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Program 6

窓から暖かい日差しが差し込む。


「きぃちゃん、何してるの?」

窓沿いの席に座り、外を眺める私に声をかけてきたのは来夢だ。窓の外から縁につかまって私の顔をのぞきこむ。

「んー、天気いいなーって。」

「えー?いつも天気いいよ?」

クスクス笑う来夢と同様に、私の正面に座っていた男性も笑った。


「ホント、何でこんなに晴れてるんだろうね。」

私はふと彼の方を見た。


だが、その人は貴春でもむっつーでも幸紀、はたまたミナトくんなかった。

私は来夢と顔を見合わせて叫んだ。



「「誰っっっ!!!?」」



「はじめまして、(しょう)だよ。」

私たちの(こえ)を聞いてかけつけたみんなに向かって、彼はニコッと笑って軽く挨拶をした。

背が高く、和服を身にまとった少年だ。うちで一番背の低い来夢と並ぶと30cmほど身長差がある。


「かってに人の家に入っちゃいけないんだぞ!」

珍しく強気に反抗するむっつー。彼は何かと背の高い人にはつっかかってくる。自分が背が低いからって…。

声に向かって指を指し、大きく地団駄を踏んだ。

「あはは、ごめんね、楽しそうだったから。」

声のにこにこした顔に負けじとまたもむっつーは反抗する。

「用があるときはインターホンを鳴らすんだぞっっ!!」

「インターホンなんてなかったよ?」

確かにこの家にはインターホンはなかった。

むっつーはついに少し涙目になってきた。

「お…俺のことは六様と呼べ…!」

「なんて?むっつー。」

絶対わざとだ…と言うような言い方でしれっと「むっつー」と呼ぶ。

むっつーはよろよろと幸紀の方へ歩いていった。

「うぅぅ…幸紀だけだよぉ…「六」って呼んでくれんの…。」

そのままガバッと抱きつく。だが、身長差的に兄弟にしか見えなかった。

「ちょっとむっつー!お兄ちゃんから離れてっ!れみのなんだから!!」

案の定、れみが二人の間にわって入り、むっつーを引き剥がした。

「ひでぇ…ミナトぉ…!」

引き剥がされたむっつーは今度はミナトくんの方へ行った。

「えっ!?…六さん?」

突然のことに驚いたのか、ミナトくんはあわあわとして茉莉音の後ろに隠れた。

「そんなっっ!!」

がっくりしてそのまま床に座り込んだ。

あーあ…。


「そんなことよりお腹空いたー!」

むっつーのことをさらっと無視して、じたばたして茉莉音に訴える来夢。

「そうだね、昼食作るよ。」

さっそくエプロンをつけてキッチンに向かったが、そこには…


「僕がつくってあげるよ!」

声がキッチンに立ってニコッと笑った。

「え…でも…。」

「僕、料理得意だから!」

少し困惑した茉莉音を追い返してエプロンを奪い取った。

だが、それよりも和服にエプロンはかなり異質だった。



「はぁぁーまだなのー?ねぇまーだー?」

茉莉音なら急げば15分ほどで料理が出てくるが、今料理を作っているのは声で、さらにかなり遅かった。

椅子に座って足をじたばたさせる来夢の足をおさえながら、「なんかドライバー置いてない…?」とはらはらして待つ茉莉音。


だが、そんな心配をしているうちに料理が出来たようだ。

「みんな、出来たよ。」

そう言って声がキッチンから夕食を運んできた。

「おぉぉ!なかなか上手い…!」

さっきまであんなにケンカしていたのに来夢は目を輝かせてテーブルに身を乗り出した。

だが、料理は見た目だけではない。味ももちろんだが、それより…

「あのー、声くん…キッチン、なにがあったの…?」

恐る恐るキッチンを指差す茉莉音。みんなもそれにあわせてキッチンを見た。


さっきまで声が立っていたキッチンは、調理器具があちこちに散乱している。まな板にはソースがベッタリくっついていて、食材も出しっぱなしだ。

「あはは、気のせいだよ!」

「どこが!?」

茉莉音は思わずつっこむ。自分がいつも使っている、というか自分だけの場所をあれだけ汚されたらさすがに怒るだろう。

「汚すぎるよ、声!3Kだよ!」

来夢が地団駄を踏んで「むきーっ」と怒ったら。だが、貴春はそんなことより別のことに反応した。

「3Kってなんだっけ?」

頭にはてなを浮かべて質問する。確か、かなり前に話題になった嫌な職場みたいなやつだろう。

「うーん…君たち、結構、厳しいね!」

声がまた「あははっ」と笑って言った。

「確かにそれも3Kだけど私が言ってるのとはちょっと違うね!?」

ビシッと指を指して素早くつっこむ来夢。


「はぁ、声くん…キッチン、きたない、片付けて。」

またも誰かが微妙に違う3Kを言った。ずいぶんノリがいいのね!?そう思って発言した人の方を向いた。

「って…茉莉音!?」

その素晴らしきノリの持ち主は茉莉音だった。ため息をついて声の背中をグイグイ押してキッチンに連れていっていた。茉莉音…めっちゃ怒ってるじゃん…。


みんなホントに大切りが好きなのね…。そう考えている間にもみんなぽんぽんネタを出してくる。

「幸紀くん、これ、貸して!」

「貴春に、貸せるものは、ここにはない。」

3Kで謎の会話を始める貴春と幸紀。そこにれみも入ってくる。

「貴春くん、この世から、消えて。」

真顔で冷めた(こえ)で言う。幸紀に近づくなってか…。怖っっ。


だが、一人だけ参加せずに料理を見て「うーん…」と唸っている人物がいた。あれはきっとむっつーだ。

「これ、固いぞ、食えんのか?」

かっちかちの物体をツンツンしながら言った。

「きっと、食えない、ことはない!」

軽くドヤ顔で言う幸紀。これは、彼の新たな一面を垣間見てしまった気がした。


それより、私は3Kで会話が成立していることに驚きだった。ここの住人、大切りスキル高すぎ!!

すると、突然後ろから服の裾を引っ張られた。振り向くと、そこには私を見上げるミナトくんがいた。

ミナトくんは、ニコッと笑って言った。

「桔梗さん、今日も、かわいいね。」

そして、少し顔を赤くして去っていってしまった。


なにあの子…かわいいんだけど…。

さすがにそんな特殊な趣味はもっていないが、あれは…!

通り魔か!?

誰かに!?かわいいなんてそう言われたことない。まぁ、「桔梗」だったから言ってくれたんだろうけど…。



「で、食べていいのっ!?」

ついに待ちきれなかったのか、目を輝かせて声の方を見つめる来夢。

「うん、どうぞ。」

パァァっと顔を明るくして「いっただっきまーすっ!」と叫んで料理にてをつけた。


だが…


「なんか…悪いけど…茉莉音のほうが断然美味しいね…。」

フォークをくわえながらもにょもにょと呟く来夢。

「うん…桔梗よりは美味しいけどやっぱり…」

一口パクッと食べながらしれっと私のことも言ってくるむっつー。

「なによ、私だって得意なわけじゃなかったのよ!」

まあまあ…と私の肩を押さえる貴春を横目に私も一口食べた。

確かに、私よりは…上手いかもしれないわね!!

心のなかで無駄に強がっていたことに気づいたのか、貴春が隣で小さく「桔梗ちゃんの料理も美味しかったよ」と呟いてニコッと笑った。

貴春は何かと私に気をつかってくれる。いや、もしくは素で言ってくれているような気もする。


そんなことをしているとある勇者が立ち上がった。

「なぁ、このカチカチのやつ食えんのか?」

それは、なんと幸紀だ。先程むっつーがツンツンしていた物体を今度はフォークでカンカン叩いていた。

「きっとお兄ちゃんなら食べられるよ!!」

横でガッツポーズをしてエールを送るれみ。

「なんかそれすっごい嬉しくねぇわ。」

幸紀は顔色ひとつ変えずに淡淡と返す。

そんなれみは「ご、ごめんね…。」と小さく言って涙目になっていた。

誰もが「こいつら話噛み合ってないじゃん…」とか思いながらも幸紀はそんなのお構いなしに謎の物体を口に運んだ。


――ガチンッッ



「…これ、食えねぇわ…。」


幸紀はそう呟いて物体を皿に戻した。

みんなが「ですよね…」という顔をした。あの来夢が食べなかったんだ。そりゃ食べられないわ…。



今日僕たちは、声に絶対料理をさせてはいけない、いや、キッチンに立たせてはいけないと誓った。


こうしてまた、夢音に新たな9人目の住人が増えた。

新キャラわーい!

しょうくんです


ちなみに、この話はわりと気に入ってます。

むっつーや3Kのくだりとか

書いてて楽しかったです

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