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Persona breaker -仮面を壊す者-  作者: アリシア
プロローグ
1/37

Prologue 1

あらすじに書いている通り、本作品は不定期更新となります。

「──様、申し訳御座いません。また失敗してしまいました」

「なに、心配は無用さ。成功するまで繰り返せばいい」


 古い神殿のような場所で男女が話している。男の前で女が膝まづいて5度目の失敗を伝えると、彼は慈愛に満ちた表情で彼女を励ます。

 彼等は「父と娘」の関係であった。あった。というのは彼らの身分上「親と子」というものは捨てなければいけない関係であり、今は「王と部隊長」という立場である。家族のような対応を王が行う、部隊長が王に馴れ親しく接するなどあってはならないことで、彼等もそれを十分理解していた。


「かつての戦争で死んでしまった──様と──様はどうなさいますか?」


 女は自身の言葉で心を痛め、悲痛そうな顔をして言う。

 あの時死んでしまった彼、彼女の悲鳴が聞超えているような気がしてならず、あの時助ける事ができなかった自身を悔いているのだろう。


「──の方はあの少女だったか?彼女はもう一度やり直せるだろう。記憶に障害が出てしまうかもしれないが……もう片方の──はあの男であっているか?……彼はどうやらこちらの世界で生きているらしい」

「……えっ!?」


 信じられないと女は彼にもう一度問いかけたが、返ってくる言葉は同じ。


『彼はこちらの世界で生きているようだ』


 ―だが私はこの目で見た。彼が殺される瞬間を。

 ―あれが彼でないというのか?ほかの仲間と一緒にいた彼が?

 ―彼が致命傷を負っただけで息は残っていた?彼は惨殺されており、生きている状態ではなかった。

 ―おかしい。


 ―おかしい。


「まあ、前回は急に展開が変化したね。――があんなことをしたからだからだろうけど。今回は世界軸の歪みが起こらないように──の───を────」


「キサ──カミ────ルサ────ルッ!」


 突如現れた“彼”により言葉は途切れる。彼はどうやら強い怒りを覚えているようで、男に向かって剣を降ってくる。


「──ヲ、──ヲ、……─、──ヲ、カエセェェェェ!!!」

「…………君には悪い事をしたと思っている。だがな、この世界を救うにはこれしかないのだよ。済まない。──。」


 男は彼に向かって剣を突き刺した。


「もう、1度だ。今度は頼むよ」



 □□□


 自室の机の前で俺、中井友樹は薄暗い部屋を照らすPC画面を前にして愕然としていた。


「な、なんだこれ……」


 モニターにはたった一言。


 ”きみはもう一度プレイする資格がある。もう一度やりなおしますか?”


 俺はつい先程RPGゲームをクリアしたところだ。

 王道RPG過ぎて飽き飽きとしていいたが、何もすることのない俺からすればそれでも惰眠を貪るよりもずっとマシだ。


 高校1年の夏休み後のこと。

 俺は突然イジメにあった。

 なんで俺が、なんで誰も助けてくれないんだ。

 俺が救いの目を向けるとそこそこ仲が良かった友人が目を背ける。


 ――あいつらは俺を見捨てた。


 瞬時に俺は悟った。

 友人とは如何に作ろうともいざという時になんの役にも立たない形だけのコミュニティだと。

 普段は何気ない話をし、互いに空気を読んで気を使いあい、いざその友好関係が自分にとって不利なものになろうなら簡単に切り捨てる薄っぺらい付き合いだと。

 交友関係で築かれた『信頼関係』という盾は、『集団極化』という刃の前ではなんの役にも立たず、それどころか、出所もはっきりしない噂程度も防げない紙装甲であると。


「何が友人だ……何が教師だ……」


 教師にも何度も何度も相談した。

 でもダメだった。相手が悪かったのだろう。

 イジメの主犯の親は学区内で知らないものはいないほどの有力者であった。

 教育委員会にもコネのある彼を、彼の親を怒らせたら俺どころか教員自身の身も危ない。

 それを理解した上での行為だったのだと、今思い返せば解った。

 だが、それがどうした。


 ――1人の生徒も守れない人間が教員?笑わせるな。お前は教員失格だ。


 そう言ってやりたかった。


 まあ、そうして見事引きこもりの誕生というわけだ。

 それはそうとして、だ。


「YES OR NOを選ばないと何もできないのかよ……」


 Win+Ctrl+Shift+B……反応なし

 Alt+F4……反応なし

 Ctrl+Alt+Del……タスクマネージャー開かねえ

 電源ボタン長押し……反応なし


 最終奥義『電源ケーブル引き抜き(物理)』……画面に変化なし


「……どうなってんだ」


 俺のパソコン実は電気を使用していなかったらしい。なんて環境にやさしい電子機器……電気使ってないのに電子機器と呼んでいいものか。


「だめだこれ……適当に選択するか」



 →[YES]    [NO]



 カチッ……


 10秒経過。


 20秒経過。


 30秒経過。


「………………」


 クリックした途端に何が起きるわけでもなくもう50秒……あ、今1分が過ぎた。


 何も起こらないじゃないか。

 ふぅ、とため息を漏らす。

 緊張して損をした。


 そもそもパソコンの選択肢なのだから押しただけで何かが起きるなんて物語でもあるまいし起こるわけないか。

 そう自分に言い聞かせた。


「眠くなってきたな」


 時計を見ると6時半……もちろん朝だ。

 いつもなら就寝する準備をする時間帯。

 先ほどの緊張の糸が切れたのもあってかいつもより眠気が強い。

 俺はそのままベットへ突っ伏した。



 ―

 ――

 ―――

 ――――


 □□□


 ザワザワ、ザワザワ。


「…………」


 ──うるさいな。


 ザワザワと、声みたいなものが聞こえる。こんなにうるさいのだから、起きてしまったのではどうしようもない。何度か二度寝を試みたが、五月蝿(うるさ)すぎて眠れないので、仕方なく起き上がることにした。


「………はあ?」


 目の前の光景に目を疑った。

 引きこもりの俺は自分の家のベットの上で突っ伏して寝ていたはずなのだ。

 なのに、目の前には幾人もの人間がひとつの部屋に集まっていて、大半の男子のはジャージ姿の俺を不審者でも見ているような目で見下ろしており、殆ど女子の一部は俺から距離を空けて蔑むような視線が突き刺さる。

  それに当てはまらない極小数は驚き、困惑といった表情で俺を見ている。

 相手がどう思っているかの違いは兎も角、歓迎されていないのは確かだ。

  かく言う俺もこの状況は容認出来ない。

 こんな夢、今すぐ覚めて欲しい。これは夢である。そう思いたい。

  二度とみたくなかった場所だから。ここがそこなのかは分からないが、この手の建物は好きになれない。“あの日”のトラウマが、再び牙を向ける気がして、背筋が凍ったかのように冷たくなるのだ。


「何でお前がいるんだよ!」


 一人の男子が言葉を発する。その男は、がっしりした体つきで、引きこもっていた俺が相手をできるような人ではない。


(あれ?そういえばこいつ何処かで見たことあるような……)


 それよりも俺には気になることがあった。この男、何処かで見た気がするのだ。町ですれ違ったとかそんなものではなく、かなり深く関わっていたことがあるような気がしてならないのだ。


「あ!お前────」


 俺がそう言うと同時に、眩い光がその部屋をあっという間に埋めつくし、俺の意識を奪い去った。



 □□□



「──?」


 俺が起きて初めて見たのは、なにもない白い空間だ。他の奴等がいない。どうやらここにいるのは俺一人のようだ。


「中井…友樹君で良いかしら?」

「……お前は誰だ。他の奴等は何処にいる」


 目の前に女性のような“生物”がいる。女性と言えないのは、背中から大きな羽を生やして、神々しい光を纏っていたからた。

 俺はいきなり、目の前にいた女性のよ自分の名前を言われて驚いたが、それを隠すために質問をする。


「私?……私の名前は言えない。他の人たちは、今は違うところにいるわ」


(なるほど。俺は今、名前を言えない超がつくほど怪しい女性──似た目からして、恐らく神であろう存在と話していると。で、他の奴等は、此処とは違う空間にいる。か)


 つまり、俺1人があの場所から別の場所に飛ばされている訳では無いわけだ。例えあの男がいるとしても、1人で別世界に行くなど心細いに決まっている。

 彼女の返答に俺は力んでいた肩の力が抜けた。


「まあ、あなたのような人間が、これで納得しないわよね。私はこの世界の管理人。そうね。あなたの世界で言う、神かしら。」


(ふーん。管理人、ねぇ。あながち間違ってはないのかな?)


 神が世界を支配しているのなら、管理という表現もおかしくはない。あくまでも“善”の神であれば。だが。

 それよりも、何故俺だけがここに呼ばれたのか。それがわからなかった。他のやつになくて、俺にあるもの。即ち、


「……あの変なゲーム、か」

「ええ。貴方は私に気に入れられたのよ」


 俺は彼女の言い分に疑問を持つ。

 普通、自分のことをいう際には、「私は貴方の事を気に入った」と言うはず。それを何故、この管理人は受け身文にしているのか。それが何故か分からない。


「貴方には特別な力を与える………と言いたいところだけれど……貴方には()()必要ないようね」


 彼女はくるりと後ろを向いて指をパチンッと鳴らす。


「「「「うおっ!?」」」」


 指を鳴らした瞬間、人が三十人ほど現れた。男女の比率はだいたい、男10:女9だろう。


「そろそろこの話はおしまい。──さて、皆集まったわね」


 彼女がそう言うから仕方なく下がった。本当ならもっと聞きたいところだが、他の奴等が来たのなら仕方ない。


「おい!ここはどこなんだよ!」


 俺にとって憎き相手、伊藤竜彦が女神に向かって怒りを隠さず、感情的に怒鳴り散らす。


「ねー、あんたさ、学級委員長なんでしょ!何とかしなさいよ!」

「ええ!?そんなこと言われましてもね……」


 竜彦とやたらイチャイチャしている女は彼女曰く学級委員長“らしい、丸渕まるぶち眼鏡のいかにも優等生感を醸し出している男に向かって言った。そいつはそいつで、おどおどとしている。これだから優等生は使えない。


 まあ、丸渕君なんてどうでもいい。

 それよりもこの女の方だ。

 比較的可愛い顔、彼女がギャルのような服を着ているのは背伸びしているようにしか見えない。服装の印象はチャラい。の一言であるが、服の着こなしは校則に則っっている。だが性格はキツめであるため、真面目な彼女と不真面目な彼女が入り交じっているかのような女だ。

 性格はあれだが、美少女が竜彦にくっついているのだ。あの竜彦に!男は顔で判断する人が多いというだけあって、俺も少し惹かれたが、竜彦とイチャイチャされちゃ、目が覚める。

 少なからず劣等感を感じる。このクズに負けるなんて…とか、思ったりするのだが、家から一歩たりとも出ていない俺が勝てることがあるのだろうか?………ない。絶対にない。断言出来る。



 あ、なんか涙出てきた。



「全く使えない男ね……」


 彼女は大きく溜息を吐き、腕のみ『降参』のポーズをとる。


「ここは世界と世界の中継地点よ。あなたたちの住んでいた世界ともうひとつの世界の狭間と言うべきかしら」


 意味が変わっていない気がする。が、大半は納得したような顔をしている。異世界転生、異世界召喚などといった『地球とは違う異世界』に日本人が巻き込まれ、旅するなどの話はアニメや漫画、小説ではありふれたものとなっており、最新の情報に敏感な少年少女達は1度ぐらいは見たことがある。ぐらいの知名度を誇っている。

 そのため、話についていけないといった者たちは極少数である様だ。


「あなた方にはこれから“デウサルボル”に行ってもらうわ。理由は、その世界の王国の誰かが教えてくれるはずよ。それじゃあ────」


「あ、ちょ────」


 俺の言葉は最後まで喋りきることはできず、意識が暗転した。

2019/4/27 編集

2019/8/15 最初のみ編集(原型を留めていない)

2021/9/7 冒頭以外全編集(プロローグを全2話から全4話に分割しました)

2025/1/4 誤字修正・一部増筆しました。

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