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Persona breaker -仮面を壊す者-  作者: アリシア
1章 ケテル王国
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17話 帰国

目が醒めて、ただ何もせず無心になっている。

単に眠くて頭が使い物にならないだけだが。


夢で何を見ていたのかは、はっきりと覚えている。俺はまたあの女と会話をした。

内容は覚えているようだが、俺にはどうしても引っかかっている。


『貴方が必要ということ以外はね』


この言葉が意味する、俺は別に必要がない。だが巻き込まれた訳ではない。ではなぜ俺はここにいる。

俺の思考は深々と根を生やし、細部の情報を繋ぎ合わせようと試みている。それほど集中しているのだ。周りの音など聞こえようがない。


突然視界が大きく揺れた。脳がぐわんと世界が歪む。

集中力が一気に途切れ、俺は考えるのを中断する。横を見ると見慣れた華凛の顔があった。しかしその表情は怒っているようにも見える。


「友樹、無視しないでっ!」

「あ、ああ。悪い悪い。悪気は、ない」


俺は心がこもっていない、適当な単語を淡々と並べた。

それが分かっているのだろう。彼女の貌は不満を増して、般若になっていた。


「で、何かあったのか?」

「ふんっ」


俺は聞いたがそっぽを向いて答えなかった。ほかの奴らが何も言わないのを見る限り、そこまで重要なことではなかったのかもしれない。と、再び思考を巡らす。

俺は必要とされないのに呼ばれたことになる。その理由は何なのか。俺にはこの世界に来なければならなかった『理由』があるはずなのだ。矛盾していた彼女の言葉を成立させるにはそうする以外考えられない。


「あのさ、何考えているのか分からないけどさ、そんな難しいことなの?」


怒っている華凛を宥めながら水緒が話しかけてきた。


「まあ、難しいというか……情報が少ないと言うべきかな?」


俺は重要な内容をわざと伏せて言った。彼女は勘がいいため、執拗に聞いてくることはないと思ったためだ。どうせこいつらに言ったところで解決するようなことではないし、笑い事にしておしまいなのは目に見えている。


「ふーん……それってさ、今考えないとまずいコトなの?」

「…………いや、別に今すぐ考える必要がある訳では無い。だけど、覚えているうちに考えないと忘れるだろ?」


水緒は納得いかない顔をした。


「そういうことじゃなくて……ごめんなさい。言い方がおかしかったかも。……今結論を出さないといけないことなの?考えることは今すぐしないと忘れるかもだけど、結論を急ぐ必要はないんじゃないのかな?」

「…………確かに」


思い返してみればそうだ。今すぐ結論を出さないといけないことはないのだ。なぜ、そんなに急いでいたのだろうか。


「まあ、結論を急ぐのはよくないと思うよ。間違った答えが出てしまったら、後々その虚偽の結論を引き摺ることになるかもだしさ」

「潜入観か……」

「そゆこと。兎に角さ、いますぐ「これはこうだ」って決めつけたりするのは良くないよ」


そうかもしれない。俺はそう思った。


「ああ、確かにそうかもしれない……」


俺は独り言のように呟いた。



□□□



「勇者様、お帰りになられましたか!」


一人の騎士がそう言うと、その近くにいた人全員がこっちに向かって深くお辞儀をしてきた。


「ようやくあの協定が結ばれるのか……」

「ああ、あの()()を待たせてしまったとプセウド王が言っていた」


()()()()と誰かが言った気がする。

誰かあの国に偉いやつが来ているのか。偉いと言ったら他の国の国王や貴族、ひょっとしたら魔王との不可侵協定かもしれない。兎に角、相手が不機嫌になるような言動はするな。


「協定……?」


岡部がそう呟いたのが聞こえた。彼は顎に手の甲を当てて『考えるポーズ』をとっている。何やら思考を巡らせているようだが、俺らにはそれほど重要な案件ではないと思う。いや、重要であるには変わらないのかもしれない。ただし考えたところでどうにか出来ることではないのだが。


「俺らに関係あるのか?この話……」

「関係あるかないかと言われればあるのではないかと思われます」


俺の小さな呟きに気づいた岡部が言った。何故そんなことが言えるのか。理由はなんなのか聞こうと声をかけ用としたところ彼はそれよりも早く口を開いた。


「先程どなたかが『ようやくあの協定が結ばれる』とおっしゃいました……それって我々がいなければできないものだ。とも受け取れますよね?」

「確かに……」


そう言われてみればその通りだ。もし俺達がいなくてもできるというならば、もう既に行われているはずだ。加えてその()()と呼ばれるような人が待たなければならないとなれば、俺たちなのだと証明できる。

恐らくは勇者との同盟だとか、協定の内容に俺達の同意が必要だとかそういうことだろう。


「勇者様、今回の遠征お疲れ様でした。お疲れかと思いますがこれから重要なお方との会談があるのですが、そちらに出席なさってくださいませんか 」

「出なくてはいけないものなんですよね?」


俺がそう問う。

お願いという形式で言ったリドルさんは困ったような顔で無理に微笑んできた。なぜ微笑んだかは知らない。


「……ええ。ご出席いただかなければ話は進みません」


一瞬躊躇ったが、諦めたのか口を開いた。秘密裏に行いたいことなのだろうか?


「……分かりました」


岡部は少し諦めたような顔をして言った。



□□□



会議室。

どうやらその名の部屋は城内に5つ程あるようで、1番内装にお金がかかっている部屋が『第1会議室』。一番豪華な部屋が『第2会議室』。一番広い部屋が『第3会議室』とのことだ。今回は人数が多いために第3会議室を使うらしい。

当然ながら、今回の協定の相手は広いだけの会議室にあった人物であるわけがない。しかし、第1会議室にこの40人が収まりきるとも考えられない。


「失礼致します。勇者様をお連れいたしました」


リドルさんはコンコンコンと、扉を3回叩いて入室した。どうやらノックの回数は日本と同じようだ。

因みに今いるのは第1パーティーこと俺達のみで、他の奴等は既にパーティーに出席しているらしい。


「失礼します」

「失礼致します」

「しっつれー」


水緒、岡部、華凛の順に入る。岡部の丁寧な口調を聞いて水緒がしまったという顔をした。恐らく「致す」をつけ忘れた事だろう。華凛にも是非見習って欲しいものだ。


「失礼致します」


俺も水緒達に続いて入っていく。

学校の体育館かそれ以上か……兎に角広い。構造上の問題か、規則正しく大きな柱が並んでおり、きめ細やかな彫刻が施されている。


「なあ、あの子誰だ?」


彼の指差す方向にはケテル国王の隣に立つ二人の女性がいた。二人の顔はなんとなく国王に似ている感じがする。


「おーい華凛華凛ー?」


変人眼鏡こと、明奈がこちらに近寄ってきた。流石にここで華凛と離れたら、ネタにされるだろう。それがわかっているのに離れるわけにも行かず、俺は困惑気味に彼女が来るのを待つ形になってしまった。


「それにしてもさ……相変わらずラブラブねー」


別に手を握っているわけでもないし、距離が近いとかでもない。それに、ニヤニヤしているのを見る限り単なるジョークだろう。


「明奈ちゃんおっひさー」


明奈の弄りに満更でもないと華凛は明るい声で挨拶をした。


「あ、うん。お久しぶり」


返答が思っていたのと違うものだったのか、作り笑いを演じて返答した。


「おい!この肉超ウメェぞ!」

「何言ってやがる!こっちのパンだってコンビニのパンとは大違いだぞ!」

「何このサラダ美味しい!」


勇者が揃って食事にはしゃいでいる。はっきりいって子供のような大人を見ているみたいでみっともない。


「それで、なんか進展あった?」

「は?」


俺に対して真剣な眼差しで話しかける。その珍しい光景に俺は空いた口が塞がらなかった。


『進展』……1週間で得たものといえば魔術の応用法、魔族との戦闘。()を名乗る謎の人物との遭遇……遠征は災厄前の俺らにとっては大きいものだった。それ以上に謎が深まっているのだが。


「俺は1レベル上げられた。まあ、色々と得られたものはあったな」

「……へっ?いや、私真面目な話してないんですけどー?」


明奈は呆れ半分と言った目で俺を見てくる。なぜ俺が呆れの視線を受けなければならないのか。

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