23話 マルクト
久しぶりの投稿。
リアル多忙のため定期は厳しいです。
引き続き不定期更新となりますが宜しく御願い致します。<(_ _)>
7色に彩られた国マルクト王国。
ケテル王国の姉妹国としてデウサルボルで起こる災厄の対策を積極的に行い、他国同士での連携を呼びかけている。お蔭で最近はどの国でも災厄が起きた際の復興費などの出し合いや、戦力の貸し借りなどをするようになった。
最近召喚された勇者3人は姉妹国へと行っているらしく、先週の災厄が起きた時に手薄となった防衛を埋めるのが大変であったという話だ。なんのために召喚したのか。という国民たちに国王が言った言葉は私達が人間であるように、彼らもまた人間なのだ。道具ではないのだからそのような言い方は慎みなさい。とのこと。
多くの国民から支持されているマルクト国王ではあるものの、今回の発言には批判の声が多かったようで、所々でそれに関する集会が執り行われている。
「おい、お前もそう思うだろう?」
腰に鉈を下げている男が話しかけてきた。何がそう思うだろう?なのかは聞いていないが大体は分かる。
「国王を暗殺したらこの国は混乱するぞ」
中世ヨーロッパで起きていたこととさほど変わらない出来事。国王に不満を持ったものが現国王を殺害し、ほかの政治スタイルへと転換する。
しかしこれらを行った歴史に、安定した事実はない。
政治体制には必ず節穴が存在し、それを突かれてまた滅ぶ。
「暗殺なんかあの警備体制じゃできねえよ……」
「…………だろうな」
俺はふと一月ほど前までいた王城の内部を思い出す。ここの城も同じ作りかはさておき、とても侵入して王の背中を狙うなど不可能に近い。王の隣には必ず従者がいる。そして王を守る親衛隊たちだ。彼等から身を隠して王を狙うとすれば……。
「弓でも使ってみたらどうだ?」
「……俺が使えると思うか?」
困り顔で腰の鉈を指さす。この男は俗に言う『賊』である。
鉈を使う冒険者は基本的にいない。彼等は国の目から身を潜め物品を掻っ攫う部類の人間だ。
一般的に賊にいる者は冒険者で失敗した者達だと考えられている。弓を扱える冒険者は少なく、ギルドが後支援をしてくれるため、失敗した者がほとんどいない。
そのため基本的に賊は近距離集団とされているのだ。
「頑張って使えるようになればいいだろ」
「……頑張ってなれるなら冒険者を続けてるさ」
だろうな。と俺は頷く。
弓を使う者の冒険者登録には実力を認められなければならない規約がある。そのため、近距離職で登録をして、経験を積んでから遠距離職に移るという人がほとんどだ。おそらく彼もそうしようとしていたのだろう。
「ユキ……やっと見つけた」
後から声が聞こえて振り返ると一人の少女が立っていた。膝が隠れるサイズのコートを着ていて、身長は140センチメートル程だ。両手でパンや肉が入った紙袋を両手で持っている。
「お前の連れか?」
「ああ。――ユリ、必要なものは揃ったか?」
俺の言葉に縦に頷くユリ。
「それにしても“ユキ”か……お前女じゃ……ないよな」
「お前にそう見えたのなら目がおかしいはずだ」
「見える訳ないだろ……」
だろうな。と俺は呟いてその場から離れた。
□□□
「ユキさん、お久しぶりです。戻ってきてたんですね!」
半月マルクト王国から離れていたため、不安になっていたのだろう。半泣きになって冒険者ギルドの受付嬢が話しかけてくる。
マルクト王国は災厄による被害が国の位置の関係上少ないため、冒険者は100人未満と非常に少ない。その上、上級の冒険者はほかの国へと旅立つため、強くてもAランクという状態だ。
ちなみにギルドランクはFからSSSまであり、ギルドに入って直ぐはFの次、Eランクになる。Fは未成年──15歳未満の冒険者が入る際に付けられるランクだ。
「すみません。実は南の端まで行っていて」
「もしかしてあの遺跡ですか?」
マルクト王国は最南付近に位置する国であり、国を囲む巨壁に登れば海が見えるらしい。
その王国よりも5キロほど南に行くと小さな遺跡がある。数千年前の遺産であり、当時の使用目的は礼拝ではないかと考古学者は推測している。
「ですが、あそこに行くだけなら半月もかからないと思うのですが、何かあったのですか?」
「いえ、恥ずかしながら迷ってしまいまして」
俺は嘘をついた。舗装された道を辿ればマルクト王国に着くことなんて簡単なのだ。迷子になるなどまずありえない。
「もう……遭難して亡くなった冒険者も少なからずいるのですからこれからは気をつけてくださいね!」
その嘘を信じた彼女は俺を本気で怒っているようだった。今後気をつけます。と俺は反省した振りをする。
「おいおい、新人。あんまり嬢に心配かけるなよ」
「そうだぞー。嬢ちゃん、ずっとお前のこと心配してたんだからよ」
「ユキさん……遅いわ……。どうしたのかしら」
ゴツイおじさんが受付嬢の真似をして茶化す。
彼女は赤面して怒っているようで、それをおじさんが受け流す。その光景を見て冒険者たちは笑っている。
全くもう。と受付嬢は言うが、顔は微笑んでいた。
「ユキ、お前遺跡に行ったんだっけか?何かあったか?」
「特にこれといったものはなかったですね」
「ま、そりゃそうだろうよ。国が10数年前に調べに行ってるんだから金目のものは根こそぎ持っていかれてるだろうよ」
実際のところ、表面上の金目のものは全て持っていかれていた。俺の狙いのものも無かったし、完全に無駄足だった。
「そういりゃ遺跡で思い出したが、ケテル王国の方で魔族が襲撃してきたんだっけ?」
「ああ、確か村人に死傷者が出たとか。ひと月くらい前だったけか?」
正確には遺跡に出た魔族が勇者を襲ったというものなのだが、長い道を通ってきた情報はあちこちで内容が他のものと混じってしまったようで、真実とはかけ離れたものになってしまうようだ。
「さて、俺たちは久しぶりの街巡りでもするか。ユリ、行くぞ」
「うん。ユキについていく」
ギルドを出たあと、俺達は近くの商店街を歩く。
焼き鳥みたいな食べ物や、魚の干物、生魚などが売っている。
生魚は焼いて食べるのが普通であり、生で食した場合はもれなく食中毒が付いてくる。
保存状態の関係上、衛生的に危険なのだ
買った焼き鳥もどきを歩き食いしながら街を見る
「ユキ、あれなに?」
俺の服の裾を引っ張り、ユリが言う。
彼女の指差す先には雲があった。
「雲のことか?」
「くも?」
雲のことであっていたようなので説明を始める。
「水蒸気が上昇気流によって…」
「水蒸……鬼?……じょうしょうき……龍?」
ここまで言って彼女が首をかしげたので説明の仕方を変える。
「温かいお湯は湯気が出るだろ?」
「うん」
「それがいっぱい集まって出来たものだ」
実際は違うのだが、彼女に説明するには難しいようなので、彼女が想像しやすいように言葉を変えて説明すると、彼女は納得したのか、うんうんと頷いていた。何度も首を立てに振るので、本当はわかっていないのではないのだろうか。
「雲は水の集まり?雨降るのはそのせい?」
「……まあ、そんなところだ」
いい加減な気がするが、彼女が大きくなってから本当のことを教えてやればいい。
□□□
「この国ともそろそろお別れしないとな」
「え?」
早く次に行かなくてはあいつらがここに来てしまう。
俺が恐れていることは、あいつらと出遭うことだ。
俺の正体がバレてしまうかもしれない。それは今はまだ早いのだ。
「次はどこに行くの?」
「そうだな……」
無計画だとは言えなかった。いずれにせよ全ての国へと寄らなければならないのだ。あの事が本当かどうか知るためにはそうするしかない。
「……行くぞ。ユリ」
「分かったよ。ユキ」
2人して名前を呼びあう。最初は恥ずかしかったがもう慣れた。これも俺を隠すためには必要なことなのだ。
というわけで2章に突入です。
これからどうなるんですかね(他人事)




