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Persona breaker -仮面を壊す者-  作者: アリシア
プロローグ
3/37

Prologue 3

 俺たちは、何故、自分達がここにいて、どうすればいいのかを聞かされていた。今までの説明を要約すると、俺たちはあのニンニクの塊に召喚されたらしい。あ、間違えた。キンニクの塊だった。ニンニクの塊ってなんだよ。臭そうだな。

 まあ、ここに関してはテンプレなんて素晴らしいものは存在しなかった。美しき姫が召喚するなんて理想でしかない。


 この屈強な男たちがどうやって召喚したのかはさておき、俺たちが召喚されたのには理由があるらしい。

 この世界“デウサルボル”には、大きく分けて、二つの大陸があるらしく、片方を人族と獣人、エルフ等の多種族が、もう片方は何の種族も住んでいないらしい。一年に数回、その大陸から大量の魔物がこちら側の大陸に侵入してくる。それが最近は、モンスター数、回数共に多くなっており、魔王の復活が近いのではないかと考えられているとのことらしい。


 で、俺たちはその魔王の討伐の為に呼ばれた。

 魔王討伐は来たときから薄々気づいていたので、驚きもしない。

 実を言うと、俺がクリアしたゲームのパッケージに似たような説明が書かれていた。


 ついでにもう一つ言うが、二つの大陸の形はそっくりらしい。


「皆さん。理解しきれない部分があるとは思いますが、「国王様のお通りだ!」」


 Oh…。見事に声が書き消されましたな。


「お前ら、頭が高い!控えろ!」


 俺はその声の通り、その場で騎士がとっているポーズの真似をする。そこでふと横を見る。………誰もいない。さっきまで、俺以外のみんながいたはずなのだが……。


「ちょっと!そこのあんた!早く頭下げなさいよ!ちょっとなに無視してんのよ!あんたよあんた!あ・ん・たっ!」

「美久。もう少し静かにしろ」

「だってこいつが………」

「このアホに日本語が通じるわけないだろ」

「あっ、そうだよね♡」


 竜彦の彼女、美久がそう言ってきた。……お前ら。時代劇の見すぎだ。こいつらは正座から両手を前に置いて、背を縮める。俗にいう、「土下座」と呼ばれるポーズだ。


 あの世界、地球での常識が、この世界の常識とは限らない。長年、召喚や転移、転生モノを好んで読んできた俺には、この事の重要性がよく分かっている。そして、こいつらにもう一言。


(いい加減、回りを見ろよ………)


「まあ!……勇者様、何か悪いことしたのかしら……」

「おい、あれ見ろよ(コソコソコソ……)」


 回りの貴族やら、騎士やらがこんなことを言っている。この事を言うべきなのだろうが、俺は今のこの状況を楽しんでいる。あの、うざったらしい竜彦共が、俺にあれだけの仕打ちをしてきたあいつらが土下座をしているのだ。自分に向かってしているように見えなくもなく、俺は優越感に浸かることができるのだから放置以外の選択肢などない。


 俺が皆の土下座を見下していると、目があった。誰かと思ったが、華凛だ。彼女は俺の事を不思議そうに見上げていた。つまりは彼女も土下座をしている。


(こいつには借りがあるしな……)


 中学時代に借りた借りを今返すことにする。

 それに過去のこととはいえ付き合い、愛を語り合った仲だ。こいつが恥をかくのは心苦しい。

 俺は彼女の腕を強く引っ張って立たせた。驚いた顔をしてこちらを見ているのは分かるが、俺はその顔をきちんと見ることはできなかった。


「おお!お主らが勇者殿か!」


 ちょうど、彼女をたたせ終えたあと、そこに一人の男が入ってきた。外見は50代、髪は既に白くなっており、濁った色の白髭が顎から生えている。

 彼の醸し出すオーラは、威圧が凄まじく、つい数歩後ずさってしまう。服も赤と金色を貴重としたもので、よくマンがなどで王様が着ているような服だった。


「しかし、今回は二人か……。弱ったの…」


 王様が言う二人とは、当然、俺と華凛のことである。つまり、王様には、下に跪ひざまずいて、土下座をしている計38名の勇者様様が目に入っていない。


「王様、下を見てください」


 俺がそう言い、視線をリードする。王様は俺の視線を追って、ようやく勇者38名に気づいた。

 王は数秒思案したが何も心当たりがないとばかりに口を開いた。


「この者達は何をしでかしたのだ?」

「いえ、これは私たちの世界の『頭を控えろ』なんですよ」

「ふむふむ。そうかそうか。勇者殿、頭を上げたまえ」


 王様がそう言うと、俺たちは顔を上げて、他の奴等は立ち上がる。竜彦や美久の顔は恥辱のあまり赤くなっていた。いいザマだ。


「ありがと。友樹……」


 華凛がそう呟いて俯いていたが、俺は聞かなかったことにしておく。そこに一人の騎士が来て俺達に挨拶をしてくる。


「それでは皆様、これから勇者様に説明をするのに、ここは相応しくありません。なので、少し歩いた先にある大広間を使います。案内は(わたくし)、騎士団長、リドル・グリムロードがさせていただきます」


 そう言って、騎士団長こと、リドルさんが会釈する。その光景があまりにも、自分達には似合わないものに見えてしまった為に、俺たちもついついお辞儀してしまう。


 広い廊下を歩き続けていると、やがて緊張が切れたのか、回りが煩うるさくなっていく。声はそこまで大きくはないのだが、煩わずらわしい。黙ってほしいものだ。


「ほへー。大きいなー」


 華凛も回りを見てはしゃいでいる。女子高生でも、やっぱり女の子なんだなと、思い知った。だって、騒いでいるのは女子限定なんですもん。理由は単純で、『お姫様』に憧れている自分が、心のなかに残っているからだ。

 現代日本に準和風の家や、洋風の家が増えてきているのは、女性の心理が原因なのではないかと思うほど、女性はお姫様に憧れるからな。女の子が仮想のお城でお姫様ごっこをするようなもので、女性は洋風の家を買っているのではないのだろうか?


 俺にとって、『女性はどうこう』とかどうでもいい。それよりも気になることが1つある。それは、


「なんか足りないんだよな……」


 何が足りないのか。と言われれば、分からない。と答えるしかない。

 思えば俺の記憶にも違和感がある。

 彼女と別れたあの日、俺を励ました奴がいた。……いたのは覚えている。だがその励ましのセリフや声はおろか、名前と顔すら思い出せない。それに、仲が良かった奴がもう一人いた気がする。そいつはお宅のデブでいつもアイドルみたいな衣装を着たキャラクターが戦うアニメキャラを推していた。それは覚えているのにそいつの名前、顔、声が一向に思い出せない。

 まるで記憶に靄がかかったかのような感覚。今まで気にもしなかったのだが、彼はここにいるはずなのだ。学校に在籍していたが休んでいるだけなのか、そもそもいなかったのか分からないが、俺と、華凛、水緒、それともう2人でよくつるんでいた気がする。

 そこは先程まで俺たちがいたあの学校の中。記憶の中の俺は普通に登校し、勉強し、5人で帰宅、ゲーセンや映画館、ショッピングモールなんかも行った。


「うっ」


 突然頭を抑えて顔を歪ませる水緒。

 心配するかのように周囲の者たちが群がるが、彼女は大丈夫。心配かけてごめんねと言ってすぐに立ち上がった。

 その姿を見て華凛は彼女を心配する……のでは無く、涙を流していた。


 その姿があの時の彼女を思い出させる。



『トモキは悪くないよ。悪いのは……私』

『急に転校なんて言ってごめんなさい。……でも、言ったら関係がギクシャクしてたでしょ?私はそんなの嫌だ。せめてあなたの彼女でいるうちはあなたが悲しむ姿を見たくなんてない』

 彼女はそう言って今のように泣いていた。



 あの事がきっかけで、今でも彼氏が作れないんじゃないか?とか心配はしているが、杞憂であってほしい。性別構わず、人間は失敗したことに恐れを抱くものだ。またこんな風になったらどうしよう……。とか思う人は何かしらの原因があるのだから。


 今でも俺は華凜のことが好きだが、彼女はどうなのだろうか?しかし、1度別れを告げたのが俺である以上、話しかけることがしづらいし、そんな話を持ち上げられるほどの勇気が今の俺にあるわけない。


 あれ?しかし、よくよく考えてみれば、彼女は四年間の年月を俺のいない生活を送っていたのだ。青春していてもおかしくはないではないか。何故、俺に依存しているのを前提で話している。


(この女……まさかもうヤったのか!?青春していたのか?青春していたのか!?)


「私、まだヤッなんかないもん!」


 華凜は俺の心を読むのが得意だ。実はストーカーなんじゃないのか?とか思うほど、それはもう当てまくる。コンマ1のずれすら出さず、俺の思った数字を当てることも、彼女は何の苦労もなくやって見せるだろう。自分で思い出してなんだが、怖い怖い。


「こ、怖くないもんっ!」

「いや、それ決めるのは「怖くないもんっ!」いや、でも「怖くないもんっ!!!」……はい」


 謎の威圧に負けた俺は黙りこむ。もともと、俺が失礼な事を言ったのが悪いのであって、彼女はなにも悪くない。しかし、健全な女子生徒がヤるなんて言葉を使ってはいけないと思うんだ。いや、冗談じゃなく、本当に。


「でもさ、何で華凜がここにいるんだ?」


 少し話題を変えるために、俺は言った。だが、それだけではない。もともと気になっていたことも理由に入る。

 そう。俺と華凜は学校が違うはずだ。だって、彼女は私立のお嬢様中学までとはいかないが、それなりの学校に行っていた。ならば、高校もそれなりの学校にいっているはずなのだ。つまり、この学校にいる意味が分からない。あり得るとすれば中学卒業と同時にこちらに戻ってきたということが有力説なのだが、なぜ戻ってきたのかが分からない。


(転校でもしてきたのだろうか?では何のために?)


 自問自答をするが、これは時間の無駄。即ち、意味のない行為。

 彼女に聞くとこすらできず、その話は有耶無耶になった。

早く次の話を投稿したいのですが、できているのは原稿のみ……それもノルマの文字数を越えていない。次話は何時になるか分かりません。すみません。


2016:8:28 一部の編集を行いました。

2025/1/4 一部言い回しの変更・改筆、増筆しました。

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