18話 他国からの客人
「勇者様方、ご機嫌よう」
話しかけてきたのはケテル王の隣にいた美女のうちの1人が話しかけてきた。
上位階級を思わせる優雅な仕草の一つ一つに たじろぐ俺らであったが、視線は彼女達2人から離れないでいた。
「私は、ユリカ・ケテル・エヘイエーですわ」
「私は、キャティア・ケテル・エヘイエーと申します」
2人は洗練された一つ一つの行動に俺達は完全に圧倒されていた。
白いドレスを身に纏った2人の美女は、貴族──否、王族としての振る舞いをした。これはつまり、一国の代表としての自己紹介だ。
本来なら国王である、プセウド王が挨拶をするのだろうが、先程から多くの老人に話しかけられ、引っ張りだこ状態だ。代わりに彼女達を送ったと考えるべきだろう。
「これはご丁寧にありがとうございます。私は岡部一佳と申します。以後お見知りおきを」
執事のように恭しく自己紹介をする岡部。
俺達は名前だけ告げた。
ウェイトレスが青いグラスを配っていたため、その飲み物を貰った。
中には透明の飲み物が入っている。
「それでは勇者様方、パーティーをお楽しみくださいませ」
岡部を除いて誰1人口を開くことが出来なかった。それほどまでに彼女達の出す『王族』としての威厳は強く、輝いていた。
「ね、ねえ、私達もあちらに行こう?」
明奈の言葉にただ頷き、俺達は夕食を摂るためにバイキング料理のあるテーブルへと向かった。
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「なにこれほんとに美味し〜」
「ねっ、ねっ!そうでしょ!華凛ももっと食べなさいよ!タダなのよ、タダ!」
卓に並ぶ数々の料理に舌鼓をうつ。どうやら明奈が華凛や水緒に食事を勧めているようで、彼女達も楽しく食えているようだ。
「非常に美味ですね。これはスープでしょうか?スパイスが効いているのでしょうか、とても美味しいです。……しかし異世界においてスパイス──胡椒のようなものはとても高価と聞きますが……」
岡部は1人で食レポをしている。はっきりいって変人。周りを歩く足が彼を避けている。
「マルクト王国の方がいらしました。マルクト国王様がご入場なさいます」
どこからか声が聞こえる。恐らく『範囲魔法術』の応用だろう。
『範囲魔法術』。俺も詳しくは知らないが、『想像魔法』や、『範囲攻撃魔法』、『範囲伝達魔法』などがあり、広範囲に魔力を飛ばし、それを使って行う魔法の一種らしい。
「あえ、わはひはひっへへいえいほはひはほうあいいお?」
「………………は?」
華凛がなにか喋った。が、何を言ったのか全く分からない。
口いっぱいにスパゲッティ見ないなものを入れて喋るから、こんなのが勇者とはみっともない。
彼女は咀嚼を繰り替えり、喉をごくんと鳴らすと──
「はむっ」
再び口に含んだ。
「いや、話せよ」
「はひは?」
恐らく「なにが?」と言ったのだろう。首をかしげてモグモグモグモグ。
「何言ってんのか分かんないんだけど」
「ひょっほまっへへ」
そう言うと咀嚼を繰り返し喉を鳴らす。今度は再び口にものを運ばなかった。
「ちょっと待ってて」
「それじゃない」
「なにが」
「いや、だから……ああ、そういうことか。それの一つ前だな」
「え〜と……あれ、私たちって敬礼した方がいいの?」
なる程。そう言っていたのか。
そういえばここに初めてきた時は国王に敬礼のようなポーズをしたな。敬礼ではないが。どちらかといえば執事がやってそうなポーズだと思う。
「それは大丈夫ですよ。今回のパーティーの席であの姿を見せるのは帰って失礼ですから。ここへは対等な立場でお話したいと思われていらっしゃるでしょうし……」
ふと後ろから声をかけられた。
そういうものなのだろうか。相手側が不利な状態なら寧ろ後期だろうと思うのだが。
いや、だからこそ分かりやすい行為は『相手を馬鹿にする』事と捉えられ、かえって失礼なのか。
「分かりました……リドルさん、ご忠告ありがとうございました」
相手が誰なのか確認していなかった。
後ろを振り向くと青いタキシードを着たリドルさんが立っていた。こうして見ると美形で落ち着きのある彼はどこかの王族のようだ。…………騎士だけど。
「いえ、気にしないでください。それでは友樹様、華凛様、明奈様、水緒様、今宵のパーティー、お楽しみください」
彼はそう言うと国王の方へテキパキと歩いていった。
「うっわぁ……洗練された動き……さすが騎士長ね。彼氏君もあんな感じのデキる男にならないとモテないわよ〜」
明奈。それは余計なお世話だ。
「うーん……私としてはあんまり完璧になって欲しくないなぁ」
華凛がそう呟いた。本人は思ったことを口に出してしまったことに気づいていないようだが、それを聞いた明奈と水緒は驚いた顔をしている。
「……な、なんで?完璧な彼氏とか憧れないの?」
水緒がそう言うと、華凛は「あれ?口に出してた?」とばかりに首を傾げる。
「あ、分かったぁ。華凛ってば彼氏くんが完璧超人になっちゃったらお世話できないじゃんって焦ってるんでしょ〜」
「……お世話って俺はペットかよ」
俺がジト目で明奈を見ると彼女はケラケラと気楽に笑う。
俺はため息を吐くと周りを見渡した。
「……あんな奴クラスにいたか?」
勇者らしき若者のうち、見た記憶のない奴が何人かいる。
どうやら見知らぬ勇者は4人で固まって食事をしているようだ。
「んー?あ、れ、誰?」
明奈もそれが誰なのかわからないようでそいつらを指さして言った。
そんな彼女の行動が目立ったのか、付近を歩いていたウェイトレスが近づいてきて耳元で小声で話してきた。
「あの方はマルクト王国からのお客様です」
「……勇者ではないのですか?」
「…………それは我々には分かりかねます」
彼は知っているが、言うことが許されていないのだろう。
彼ら本人なら聞き出せるかもしれない。
俺達は“マルクト王国の客人”へと近づいた。
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「こんばんは」
俺はそう言った。本来この場では「こんにちは」や「こんばんは」は不適切なワードだ。「お初にお目にかかります」などと言うべきなのだが、ここで俺はどうしても調べておきたいことがあったためこのようにいうしかなかったのだ。
「こ、こんばんは……ですっ」
4人のうちの1人の少女が緊張した表情でそう言う。
俺は彼女達を見た。
一人目は緊張した表情で俺を凝視している少女。容姿を見る限り日本でいう中学生くらいだろうか。ボブカットの黒髪に造花のついたカチューシャがつけてある。
白のドレスに合わせてか、百合の造花だ。
二人目は何故か俺を睨んでいる青年。年齢は俺たちと同じくらいに見える。ミディアムの長さの黒髪で、右側が少し長く右目を隠している。
黒いタキシードが彼の威圧を強くする。
三人目は水緒を驚いた顔で見ている少女。歳は見た限り一人目と同じくらいだろう。
四人目は30代前半の太ったおっさん。彼のシャツには『☆I Love ゆいたん☆』の文字が入っている。確か有名なアニメだか、アイドルだかにそれらしい人がいた気がする。アニオタかドルオタなのだろう。
「う〜ん……萌えないねぇ……」
オタクが華凛と水緒、明奈を見てそんなことを言い出す。
やっぱり女の子は2次元に限るね。と話を振ってきたので無視した。いや、少しは分かるのだが、同類にされるのは嫌だ。
「……無視ですかー。まあいいや。僕の名前は竹山徹よろしくね」
「えと……よろしくお願いします?」
握手に答えたのは華凛であった。
「ふう……さて、冗談はここまでとして、だ。この世界のこと、どこまで知ってる?」
オタク、竹山さんは表情を一変。真面目な話を切り出してきた。




