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Persona breaker -仮面を壊す者-  作者: アリシア
2章 マルクト王国
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27話 依頼

ひと月に複数話投稿とは何時ぶりだろうか。

「それでは依頼内容の確認です。オーディ=マルクト=イリアーナ公爵様からのマルクト王国までの護衛任務。この依頼ですが、秘密裏に行われるパーティーとの事なので、親しい人にも他言はダメですよ?どうやら王国の方で重要な会議をするとかなんとか……っと、それはいいとして」


コホン。と軽く咳払いして、話を戻す。


「定員は7名、クロムさん、ニコルさんの御二方を引受人の代表としてその他の冒険者5人はギルド依頼として提出ということでよろしいでしょうか?」


指名依頼とは言うものの、依頼に見合った人数を指名された冒険者の方で確保するのは非常に難しいとされてくる。報酬の分け前をどうするか等々……。兎に角揉め事だけ多くなるため、報酬分はギルドで適正金額を指定するという体制になっている。勿論その金銭は引受人代表――今回の場合でいうクロム達が支払うこととなる。


「いえ、今回は4人は固定でお願いします」

「分かりました。固定は4人ですね――えっ?」


流れ作業の一環として用紙に記入していた受付嬢の手が止まり、驚いたと言わんばかりに彼女はクロムを凝視した。

しかし、クロム達が4人で依頼を受けるのか……正直このおっさんに共に依頼を受けてくれるような相手がいるなど思わなかった。いや、ニコル繋がりなら有り得るか?と失礼極まりないことを思ったが口にはしない。


「俺とニコル、……それとこいつらだ」


そう言ってこちらを指さすクロムは何故かドヤ顔だった。


「え?私たち?」


ユリが自分自身を指さしてそう言うと、クロムは自信満々といった感じで頷いた。



□□□



「すいませんっ、遅れましたぁ!」


幼い少女がそう言いこちらに走ってきている。

そんな彼女の姿を見て「これで全員揃ったな」とクロムが今回の護衛依頼に集まった冒険者に説明を始めた。


今回の以来はマルクト王国の王族分家オーディ=マルクト=イリアーナ公爵家の護衛依頼である。

オーディ公爵は隣国(とは言っても最低片道2日はかかる)のイェソド共和国の親善大使として1年前まで活躍していた、マルクト王国とイェソド共和国で知らないものはいないと言われている人間だ。

親善大使着任直前の彼を知っている者は『あいつは仕事が終われば必ずマルクトに帰ってくる』と口を揃えて言っていたそうだが、イェソド共和国の『自由』『平等』の体制を気に入り、1年経った今でも親善大使として継続任務に当たっているーー実際のところはマルクト王国に戻らずにイェソド共和国に永住を決めている。現に彼は元婚約者とは破局し、イェソド共和国で出会った女性と結婚をしている。


「あの貴族を捨てた男と会えるなんて光栄だぜ」


クロムが嬉しそうにそう言った。

彼はその行動から「貴族を捨てた男」として有名となっており、『平等社会の代表者』や、『時代を変える男』など好き勝手に呼ばれている。彼はそのようなことを考えてはいないし、するつもりも無い。と公言しているが、その話を妄信し、狂信者となった者が数多く、それが事実であると勘違いしている者も多い。


「その名で呼ぶのは辞めてくれと言っているだろ。――久しいなクロム」

「「…………は?」」


驚きの声が見事に被ったのは俺とニコルだった。

あのような男にこんな高貴な身分の知り合いがいた……だとっ!?と彼女は驚愕を隠しきれずにいるようだ。俺もだが。

と言うか以来聞いていた時にいかにも知らない人みたいな感じだったはずなのだが……忘れていたんだろうか。


「オーディ、お前変わってないな」

「お前達はだいぶ変わったな」

「そりゃあ俺達ももう三十は―――――!?」


クロムは会話の途中で突拍子のない奇声のような声を発し悶絶し始める。彼の隣に立っていたニコルの足が彼の急所目がけて振り上げられたようだ。うずくまっている彼がその場所を抑えて悶絶しているのが何よりの証拠だ。


「淑女の年齢をばらすなど万死に値する」


クロムを見下すその視線に『淑女』の“しゅ”の字さえ入っていない気がするが、彼女が言うことは正論だと俺は思った。

公爵の顔には懐かしい記憶を見ているような、遠いところを慈しむかのように見ているようだ。

どうやら本当に知り合いのようだ。


「さて――皆様、この度は私オーディ=マルクト=イリアーナの護衛依頼を受注下さり誠にありがとうございます。この通り護衛任務リーダーのクロム氏とは旧知の中でございまして。私と致しましてはクロム氏の奥様を初めとしたほかの冒険者様型とも是非とも仲良くなりたいと思っております故、休憩中などお声かけさせていただきますがその際は暖かいお返事頂けると大変嬉しく思います――それでは数日の長旅となりますでしょうが、よろしくお願い致します」


ぺこり。と彼が頭を下げると、大きな拍手がその場を盛り上げた。



□□□



「例の計画、失敗の可能性はないのだろうな?」


薄暗い森の中で深緑のローブで身を隠した男たちの声。このような場所で話している者だ。内容は他人に聞かれてはいけないような最重要の秘匿案件なのだろう。もしそうでないのなら、このような『いつ攻撃され、命を落とすかもわからない森林に足を踏み入れ、立ち止まって話し始めるなどよっぽどなバカであろう。

しかし、彼らの道中の身のこなしを見た冒険者であれば彼らが熟練の暗殺者≪アサシン≫であることを察するのは容易いであろう。

そしてアサシンが集う集会場。それこそが森林だということは少し外部事情に詳しい者ならば、冒険者や商人のように外に出て他国の同業と話さなくとも風の噂によっていずれ知ることになる—それほどまでに有名なこと。


「ええ、現在2名ほどが後を付いておりますが気付かれていないとの事です」


相手の立場が上なのか、敬語で話す若者の言葉に男は思案した。

今回はあの男が同行すると聞いた。彼には前回の村の襲撃でも邪魔をされている。彼なら尾行に気づかないはずがない。気づかれていないのではない。気づいていないふりをしているとしたら……


「おい、その2人をここに戻せ。今すぐだ」

「なぜですかっ!?……確かにリーダーに確認もせず命令したのは問題かもしれませんがっ!」


若者の言葉に男は「そういうことではない」と溜息を吐いた。その反応に不満を顔に出す若者にこいつはまだまだ未熟だなとまたもや溜息。


「いいか、」


男はそう言い若者に鋭い視線を向ける。その視線に怯える若者の姿は蛇に睨まれた蛙そのものであった。

蛙なら食われて終いだから良かったのにな。彼はそう思い――


「もうお前に失敗は許されない。……もし失敗したら、分かっているだろうな?」

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