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アレ!  作者: り(PN)
11/13

生命

 全世界でそれほどの数がある原子力発電施設だが、生物化したアレらは――確認されたものすべてを合わせても――まだわずか十体しかいない。そのうちの半数が福島第一原子力発電所を含め、コネチカット・ヤンキーやスリーマイル島、チェルノブイリなどの廃炉なので訳がわからなくなる。二〇一三年七月の時点で廃炉措置されている世界の原子力発電施設は、アジアでは日本の九、欧州ではスウェーデン三、英国二十九、フランス十二、ドイツ二十七、スイス一、ベルギー一、オランダ一、スペイン二、ブルガリア四、スロバキア三、リトアニア二、イタリア四、旧ソ連ではロシア五、ウクライナ四、アルメニア一、カザフスタン一、北米では米国三十二、カナダ六で、計百四十七施設に昇る。そのうちの約3・5パーセントが生物化した計算になる。理由は不明だ。わかるわけがない。

 現時点で確認されているメタル・ベビーの数は――『名無しの私』からの情報が正しいとして――約二十名ということだから、平均するとアレ一体から二名の子供が産まれたことになる。もちろん、それにも意味は見出せない。見出せるはずなどないではないか!

 だが――

 日本以外のフィクションで所謂モノが命を持った話は――ピノキオという例外はあるが――少ないだろう。映画のカーズやその亜流のプレーンズ、機関車トーマスを筆頭に、時代を遡れば青銅の巨人タロスやゴーレム、メソポタミア神話のウルリクムミ(神と岩との間にできた岩石の巨人)、それに五芒星形状の悪魔デカラビアなどがいるが、形としてヒトを想像させないモノは多くない。逆に日本には器物型妖怪=精霊(付喪神)が数多い。一反木綿、雲外鏡、朧車、唐傘小僧、骨傘、提灯お化け、不落不落、塗壁、化け草履、琵琶牧々、文車妖妃、塵塚怪王、目目連、木魚達磨、輪入道、画霊、甕長、三味長老、暮露暮露団、瀬戸大将、白溶裔、面霊気、琴古主、金霊、囲碁の精、機尋、蛇帯など大量だ。子供向けの特撮ドラマにもモノと生物が合体した怪人/怪獣が数多く登場するが、建屋そのものがロボットと化す例は散見されるが、生物そのものとなる話は浩也には憶えがない。もちろんただ知らないだけかもしれないが……。

 原子力発電施設の消失は――とりあえず現在までのところ――世間一般ではテロリストによる強奪であろうと考えられている。もっともテロ組織は慢性的に資金不足だから、その後ろ盾にユダヤ・マネーが使われているのだ、という憶測もある。宗教教義的にはありえないが、シオニズムを嫌う輩はいくらでもいる。加えてユダヤ組織の暗躍は予てからフィクションの肥沃な土壌だ。事実は不明。いずれ明らかになるとも思えない。

『名無しの私』は浩也たちの前に決して姿を現さない。が、仲間らしい者とは複数回、主に浩也が接触している。福島第一原子力発電所が失踪した荒い白黒映像も浩也はその者たちと一緒に観ている。海中に去る前アレはただの建物で。それが徐々に生物化するのだ。建屋は角が取れて丸くなり、送電鉄塔が徐々に蛸か烏賊の足のように撓ってくる。プールや貯水槽を含めた建造物すべてが全体的に近寄って混ざり合い――何モノに喩えることもできないが――明らかに海洋生物らしい輪郭に近づくのだ。その周囲ではまるで時間の速さが通常とは異なるかのように急速で華麗な移り変わりを見せつける。

 あの夜アレはまだ最終形態まで変化していない。最初のアレの上陸をどうにか捉えたスナップ写真に写ったアレの姿は魚で虫で甲殻類で頭足綱で、かつそのどれとも似ていない。強いて例を挙げれば奇怪な姿の深海魚かもしれないが、それでいてまるでウィルスのような幾何学的な美しさも兼ね備えている。バランスを取り戻したアンバランス、あるいはアシンメトリーを失ったシンメトリー。言葉でならばどうとも言えるが、その凄まじいまでの生命迫力は――たとえ白黒映像といえども――それを見たものにしかわからないだろう、と浩也は思う。それを今宵、浩也と早紀/塔紀は目の当たりにするはずなのだ。


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