29話 間抜けな盗賊
誤字・脱字未確認です。
「よく分かったよ」
彼等が言った最後の言葉。
それが彼等が何者かに依頼されたことを物語っていた。
「分かってくれればそれでいいんだ。早くこの縄を解いてくれないか?」
やっと解放される。男達は安堵のあまり緩んでいた。
身も心も。
「なんで解放しないといけないんだ?」
男達の言葉に返したのは意外にもカームであった。
無表情のカームが男達を見下す光景は様になっている。ここにいた誰もが彼のことを『普段のアレが無ければイケメンなのに』とつくづく思った。
それは兎も角、彼の言い分は尤もだ。俺らはあいつらを解放するつもりは無い。
「おい、巫山戯るな!何もしてないのに縛り付けて放置するとか、あんたらの方がよっぽど悪人だろう!」
「…………」
後方で誰かが笑っている声がした。恐らく話せば話すほど自らの首を絞めている光景があまりにも可笑しいからだろう。気づいているのはニコルとカーム、多分ユリも。笑う声が男のものだからしてカームだろうが。
「あんたらさ、自分がどれだけ間抜けな回答してるか分かってんのかい?」
ニコルが聞いてられないとばかりに呆れ顔で割って入ってきた。男は間抜けの意味がわからないのか一瞬ポカンとした後、赤くなって怒鳴り出した。
「間抜けだとぉう?キマサァ俺を侮辱するつもりかぁ!」
侮辱してますが何か?と言わんばかりの彼女の表情に彼は噴火したかの如く支離滅裂なことを言って彼女に襲いかかろうとするが、両手両足を縛られた彼に立ち上がることなど出来るはずもなく、前向きに倒れるだけに終わった。
「黙れ猿……猿に失礼か」
ユリが1人呟いたが、怒り狂っている彼らの耳に届くことは無く、隣に立っていたアリアが不思議そうな顔をして終わっていた。
「あんたらに分かるように言うとだな、今回の襲撃はあんたらが自分らで計画し、行動した」
「あぁそうだよ!何度も言ってんだろうかカス!」
俺の言葉を途中で切って暴言を吐く男達に苛立ちを感じながらも続ける。
「俺達が受けた以来のパーティー護衛だが、受ける時受付嬢はこう言っていたんだよ。
『秘密裏に行われるパーティーとの事なので、親しい人にも他言はダメですよ』
……この意味わかるよな?」
これが真実なら、知っているのは貴族、王族、または大きな勢力を所持する商人等といった者だけのはずだ。今回の件を自分たちが起こしたというのであれば、少なくとも情報をこいつらに教えた権力者がいるはずだ。
「たまたま耳に入ったんだよ!貴族が多く通るってな!」
「なあ、あんたさ、貴族貴族ってさっきからそればっか。それにアンタらはここを通る豪華な馬車は貴族が乗ってるって言ったが、王族や商人だって通るぜ?」
クロムが鋭い指摘。ニコルはその異様な光景に驚いていた。珍しく口で活躍する彼の姿はそれだけ異質だという事だ。
「あんたらさ、貴族から教えて貰ったんだろ?そう言えばあんたらとの会話で――」
「がフッ」
突然、一人の男が倒れた。口からは泡を吹いていて、血の気がないその顔から、彼の命は既にないとその場にいる全員が確信する。
突然の出来事に俺は話すのをやめた。
「あがっ」
「おげえぇぇぇ」
立て続けに苦しみ出したり、急に吐き出したりする男達に誰もが戸惑いを隠せなかった。
意味がわからない。
俺の脳内はこの言葉に支配されたようで、ろくな思考が出来そうにない。つまり俺はパニック状態だという事だ。
「は、早く応急処置をっ!」
アリアの言葉に全員が我に返る。が、3人の息を吹き返すことはできなかった。
□□□
「リーダー、作戦は失敗に終わりました。リーダーの言う通りあいつらは使えませんでしたね」
監視に行っていた男が『リーダー』と呼ばれた男を見上げる。そこにはいつもの彼の姿があった。
彼は実像を持ているのか、いないのか定かではない存在であった。
いや、認識できないのだから存在自体あるのかどうかはわからない。彼がそう存在がそこにあると認識している。虚像すら本当はないのかもしれない。
だが、彼らにとってその存在は絶対だった。存在するか自体疑わしいものをそのように考えるのはおかしく感じなくもないが、そう思って行動した奴は誰一人生きていない。ここまで考えれば、存在の有無を確認する気などなくなるも当然。現に彼の部下にそのようなことを考えるものは誰一人としていない。
「失敗……?」
男の不機嫌な声に体中に鳥肌が立ち、汗がどっと吹き出るのを感じた。
死との錯覚。
まるで自分が死んだかのように思ったが、それは一瞬の出来事で自分が生きていることを思い出させる。
リーダーのスキルにどのようなものがあるのか。男は身震いした。
この男が味方でよかった、と。
「失敗などしとらんよ。順調だ」
男は黒い右手を伸ばして深い、深い谷に差し込む一条の光を隠す。彼の手が雲を動かしたのか、最後の光をも絶たれたこの場は暗闇に染った。
「順調に進んでいるのだよ」
彼はそう言って笑うと、雨が降り始めた。不思議なことに雨が降るのはこの谷だけのようで上を見あげれば小鳥が空高くを飛んでいる姿がある。
本当に彼は一体何者なのだろうか。そこにいる誰もが思ったことだが、誰一人口を開くことはなかった。
あまり書けていないこの頃。そろそろ書き始めるか……




