夏のまぼろし
人の多さに辟易して 路地裏へ回り込む
怪し気な空気が零れて 嘘が舞い上がる
右手で、それを捕まえて 唾を吐いた
空に向かって吐いたつばが おでこにと落ちた
友情は案外に 裏切られやすい
親子の愛は 意外にと打算的だ
兄弟の愛は 積み重ねられた感情論
男女の愛は 時に刃傷沙汰だね
誰も信じられないならば 働いて、金を貯めることだね
100万には、100万の世界が
300万には、300万の世界が
きっと、見えてくるよ
10億には、10億の世界が
300億には、300億の世界が
そこに、見えてくるよ
パントマイムに過ぎぬともね
「金銭の詩」
忘れられて生きていく 時の隅っこで
同じことを繰り返して 街の隅っこで
愛はなく 夢もない 朝日が眩しい
落ちぶれてしまえば 逞しくもなる
それは、きっと良いことだろう
「朝日の中で」
通り過ぎた風に 愛の翼がありました
私は道の上で いつもと変わらずに、徒歩で
靴は古くなり 紐を新しく買い
音をたてずに歩道橋をのぼり そして、降りました
私一人では出来ないことは、多く
私一人では知らないことも、多く
それでも、どこまで行けるのか 確かめたく
誰かに頼れば、それでいいのに 嗚呼
誰かに頼めば、それでいいのに 嗚呼
我利我欲の、そのままに 歩き続ける
通り過ぎた風に 愛の翼がありました
通り過ぎた風に 愛の翼がありました
「愛の翼が」
努力は報われないものだと 親に知らされて
あの子は社会に放り出された
友達なんて頼りにはならないと 他人の大人に知らされて
あの子は闇にと転がされた
そんなことは たぶん特別なことではない
大国でも、小国でも 人のいる所なら、ある話だね
一人の孤独に馴れなさい そこから強くなりなさい
後戻りなんておよしなさい 惨めな夜が降りしきる
他人の不幸に冷たくなり 自分の足元を固めながら
一人の孤独に勝ちなさい そこから強くなるのだから
弱い者にしわ寄せが来るのさと 笑っていた賢者が
今では、しわ寄せの民になり
底から這い上がった子供は大人になり 権力に魅せられて、なたをふるう
その「なた」にしか頼るしかないのは、人々だ
あの「なた」をふるうには そのことが必要だった
擦り寄って入った側が 落とされる可能性は高いよ
一人の孤独に馴れなさい そこから強くなりなさい
後戻りなんておよしなさい 惨めな夜が降りしきる
他人の不幸に冷たくなり 自分の足元を固めながら
一人の孤独に勝ちなさい そこから強くなるのだから
「ふるう、なた」
愛に問われて 答えを持たぬ
この道を歩くことに 一生懸命だったから
褒めることは、きれい事 蔑むことは、棘ある言葉
いつから優しさを捨てたのだろう この街で
疑い続ける事で、生きていけるなら それも良し
嫌われたとしても 生命は惜しいもの
誰もに好かれて 儚く散るのは、好きじゃない
それでも誰かの綺麗事に 心が緩むときがある
もっと冷たくなりたいね もっと歪んで生きたいね
私の心の窓ガラスは とおの昔に割れています
「愛に問われて」
助けてくださいと そんなことを言われた所で
一握りの米を渡したところで 出口の光も見えませぬ
迷いの中で立ちすくむなら その坂道の登り口
戻ってみるのも いいのかも知れぬ
生きなさいと、無愛想な励ましは
この右胸に、確かにと受け取りました
こう見えても、誰もが闘いの途中
生存競争は、果てしもなく続く
何処かで、赤ん坊が産まれて
老人は、まだまだ杖さえつかぬ
生命の劇を続けながら 役を待ちわびている
光を浴びぬ役よりも 光を浴びる役が欲しい
そんな野心家の誰かにと 何処からか
助けてくださいと そんなことを言われた所で
一握りの米を渡したところで 入り口の明かりも消えました
「闇役者」