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念いと想い  作者: 守 雄季
1章
2/2

「姉さん、遅いなあ…」

ポツリと呟いたベスティア族のカタマに、幼馴染のフローラが振り向く。

「きっとすぐ帰ってくるよ。今頃、城を攻めてるんじゃないかな?」

落ち込んでいる様子のカタマを励ますようにフローラは優しく言った。だと良いけど…と作業を始めたが、カタマの頭の中は姉の心配事しか無かった。姉はつい最近反乱を起こしに行ったきり帰ってきていないのだ。これで四度目の政府に対する反乱。反乱といっても、これまでに{乱}という文字まで反逆できたことが一度も無い。だが姉は「今度こそ、先祖様の恨みを果たせてみせる」と数百人の仲間を連れて都に出たのだ。最も、我々が恨みを抱いているのは政府でなく、その都の方針を全て握っている将軍なのだが、法を左右しているため何ら政府と変わりない。

ベスティア族が今の現状に不満を持っているのは、自分たちが民族の中で一番格下に置かれていること、人身売買などに度々されること、そして母国を追われた事など様々だが、最も許せないのが、その将軍とその民族が誇りを持っていないことだった。誇りを持たない者に、誰かの上を立つ権利があるのかとそう思っている。きっとこれはベスティア族だけでなく、ほとんどの民族が思っていることだろう。勿論反対も数多くあった。しかし、上へ立ってしまった。その理由の醍醐味が、民族戦争で将軍率いる民族が勝ったこと、そして最もその中で力を持っていたのが将軍だったからだ。半ば暴力で判決したこの事に批判する民族は昔よりも更に増えた。力があるその為にいくら反乱を起こしても、その強さと体格などの大きさでコテンパンにされてしまうのだった。反逆者達を敗北に陥れているのは殆どが将軍自らだった。反逆者のリーダーと将軍が一対一で剣を交あわせ、負けたほうはお互いに二度と目の前に現れないことが条件だった。だが、同じ国に住まう者同士、生きているうちに絶対会わないことなど不可能だった。つまり、二度と目に触れ無いようにすることはすなわち死を意味する。

これまでに何人殺されてきたかは計り知れない。将軍は反逆者だけでなく、気に入らない部下たちまでをその儀式で殺すという。

「さあ、出来た!」

急に立ち上がったフローラに一瞬驚いたカタマは、もう?と思った。

今自分たちが作っているのは、魚を紐で通し、日中に干すという仕事だ。それぞれ魚の数が決まっている。今日はいつもよりも数が少し少なかった。

「出来たよ!一緒に干しに行こうよ」

「ちょっと待って、もうすぐだから…」

よっと掛け声を上げて紐を結び、最後のひとつを篭に入れた。外に出ようと入り口の前にぶら下げている布をあげながらまだ昼間の静かな川元へ向かった。

「そっちは終わった?俺はもう終わったよ」

「うん、こっちももう少しー」

フローラはあと三本残っていたので、手伝ってあげようと魚を取った時だった。

「カタマァ!!大変だ」



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