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アレ!  作者: り(PN)
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歴史

 早紀と塔紀の病院からの脱出は約一週間後に実行される。それには『名無しの私』から送られたプレゼントがずいぶんと役に立つ。プレゼントの正体は半球状の監視カメラにすっぽりと被せ、暫くの間、偽の映像を監視者に提供するアンチ防犯グッズだ。ヤレヤレと思いつつ、浩也がそれを活用する。脱出の手順はいたって単純で、実は部屋の中に隠れた早紀がいなくなったと浩也が騒ぎ、それで関係者が右往左往する間に抜け出すという作戦だ。その前提として塔紀が早紀の元に戻ることが挙げられたが、それは水曜日の夜に叶えられる。脱出は『名無しの私』から密名を受けた数名の見知らぬ男女からの思わぬ助力を受け、見事に成功する。タイミングこそが病院脱出の最大の鍵と教わったが、終わってみれば呆気ないな、と浩也は途端に拍子抜けする。塔紀も泣かずに、じっと大人しくしている。が、浩也はそれを逆に怖いと感じてしまう。

 その午後から一月余り、浩也と早紀/塔紀が日本中を点々とする。危険情報の多くが『名無しの私』から浩也の元に送られる。だか浩也は『名無しの私』が実は警察関係者ではなかろうか、と疑ってみる。が、訊ねはしない。浩也が欲しいのはその情報ではなかったからだ。浩也たち親子は『名無しの私』とは直接関係がないと思われる数多くの人々にも種々の局面で親切を受ける。それで改めて人の情を知った気がして浩也たち親子が胸を熱くする。

 危険だが充実もしていたそんな逃亡期間に浩也が直接学んだことは多い。職業柄、世界の原子力発電事情には詳しいはずの浩也だが、隠蔽された事実も多かったのだ。

 原子力事業はそもそものシカゴ大学のエンリコ・フェルミが実験炉で核分裂の連鎖反応に成功したことから始まっている。一九四二年だ。最初の応用は良く知られるように兵器で、一九四五年にアメリカで原子爆弾が開発される。原子力発電は一九五一年の実験炉=EBR‐1から始まるが、その発電容量はわずか1kWだ。その後、一九五四年に世界初の原子力潜水艦ノーチラス号が進水している。世界最初の実用的な原子力発電施設は同じ一九五四年六月に運転を開始したソビエト連邦(当時)のオブニンスク原子力発電所で、その後ソ連、アメリカ以外にイギリス、カナダ、フランス、ノルウェーなどで次々と原子炉が建造される。法整備や国同士の協定締結も進み、その年の七月、国連において原子力に関わる第一回ジュネーブ会議が開催される。

 西側における初めての商用施設はイギリスのコールダーホール原子力発電所一号炉で、運転開始は一九五六年十月十七日、出力六万キロワット、炉の形式は黒鉛減速炭酸ガス炉だ。このコールダーホール原発は二〇〇七年九月に老朽化のために爆破解体されている。アメリカではシッピングポート発電所が初となり、運転開始は一九五七年十二月十八日、出力は十万キロワットで、炉の形式は加圧水型だ。この原子炉は一九八二年十月一日に閉鎖されている。アメリカにおける原子炉発注ブームは一九六六年から一九七四年まで九年間も続くことになる。

 一方西欧のフランスでは一九六四年二月のシノンA1号炉が初となる。出力八万四千キロワット、炉の形式は黒鉛減速炭酸ガス炉だ。

 その後、原子力発電所には――種々の問題点が提起され――撤廃の流れもあったが、原油の価格高騰と地球温暖化防止を背景に推進する動きも起きるのだ。

 基数で言えば米国が圧倒的に多くて、二〇一三年時点で運転中のものが百十四基(出力も世界第一位で一〇・六五八kW)、ついでフランス五十八基(二位)、日本五十基(同三位)、ロシア二十九基(四位)、韓国二十三基(五位)、インド二十基(十五位)、カナダ十九基(六位)、英国十六基(十位)、ウクライナ十五基(七位)、中国十五基(九位)、スウェーデン十基(十一位)、ドイツ九基(八位)、チェコ八基(十六位)、スペイン七基(十二位)、ベルギー七基(十三位)、台湾六基(十四位)、スイス五基(十七位)、スロバキア四基(二十二位)、フィンランド四基(十八位)、ハンガリー四基(二十位)、パキスタン三基(二十七位)、ブルガリア二基(十九位)、ブラジル二基(二十一位)、南アフリカ二基(二十三位)、ルーマニア二基(二十四位)、メキシコ二基(二十五位)、アルゼンチン二基(二十六位)、スロベニア一基(二十八位)、オランダ一基(二十九位)、アルメニア一基(三十位)の計四百九基となっている。その時点で発電はしていないが一基から四基程度の原子力発電施設の開発を予定している国々には、アラブ首長国連邦、イラン、トルコ、インドネシア、ベトナム、ベラルーシ、エジプト、リトアニア、イスラエル、カザフスタン、ヨルダンなどがある。

 主な建設メーカーはアレヴァNP(三菱重工業と業務提携)、三菱重工業、東芝(ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーを買収)、GE‐日立ニュークリア・エナジー(日立製作所とゼネラル・エレクトリックが原子力事業で経営統合)、バブコック・アンド・ウィルコックス(原子力プラント製造そのものは撤退し、エンジニアリングに特化)だが、現在では寡占化が進み、アレヴァ‐三菱、東芝(WH)、GE‐日立の三グループに集約されつつある。


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