですよね?」
誰にも聞こえない小さな声で、呟いた。
□□□
「つまり彼は魔石を何者かによって体内に埋め込められていた、と?」
強面の男が受付嬢に威圧的な顔で問うが、帰って来るのは先程から同じ『肯定』の意であった。
「だから、なんど言ったら、わ、か、る、ん、だっ!」
「それはこっちの台詞ですぅぅぅ!」
受付嬢は涙目になって反論して逃げるよう--と言うよりも、バックヤードに逃げていった。
「おいコラ逃げんなっ!」
「ティーチさん、そこいらへんにしやしょうよ」
「そうッスよ、親方だってこんなティーチさん、見たいと思ってないっすよ!」
ティーチと呼ばれた男を止めるように部下らしき2人組が声かけるが、彼等の言葉に見向きもしない彼には聞こえていないらしかった。
「くそう……なんで親方がぁ……」
その場に泣き崩れたティーチに声かけられるものなどいないようで、2人以外に近づこうとする者は誰一人いなかった。通常、止めに入るギルド男性職員ですら遠目に見ているだけという対応は彼に今話しかければどうなるかを全員に示しているようなものだ。
ギルド職員は冒険者からの力の物言いに対抗する手段を持つものは原則的にはいない。血の気を持て余している彼らは問題が起きた時武力解決に走る傾向があるからだ。基本的にギルド職員とは温厚な人物なのである。
この話以前の内容含め加筆修正を行いつつ執筆している次第です(現時点で細かい矛盾や書き始めから変わった部分が多々あるため)




