14話 地下での出来事
それから数時間俺はその部屋を探し続けたところ、本棚に隠れていた所謂、隠し扉を発見した。
中からは異臭を放っていて、とても入りたいとは思えない。
「......よし、入るか」
俺は覚悟を決めて入ることにした。
錆びた鉄製の扉がギギギギと悲鳴をあげた。
それと同時に異臭もキツくなっていった。鼻をつんざくような刺激臭に顔を顰めながら俺は扉を開ききった。
目の前の部屋は今いる部屋と違って、明かりが一つとしてなかった。これに関しては俺も想定外であった。まさか光がひとつもないとは思ってなかったのだ。
俺は乱反射して入ってきている微かな光を頼りに探索を進めた。燭台にロウソクらしきものが見えたので、それに火魔法を発動してみる。火がついた。案の定ロウソクだったようだ。
その後も、微かな灯火を頼りに次々、ロウソクに火をつけていく。
全てのロウソクに火をつけきった頃、俺はとある結論に至った。
どうやらここは、とある実験を行っていたみたいだ。その実験に必要なものは、
・人間
・変な薬品
・謎の紙
との事だ。
これによって出来ることは、
『人間改造』
である。
人間改造とは、人間に処理を行い、遺伝子を改造、必要に応じて臓器なども交換し作り上げた、人間とはよび難い別のものに作り変えることだ。
今回のそれは、悪魔に変える最中に失敗した死体である。
その中の一つの死体を俺は吸い込まれるように見ていた。
その死体は俺よりも年下な15歳くらいの少女であった。そして、何故この死体に目を引かれたか、そんなのははっきりとしていた。
この死体の顔がとある人物に似ていたのだ。
「イニヨル......さん?」
イニヨルさんにその死体は似ていたのだ。いや、そんなものではない。もはや瓜二つであったのだ。
「まさか、あの時の『俺』が言っていたのはこの少女のことだったのか?」
俺は手が悪魔のものとなって、悪魔の羽根が生えている少女を見て言った。とてもじゃないが、こんな状態では彼女を悪魔と断定するのは難しい。これは俺とあの時の『俺』は違う可能性で生きていたのかもしれない。
その可能性が、どこにあったのか、又はどこにあるのかは分からない。しかし、これも可能性の一つとして考える必要があるかもしれない。
少女が監禁されていた檻の中を物色していると、少女の名前らしきものが書かれたネームタグを見つけた。
これによると、リリス・グリムロード。そう書いてあった。
取り敢えず俺はそのへんをまた調べてみた。
カタッ
何かが落ちた音がした。
俺が自分の足元を見ると、そこには地球ではよく見たあれが置いてあった。
「スマ......ホ?」
それはスマホであった。黒い画面に、白いハードカバーがついているのが分かる。ちなみに俺とは機種からして違―――
「メーカーが......書いてない?」
それには、英語の天文単位も、某野球チームの名前も書いてなかった。だからといって、なにかのメーカー名が書いてあるわけでもない。
「なんだよこれ......」
俺は取り敢えず画面をつけてみた。
画面は普通についた。メモ帳とカメラとファイルは問題なく使えるが、通信電波がオフラインのため、ゲームを入れることはできなく、何かを調べることすらできなかった。
所謂、機内モードのスマホである。
しかし、これでもかなり使える。
カメラは、実像を映すことが出来るため、証拠として残せる。紙が貴重な世界であるデウサルボルでは、メモ帳ですら素晴らしい機能だ。
「あとは充電が減らないかだが......」
これにおいては調べるのに時間がかかるため、他の探索をその間にすることにした。
次はこの部屋から出て、本棚のあった所へと戻った。
誰かの書いた日記と、さっきのスマホ、魔族についての資料を手に取って、アイテムボックスへしまう。
訓練中に実験したところ、最大100キロぐらいのもので、
1000キロまでというのが大体の上限ということだ。
使い勝ってはいいが、モンスターをいれるとしたら、あっという間になくなってしまいそうだ。
充電の件は、全く減らなかった。
なんでかは知らないが、なにかおかしい気がする。
□□□
地下から出た俺は、元々の状態に石像を戻してテントへと戻った。
「何だ......?」
数人の冒険者が何か喋っていた。
その冒険者は弓、剣、杖の3構成パーティーで、剣が三人程いるのだが、1人巨体がいた。恐らくこいつが盾だろう。
「なあ、勇者の話聞いたか?」
「あの話か?少人数の勇者のこと」
「あぁ、それだ。マルクト王国だったか?そこが勇者を召喚して、それが5、6人だったってやつだ」
冒険者の話を盗み聞きしていた俺に衝撃が入った。
(俺たち以外に勇者がいるのか?)
彼らの言っていることが正しければ、勇者は俺たちだけではない。ということになる。
(波とはそんなに危険なものなのか?)
これは波が想像以上に危険であると受け取れる。
だが、一途にそうとは言えないものでもあった。
これは国同士の戦争が起こることを予期しているのかもしれない。
(いずれマルクト王国の勇者と対面するのかね......)
マルクト王国。どこにあるかは分からないが、この国は覚えておく必要があるようだ。
「さて、早く帰るか」
冒険者が完全に見えなくなったのを確認した俺は、テントへと走った。
□□□
友樹が神殿にいる時、岡部達7人は草原の更に奥の森でモンスターを倒していた。
友樹が消えたことにより、少しはレベリングも簡単になると思っていたが、ここまで楽になるとは思わなかった。
今現時点で、昨日の二倍の数の敵を倒しているのだ。レベルも順調に上がり、全員がレベル10まであと一歩となっていた。
「友樹、大丈夫かなぁ......」
友樹を心配しているのは、このパーティー内の2人のみであって、他の勇者といえば、なんとも思っていなかった。
「......?華凛ちゃん大丈夫?」
華凛がフラつきながら歩いていることに気づいた水緒は心配そうに尋ねた。
「うん......ちょっと疲れちゃったのかな?」
華凛はそう言って笑うが、水緒には我慢をしているようにしか感じなかった。
「華凛さん、水緒さん!早く来てください!」
岡部一佳は、彼女達2人に早く来るように促すと、そのまま歩き続けた。
「あっ!待って!今行くから!」
2人はそう言うと、彼らのところへと走って行った。
水緒は一佳のその態度に、少なからず不満を抱いていた。
普通、纏めるということは、自分のペースに相手が合わせるのではなく、自分が遅い人のペースに合わせるものだと考えていたのだが、この男の行動は明らかに前者であった。
華凛の顔色がよくない事に気づいていたのは水緒1人なのだ。
「はぁ......はぁ......」
「本当に大丈夫なの?」
華凛が走ったためか息を切らしていた。両手を膝において、青い顔をしている。流石にこれは大丈夫じゃないと思った水緒は華凛にもう一度問う。
「......ちょっとヤバイかも......」
ここで嘘を付けばそれは水緒にとって一番悲しいことであるのは華凛自身が一番わかっていた。信頼は嘘を一度でも吹けば、簡単に崩れることなど彼女はもう既に体験していたからだ。
華凛の言葉に水緒は一佳達を止めようとするが、そこには既に2人以外の姿は見当たらなかった。
□□□
「......一佳さん、そう言えばあの2人いませんよね?」
「はぁ!?」
2人に最後に声をかけてから30分近く時間が経過した頃、華凛と、水緒がいないことに気が付いた。
岡部は冷や汗を流しながら、取り巻き達を見た。彼等はほぼ全員がかなり前から2人がいないことに気付いていたようだ。
「非常に拙いぞ......」
誰にも聞こえないような声で一佳は呟いた。




