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Persona breaker -仮面を壊す者-  作者: アリシア
1章 ケテル王国
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8話 受付……婆

「やっと来たよ~」


俺が店から出たときに聞いた声は華凛のものだった。華凛たちは俺が話している間に買い物が終わったらしい。俺は水緒のカリスマ性と岡部の的確な判断力があったからこそだと、二人のことを少し見直した。


これからもう一度廻るのは彼女等に申し訳ない。俺のは俺一人で買っていこうと思い、それを言おうとした瞬間、水緒が口を開いた。


「それじゃあ、中井くんも来たわけだし、買い物再開ね!」


……前言撤回。

水緒にカリスマ性とかなんの冗談だったんだろうか?岡部、学級委員長だったっけ?


まあ、俺が仕切るよりはマシだろうしと呟きながら彼女たちの後を追う。


「だけど……これから一つ一つ廻ったら日が暮れませんかね?」


岡部がふと思ったのか、そんなことを言った。

始めに皆がそれぞれで買う必要のある武器や防具を買っておいていたのは幸いだ。ちなみに防具はソートの店で一緒に買ったものだ。


「確かに……」

「どうする?」

「取り敢えず今買っていないのを言うよ?……あと必要なのは、テント、食料、下着かな?」


それを聞いていた俺は、つくづく日本にすんでいた感覚を捨てられないでいるな。と呆れていた。


「回復薬とかなくてどうすんの?」

「あ、それも必要だね!じゃあ、三つのグループに別れて買ってくよ!」

水緒が言ったリストに最も重要な消耗品の名前がでなかったことを俺は驚いていた。命を救うかもしれないものを忘れるなど思うはずがなく、呆れの後に驚きが来るという不思議な体験をしてしまった。

これでは、俺が話している間に買い物をしていたとしてももう一手間はかかることだったのだろう。


「じぁあ、俺は回復薬を担当するから」


こんなやつらに大事な物など任せられない。回復薬は命綱である。その為、下級者を狙った悪徳商法が当然の如く、堂々と商売している。

こいつらだとそれに引っ掛かりそうで安心して使えないのだ。だったら自分が責任をもって買った方が幾分か信用できるからであって、俺が買うことに絶対的な自信があるわけではない。


「じゃあ私もついてくっ!」

「おっ!お熱いねぇ…華凛ちゃんってやっぱり……」

「あーあーあー!なーにーもー、聞こえなーいでーす!」


水緒にからかわれて大声を上げる華凛。

彼女は言われた台詞を否定するために出している声なのに、寧ろますます怪しくなっている気がする。


「ま、まあ、手分けするなら立候補を優先しましょう。折角やってくれると挙手してくれているのに、違う人がするのはあまりに可哀想ですし」

「じゃあ、友樹君と、華凛ちゃんは回復薬頼むね!」

「はーい」


水緒が完全に仕切っていて、それを岡部が補助している。…普通逆じゃね?と思ったことは秘密だ。


その後の話し合いの結果、分割した班は



・回復薬班…俺、華凛

・テント班…岡部取り巻き(岡部含まず)

・食糧班…水緒、岡部



このようになった。

岡部と、岡部を取り巻く奴等が離されたのは、こいつらが固まることで、岡部が暴走するのを防ぐためと、岡部取り巻きが調子にのってアクションを起こさないようにするためだ。


彼等もこれに対しては、水緒がプレッシャー(?)をかけていたのもあってか、反論などのもめ事などは起こらずに、無事決定した。俺は水緒に感謝の気持ちを適当な言葉で送った。



「友樹!早く行こっ」


お金を水緒からもらった華凛がスキップしながらどこかへ行こうとする。まったく、一体何処に行くつもりだ?


こんなこと考えているうちに、華凛との距離がかなり離れてしまった。このままでは、探すことになってしまう。


「おい、待てよ!」


俺は華凛を追いかけた。



□□□



「お、おい……はぁ、はぁ、華、凛、待てよ、はぁはぁ……はぁ」


息も絶え絶えになった俺は、やっとのことで彼女に追いつくことができた。


「あ、ゴメン!…あれ?私たちってどこ行けこうとしてたんだろ?」


さすが華凛、気付くのも遅い。

もう少し早く気付いてほしかったと俺は思っていた。そんな過ぎたことを考えるのは時間の無駄だ。目的を実行するのに時間を費やすべきだ。と自分に言い聞かせた。


「……冒険者ギルドが妥当か」


数多の冒険者が物品を売買する場であり、最も信用できる場でもあるのだろう。国と連携して動くギルドだからこそ、人の出入りが多い。


「なんか、久しぶりだなぁ……」


表道を二人で歩いていると、華凛がボソッと呟いた。

小学生の頃は華凛と二人で町中のデパートで試着して回ったり、遊びに出かけたりしたものだ。あの頃は楽しかったな…。と、思い出に浸っていると、右隣で歩いていた華凛が、左手で俺の服の裾を軽く引っ張ってきた。

前を見ると、人々で構成された迷路のような状態になっている。それを見た俺は、彼女の行動が何を意味しているのか、大体わかった。


彼女の左手を右手でつかんで、指と指を交差させ軽く握る。俗に言う“恋人繋ぎ”だ。華凛を見ると、頬が微かに紅潮していた。ついでに言えば、口角が少し上がっていた。俯いていて他人には見えないが、四年前はそうだったし、何より彼女の横顔がそれを証明していた。


「おっと…着いたか」


そうこうしていると冒険者ギルドについた。ギルドもやはり白い。この都市を上空から見下ろせば、多雪地域に見えるのだろうなと、思ったりする。

一軒一軒が素晴らしい建築物なのに、同化して分かりにくいのが残念でならない。

扉の前で立ち止まるのは迷惑なので、取り敢えず建物の中に入った。


外見が白いので、中も白いのかな?とか思っていたが、そういうわけでもない。よくよく考えてみれば、おっさんの店も外壁が白で、内壁は木の壁だったしな。

ギルドには案の定、大人数の冒険者が依頼を受諾したり、椅子に座ってテーブルの上にある肉やらパンやらを食い荒らしていたりと、そんな感じだった。


「おいおい、ここはお子様が来るような場所じゃねぇぞ?それともあれか?ママから『ポーション買ってきてぇ(はーと)』とでも言われたかぁ?」

「はーと、って、口で言うのかよ!笑わせんなよっ!」

(……………うぜぇ)


テンプレはここで発動。どうせなら召喚の時からがよかった。肉だるまに呼ばれたこっちとしては、その事が更に苛立ちを増幅させる。


「ポーション10個、マナポーション10個頼む」

「…はいよ……ヒック………」


受付嬢……いやいや、これは嬢ではない。どう頑張っても『受付…婆』が限界だ。そんなじょせ…お姉さんが笑顔を絶やさずにポーションを持ってきてくれる。

顔が赤くなっているのは、酔って……恋に酔っている証拠。


「次いい間違えたら殺すかんね!」

「は、はひっ!」

「まったく……それにしてもお熱いねぇ…最近の若者は…全員がこんなだったらいいんだけどねぇ…?」


受付…譲のお姉さんがそう言うと、椅子に座っていた人が一斉に立ち上がってお姉さんに敬礼した。


「マザーの言葉に従い、これから彼女を作ってきます!」

「あんたら、今回は失敗しんじゃないよっ!」

「「「「「サー、イエス、サー!」」」」」

「声が小さいよ!」

「「「「「サー、イエス、サー!!!」」」」」


こんな状態で、申し訳ないことだが、俺と華凛は顔を赤くして、互いに思っていた。


「手を何で離さなかった(の!?)んだ!」




「まあ、あの婆さんはあの後すぐにいなくなったがな……はは」


婆さんの代わりに来たのは、若い受付係りだった。こっちは誰が見たって受付嬢だ。


「私も恋したいなぁ」


とか言って、俺たちをじろじろ見てくる。そのせいで、冷やかし部隊が結成されて、


『ヒューヒュー』

『結婚してやれよ!』

『ホラッ!プロポーズするよな?しないわけないよな?』

『プロポーズ!プロポーズ!プロポーズ!』


などと、よく分からない状態に陥ってしまった。



□□□



「はぁ……疲れた…」

「お疲れ様っ!」


どっと疲れたとか言ってられないのに、自然と声になって口から漏れてしまう。華凛はそんな俺の台詞に『華凛は疲れずにすんでよかったな』という皮肉がひめられているのだが、彼女はそれに気づかない。


「おいおい、そいつはやばいだろっ!?」

「馬鹿!騒ぐんじゃないよっ!」


ギルドから出て少し行った辺りにある商店街的なところを歩いていると、急に大声が聞こえた。


「だって、ビックボア──」

「だから騒ぐ、なっ!」

「グハッ!」


男女一組の話なのだが、圧倒的に女性の方が強そうだ。女性は自分の最大の武器(?)であるハイヒールが言うことを聞かない愚者に蹴りが入った。ハイヒールの踵の部分が鼻に直撃!鼻血と骨折でですんだのか、……すまなかったのか、それを俺達は知らない。というか知りたくもない。


ちなみに、彼が言っていたビックボアとは、モンスターの名称であり、猪のような動物でもある。肉が旨いらしい。


ここで、モンスターと動物の大まかな区別の方法なのだが、モンスターは『食べられる肉を持たない危険な生き物』。動物は、『比較的温厚な、食べられる肉をもつ生き物』。だ。

つまり、そのどこにも属さないのがビックボアのような生き物らしいが、特に区別で名前がついていないため、『危険動物』『モンスターモドキ』『動物っぽいの』的な感じで呼ばれている。


一つ余計なことを言うが、容姿はまさに“ドスファ○ゴ”だ。違うのは、肉がとれるところ!これ重要だ!

テストに出るぞ! ※出ません。


奴は、通称“唯一の森の主”。足が早いため逃げるのは無謀。そして角が貫く武器となる。

つまり、素人では勝ち目ないっ!俺には勝てるわけないです!ハイッ!



(……まあ、広い森のなかで一匹の猪と遭遇するなんて数億文の1だし?…遭うわけないから?俺関係ないな)


町を歩きながらそんなことを考えていた。華凛は何故かご機嫌だ。五月蝿いよりはマシなので放っておく。まあ、どうせ『誉め言葉』とか聞こえたんだろうね!


俺が考えていたことが、典型的なフラグであり、そうでなかったり。

※修正しました。H29 06/05

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